診療内容

診療内容

 日本皮膚科学会認定指導医・専門医1名、日本皮膚科学会専門医1名、シニアレジデント1名の3名で対応しています(平成26年7月1日現在)。
 午前は一般外来で、8時30分に診療を開始しています。午後は月・水に特殊外来(光線治療ほか)、火・木に手術、金に院内褥瘡回診を行っています。
 アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎に代表される湿疹・皮膚炎、蕁麻疹、真菌症(白癬、カンジダ)、帯状疱疹、ウイルス性疣ぜい、丹毒・蜂巣炎、中毒疹・薬疹、皮膚腫瘍(良性、悪性)、巻き爪、熱傷、褥瘡などの日常ありふれた皮膚疾患のみならず、乾癬や類天疱瘡など皮膚科特有の疾患、さらには膠原病・糖尿病など内科的全身疾患の皮膚病変の診断や治療など幅広く対応しています。

医師のご紹介  外来診察表

特殊外来

特殊外来では、アレルギー性皮膚疾患の検査・治療、イボ治療、光線療法などを行っています。

院内褥瘡回診

院内褥瘡回診では、対策チームを編成して、入院中のすべての褥瘡患者さんを診察、治療管理するとともに発生予防に努めております。

基本方針

皮膚病変を認めた場合、常に「皮膚から全身(内臓)へ、全身(内臓)から皮膚へ」という見方、考え方に則って診断・治療を行うことを基本方針としています。

主な疾患について

アトピー性皮膚炎

 日本皮膚科学会の診断基準や治療指針が定着した今日、以前に社会問題とまでなった「ステロイド拒否症」はほとんど見られなくなりました。治療前にステロイド外用剤についてしっかり説明を行うことで了解が得られています。最近ではタクロリムス軟膏(プロトピック軟膏®)もよく使用していますが、まれに一部の患者さんで敬遠されることがあります。
 年間250~300名以上の患者さんを診ております。当科では、皮膚炎の改善、痒みのコントロール、スキンケアの励行、精神的・肉体的ストレスの緩和など総合的な治療を心がけています。特に憎悪時には、患者さんとよく話し合って憎悪因子を発見するよう努めています。

慢性蕁麻疹

 膨疹が1ヶ月以上出没を繰り返すケースを慢性蕁麻疹といいます。症例数が多く(年間150~180例)、当科の特徴と考えております。
 慢性蕁麻疹は難治性で、治療に手を焼く皮膚疾患の1つです。一般には治癒に3年かかるといわれています。なかには10年以上フォローしているケースもあります。
 治療のコツは、膨疹を抑制できる薬剤(抗アレルギー剤)を早く見つけて気長に服用することです。患者さんの生活スタイルを考えて非鎮静性の薬剤を選択したり、即効性の薬剤と効果持続性の薬剤を併用したり、ケースによっては胃薬を追加したり、きめ細かに対応しております。
 生活指導も重要です。飲酒、仮性アレルゲンを含む食品(新鮮でない青魚、たけのこ、ナスなど)、入浴、ストレスなど要注意です。あまり馴染みがないかもしれませんが、上気道炎や胃腸炎も誘因、憎悪因子となります。
 慢性蕁麻疹の治療で問題となるのは、薬剤の止め時です。服用中は良いのですが、ほとんどの場合中止すると再燃してきます。したがって、少しずつ減量するように指導しています。1~2ヶ月間隔で、隔日内服、3日に1回内服、4日に1回内服……と段階的に減量し、5~6日に1回の服用で問題なければ、そこで終了とするといった方法をとっています。
 内科的疾患との関連については、慢性甲状腺炎が見つかることが結構ありますので、サイログロブリン抗体・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体はスクリーニング検査に組み込んでいます。その他では、ピロリ菌感染について問診でチェックすることにしています。

帯状疱疹

 帯状疱疹患者も年間に150例以上診ております。高齢者の重症例、コントロール不良の糖尿病患者に発生した例、担がん患者に発生した例などについては積極的に入院治療(抗ウイルス剤点滴)を行なっておりますが、通常は外来治療で十分と考えています。
 当院では、ペインクリニックの診療が毎日行なわれており、疼痛強度の症例や帯状疱疹後神経痛を残すリスクの高いケースにとっては、治療開始当初よりペインクリニックにコンサルトできることが大きなメリットとなっています。
 帯状疱疹後神経痛を残さないためには、急性期疼痛(侵害受容性疼痛)を十分にコントロールすることが重要です。最近のNSAIDはアセトアミノフェンが主流となっていますが、腎機能に問題がなければロキソプロフェンやナプロキセンを使用することもあります。さらには、潜在的に早期から生じている神経障害性疼痛に対して当初よりプレガバリン(リリカ®)を積極的に併用するようにしています。
 注意すべき臨床病型としては、ハッチンソン徴候を呈する三叉神経第1枝領域の帯状疱疹(眼病変を高率に合併)、顔面神経麻痺を伴う同第2枝領域の帯状疱疹、イレウスや尿閉を生じる下腹部や陰部の帯状疱疹、さらには全身性に汎発疹を生じる汎発性帯状疱疹(白血病・リンパ腫など免疫不全状態を合併)などがあります。また、皮疹の治癒が遷延する場合(通常は4週間以内)、あるいは複数回繰り返す場合にはHIV感染が判明することもあり要注意です。

丹毒・蜂巣炎

 真皮から皮下組織の細菌感染症ですが、丹毒では化膿連鎖球菌が、蜂巣炎では多くが黄色ブドウ球菌(β-ラクタマーゼ産生株)が起因菌です。両者を臨床的に区別するのは困難なことがありますが、丹毒では経過中にASO・ASKの上昇が確認できますので鑑別診断に有用です。頻度的には、予想以上に丹毒のケースが多いようです。
 軽症例では外来治療で対応しますが、発熱・白血球増多・CRP上昇が高度で、局所の発赤・熱感・疼痛が強度のケースは入院治療(安静、抗菌剤点滴)を行っています。治療薬は丹毒ではペニシリン系抗菌剤、蜂巣炎ではセフェム系で開始します。蜂巣炎としてセフェム系抗菌剤で治療を開始したケースでも、経過中にASO上昇があれば、ペニシリン系に変更します。入院期間は1週間以内がほとんどですが、局所の変化(水疱→壊死→潰瘍)を生じる場合には程度に応じて長くなります
 丹毒では再発を繰り返すケースが見られます(習慣性丹毒)。リンパ節郭清術や放射線照射後のリンパ浮腫、静脈還流不全、糖尿病、足白癬などの基礎疾患がある場合ですが、日ごろからペニシリン系抗菌剤を予備で持参させておくこともあります。
 蜂巣炎の様であるけれどもと、紫斑や水疱が出現している場合は厳重注意です。高熱、激烈な筋肉痛、血圧低下などのショック症状、肝腎障害、DICなど多臓器不全を生じ、高率に生命の危険がある壊死性筋膜炎の発症を考えなければなりません。

丹毒

丹毒

丹毒:リンパ管炎併発

丹毒:リンパ管炎併発

壊死性筋膜炎

壊死性筋膜炎

巻き爪

 一般的に“巻き爪”と言われているものには、「爪甲が彎曲した状態」と「爪甲が周囲の皮膚を損傷している状態」に分けられます。
 爪甲が彎曲した状態では、彎曲を矯正することで治療を行います。その方法として、2種類の方法を採用しています

  • 爪クリップ
    形状記憶合金でできたクリップを装着することで弯曲を矯正します。
  • アクリル人工爪による矯正
    爪甲を削った後に形を整え、アクリル人工爪を用いて固定することで弯曲を矯正します。

 弾性ワイヤー法(爪甲先端に穴を開け弾性ワイヤーを通して彎曲を矯正する方法)やVHO法(爪甲の辺縁にひっかけたワイヤーを締め上げることで弯曲を矯正する方法)を行う施設もありますが、これらの方法は弾力のない肥厚した爪甲では効果が限定的です。これらの方法で効果が得られる症例の多くは爪クリップで対応でき、これらの方法で効果が得られない症例でもアクリル人工爪による矯正で対応できるため、当院ではこれらの方法を行っていません。
 爪甲が周囲の皮膚を損傷している状態では、爪甲と周囲の皮膚を離すことで治療を行います。その方法として、3種類の方法を使い分けています。

  • テーピング法
    皮膚を引っ張ることで、爪甲と皮膚を離し、当たらないようにします。
  • ガター法
    爪甲の辺縁をチューブで覆うことで、皮膚に当たらないようにします。
  • フェノール法
    爪甲の幅を狭くする手術です。最近はこの方法を非難する意見も見受けられますが、施術する症例を選んで適切に行われれば、依然として有効な方法です。

主な手術について

 外来および手術センターで行っています。手術センターを利用する手術は年間150~180件くらいです(週2回:火・木午後)。以下に代表的な手術対象疾患を示しておきます。

良性腫瘍

 粉瘤(表皮のう腫)、脂肪腫、色素性母斑(ほくろ:特に足底部のもの)、脂漏性角化症(老人性疣ぜい)、線維腫などです。

悪性腫瘍

当院がんセンターホームページに詳細を掲載

 日光(老人性)角化症、ボーエン氏病、基底細胞がん、有棘細胞がん、外陰部パジェット病、悪性黒色腫などです。なお、有棘細胞がんの一部、外陰部パジェット病、悪性黒色腫についてはセンチネルリンパ節生検、集約的治療の必要性から岡山大学病院皮膚科にお願いしています。

熱傷

 多くは保存的治療で治癒しますが、手術(デブリードマン+植皮)が必要なケースもかなり見られます。さらには、当院は救命救急センターを開設していますので、重症熱傷も搬送されてきます。平成19~25年の手術件数を示しておきます。平成19年、20年、26年には各1名、全身熱傷でなくなっています。重症熱傷手術は、形成外科と連携して実施しています。

熱傷手術件数 平成19~25年

熱傷手術件数 平成19~25年

巻き爪

 アクリル人工爪による矯正例を掲載しておきます。

人工爪による矯正前後

その他

 褥瘡ポケット部の皮膚切開については、感染を伴っている場合、ポケット奥に不良肉芽ないし壊死組織が残存している場合、内腔がクリーンでも治癒が遷延している場合には積極的に実施しています。期間限定で、退院後の受け入れが用意されている場合に相談をお受けいたします。

褥瘡ポケット切開:切開前

褥瘡ポケット切開:切開前

褥瘡ポケット切開:切開直後

褥瘡ポケット切開:切開直後

褥瘡ポケット切開:切開3日後

褥瘡ポケット切開:切開3日後

皮膚がん

 皮膚悪性腫瘍は、一般的には基底細胞癌・有棘細胞癌に代表される非黒色腫皮膚癌と悪性黒色腫に分類されます。近年、生命的予後の点からとくに悪性黒色腫に関心が集まっています。しかし、皮膚癌全体的にみてもまだまだ関心が薄く、皮膚という解剖学的特性、すなわち早期発見に最も適した臓器でありながら、進行期になってからの医療機関受診が続いているのが現状です。このホームページでは各種皮膚癌の臨床像も掲載していますので、早期発見の一助としていただければと思います。

総論

皮膚悪性腫瘍の罹病には人種差が認められます

 罹病率は肌の色が薄くなるほど高くなる傾向があります。人種別に見てみますと、年間の罹病率は、人口10万人当たり黒人(米国)が3.4人、本邦では8.9人、シンガポールが8.9人、白人(米国)が232人です(表1)。圧倒的に白人の罹病率が高いことがわかります。
 日本人でもスキンタイプⅠ(色白で、露光すると常に赤くなり、決して皮膚色が濃くならない)の人では、日光角化症進展有棘細胞癌(後述)が好発しやすいと考えられています。

罹病率(人/人口10万人・年)
白人 アジア系 黒人
基底細胞癌 212-250 5.8-26.1 1-2
有棘細胞癌 17-360 2.6-2.9 3
悪性黒色腫 24.3 1.7 1.2
隆起性皮膚線維肉腫 0.42 0.34 0.81
乳房外パジェット病0.130.280.01
血管肉腫 0.05 0.04 0.03

皮膚悪性腫瘍は増加しています

 基底細胞癌・有棘細胞癌・黒色腫のいずれの発症にも紫外線が関与しおり、世界的にみて皮膚癌は増加しています。すなわち、①先進国では平均寿命が伸び、高齢者が増加したこと、②地球環境の変化(フロンによるオゾン層の破壊、地表到達有害紫外線量の増加)、③ライフスタイルの変化(アウトドア活動で、急激かつ大量の紫外線に曝露される機会の増加)などが大きな要因です。
 我が国での「がんの疫学調査体制」は十分ではありませんが、自治体が行う“地域がん登録事業”、がん診療連携拠点病院の指定要件でもある“院内がん登録制度”、さらには学会が主体となって行う“臓器別がん登録”があります。地域がん登録データベースによりますと、皮膚悪性腫瘍の推定罹病数は、2007年では11000例余りで経年的に増加し、特に60歳以上の年齢層での罹病数が激増しているとのことです。したがって、我が国での皮膚悪性腫瘍の増加は60歳以上の人口が増加したことが主因と考えられます。また、人口動態調査によれば、皮膚悪性腫瘍による死亡数も増加しており、1997年の800例程から2011年には1400例となっています。
 今後2029年には、皮膚悪性腫瘍の罹病数は現在の1.2倍に、死亡数は1.5倍になると推計されています。

皮膚悪性腫瘍の診断は臨床診断と病理組織診断が基本です

 熟練した皮膚科医であれば、多くの場合肉眼的に診断することは可能ですが、最終的には病理組織 診断を欠かすことはできません。
 最近の皮膚科診断学におけるトピックスとして“ダーモスコピー”の導入が挙げられます。拡大鏡の一種ですが、マクロとミクロの中間的な診断法で、特に足底の色素斑の診断に絶大な威力を発揮します。日本人の悪性黒色腫のなかでは掌せきに好発する末端黒子型黒色腫(acral lentiginous melanoma:ALM)が最頻病型ですが、ダーモスコピーによって良性の色素性母斑との鑑別点が容易に観察できます。すなわち、良性の母斑では皮溝優位の色素沈着が、ALMでは皮丘優位の色素沈着が特徴です(図1)。

図1:足底の色素性母斑

臨床像

臨床像;
10mm大の濃淡のある色素班。境界は不明瞭。

ダーモスコピー像

ダーモスコピー像;
皮溝優位の色素沈着

 皮膚科以外の先生方にはダーモスコピーまで用意することはできないと思いますので、悪性黒色腫の臨床診断時のチェックポイント;ABCD ruleを紹介しておきます。

ABCD rule
  • A asymmetry:非対称性
    皮疹の中央から見て左右を比較すると、形・色調が非対称である。
  • B border irregularity:境界不規則
    皮疹の辺縁が一様でない。形が不整、境界が明瞭な部分と不明瞭な部分が混在する。
  • C color variegation:色むら(色調の多様性)
    皮疹に色むら(褐色~黒色、帯青色、灰白色~黒青色)があり、非対称性に分布する。
  • D diameter enlargement:径が大きい
    後天性の母斑は径6mm以下であることが多い。7mm以上の場合は疑いあり。

 生検の是非については、基底細胞癌や有棘細胞癌ではとくに問題となりません。悪性黒色腫に関しては、以前は部分生検が転移を助長する可能性があるため原則禁忌であるとされてきましたが、近年では部分生検群と全切除生検群との間に生存率や再発率に有意差がないとされ、ガイドラインでは、部分生検については容認されています。ただし、頭頚部領域の黒色腫にかぎっては部分生検が生存率を低下させたという報告もあり、現実的には全切除生検が無難です。

皮膚悪性腫瘍の治療は外科的治療(手術)が第1選択肢です

 他臓器においてと同様に皮膚悪性腫瘍の治療方法には、外科的治療(手術)、放射線療法、化学療法、免疫療法、分子標的薬治療などがあります。
 皮膚悪性腫瘍は、皮膚という解剖学的特性から早期発見が可能であり、その治療において手術が第1選択肢であることに異論はありません。
 放射線療法は、一般には根治目的、再発予防目的、症状緩和目的で使用されますが、皮膚科領域においても同様です。有棘細胞癌や基底細胞癌に対して根治目的で行った放射線治療の成績は、手術とほぼ同様で、局所制御率は約90%といわれています。症例を選べば有用な治療法ですが、どの施設でも実施できるものではありません(放射線治療専門医が常勤している当院では可能です)。黒色腫に関しては、脳転移症例に対して定位放射線治療が行われます。また、近年、ホウ素中性子捕捉療法が脚光を浴びています。
 化学療法に関しては、黒色腫では積極的に実施されていますが、満足の行く結果が得られていないのが現状です。有棘細胞癌などでは手術・放射線治療不能例、術前後補助療法、遠隔転移を伴う症例などに対して実施されています。
 長い間、自然消退することがある黒色腫は免疫療法が期待される腫瘍であると考えられてきましたが、これまで種々の免疫賦活療法は奏功しませんでした。最近の研究では、がん局所において免疫を抑制する特殊な分子が誘導されていることが判明しています。その分子に対する阻害薬も開発され、免疫抑制状態を是正することにより効果を発揮することが期待されています。
 欧米では、黒色腫に対して分子標的薬;シグナル阻害剤(vemurafenib)と免疫抗体薬(ipilimumab)が認可されています。近い将来、我が国でも使用できる日がやってくると思われます。また、他科領域の癌に承認されている分子標的薬;セツキシマブ・ゲフィチニブなどが進行期皮膚有棘細胞癌にも試用されてきています。
 もう1点、皮膚悪性腫瘍治療に関する最近のトピックスを紹介しておきます。日光角化症(老人性角化症)は、高齢者の露光部(顔面、禿頭部、耳介など)に好発する有棘細胞由来の表皮内癌ですが、有棘細胞癌の半数近くが、さらに顔面の有棘細胞癌に限っていえば70%近くが日光角化症から進展するとされています。この点に日光角化症の重要性があるわけですが、2011年からイミキモド(ベセルナクリーム®)外用療法が承認され、頭頚部の皮膚有棘細胞癌に対する予防的治療が可能になりました。

悪性黒色腫でも“循環腫瘍細胞”が注目されています

今日、癌の比較的早期の段階から末梢血中に癌細胞が循環している(末梢血循環腫瘍細胞:circulating tumor cells CTC)ことが知られています。とくに乳癌や大腸癌などの上皮系腫瘍で解析が進み、臨床応用が始まっています。ちなみに、乳癌<大腸癌>では末梢血7.5mL中にCTCが5個<3個>以上存在する場合、4個<2個>以下の場合と比べ予後は悪いこと、治療によってCTCが5個<3個>以上から4個<2個>以下に減少した場合は予後が改善することが明らかとなっています。< >内は大腸癌の場合です。
 悪性黒色腫においてもCTC数が予後と相関するという報告が出てきていますが、悪性黒色腫CTCの分離法はまだ確立されていないようです。CTC数を調べることにより、重症度(予後)の把握のみならず、治療効果を判定できる、転移のメカニズムの解明や新薬の開発に有用であるなど多大なメリットがあり、測定法の確立が待たれます。
 なお、一般に血液10mL中には赤血球400-500億個、白血球3000-9000万個が存在しますので、CTCは極めて少数であることが分かります。

各論

基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)

 日本皮膚悪性腫瘍学会の調査では、我が国で最も多い皮膚癌で、全体の半数近くを占めています(47%)。患者の平均年齢は74歳で、男女比は1.07とやや男性に多く、発生部位は、露光部である頭頚部に80%弱が集中しています。同じ露光部である上肢には少なく、むしろ非露光部の外陰部での発生頻度が高い(外陰部3%、上肢1%)傾向があります。国内での罹患率は人口10万対2-4程度と推計されています。
 腫瘍細胞の起源に関して詳細は不明ですが、顔面正中部に好発することから胎生期の迷入組織、あるいは出生後の毛包幹細胞に後天的な誘因(紫外線や外傷)が作用し、毛芽細胞に分化し腫瘍化すると考えられています。
 危険因子としての紫外線については、日光角化症進展有棘細胞癌では慢性の蓄積線量との相関が強いのに対し、BCCでは紫外線暴露の様式(急激に大量暴露)、宿主側の要因の関与もあるとされています。
 BCCには以下のような特徴があります。

  • 悪性度は低く、生命予後は良い。
    転移を生じて生命予後に影響を及ぼすこともあるが、極めて希である(転移;0.0028-0.055%)。
    術後3-5年のフォローでよい。
  • 発育速度は遅いが、局所破壊性に増殖する。
    顔面、特に鼻を中心とした正中部に好発する。完全に切除すれば問題はないが、手術を施行するにあたっては整容的および機能的配慮が必要である。解剖学的な部位の問題で十分に切除が出来ないこともあり、局所再発を生じやすい(再発率~1%)。
  • 多発例がある(6-7%)。

 BCCの臨床像は結節・潰瘍型、表在型、斑状強皮症型など多彩ですが、最も頻度の高い結節・潰瘍型(80%以上)の典型例では特徴的です。すなわち、表面平滑で蝋様ないし真珠様光沢を有する黒色結節で、多くは黒色小結節が集合して分葉状を呈する外観です。日本人例では色素を伴うことが特有で、色調は灰黒色、灰青色のこともあります(なお、欧米人では無色素性BCCがほとんどです)。増大すると中央部は陥凹し、辺縁部に灰黒色の光沢のある小結節が縁どるように配列し、堤防状の外観となります。さらに進行すると中央部に潰瘍(蚕食性潰瘍)を形成してきます。表面に毛細血管拡張を認めるのも特徴の1つです。BCCの臨床像を掲示しておきます(図2)。また、鑑別疾患として重要な色素性母斑(ほくろ)や老人性疣ぜいを掲示しておきますので、比較してください(図3)。

図2:BCC

早期病変(1)

早期病変(1);扁平小隆起中に不規則な色素斑

早期病変(2)

早期病変(2);複数の黒色小丘疹を有するドーム状小結節。光沢あり。

比較的早期病変(3)

比較的早期病変(3);光沢を有する黒色小結節。陥凹あり。

典型例(1)

典型例(1);中央に潰瘍を形成する扁平隆起性灰黒色結節。隆起部分はやや連珠様。

典型例(1)のダーモスコピー像

典型例(1)のダーモスコピー像;拡張し、蛇行する毛細血管が特徴的。

典型例(2)

典型例(2);中央に蚕食性潰瘍。辺縁に黒色小丘疹が不規則に配列。

典型例(3)

典型例(3);中央に蚕食性潰瘍。辺縁では堤防状に隆起し、黒色丘疹が連珠状に配列。
下方周囲に常色~灰黒色の小丘疹散在。

外陰部発生例

外陰部発生例;光沢を有するドーム状黒色腫瘤。中央部に潰瘍が出きかけている。

図3:BCCの鑑別疾患

色素性母斑(ホクロ)

色素性母斑(ホクロ);光沢を有する黒色丘疹。色素の分布はほぼ一様。

老人性疣ぜい(1)

老人性疣ぜい(1);表面乳頭腫状、扁平に隆起する黒褐色腫瘤。左右対称性の構築。

比較的早期病変(3)

老人性疣ぜい(2);光沢を有する扁平隆起性黒色腫瘤。表面に噴火口様の小陥凹あり。左右対称性の構築。

有棘細胞癌(squamous cell carcinoma:SCC)
表皮内有棘細胞癌:ボーエン病(Bowen’s disease:BD)
         日光角化症(actinic keratosis:AK)

1)有棘細胞癌(SCC)

 日本皮膚悪性腫瘍学会の調査では、我が国で2番目に多い皮膚癌です(31%:SCC17%+BD14%)。患者の平均年齢は、SCCで77.8歳、BDで75.2歳です。発生部位に関しては、SCCでは露光部である頭頚部が41%と最も多く、BDでは下肢が20%と最多であり、頭頚部は6%となっています。
 SCCの誘因として最も重要な因子は紫外線で、その他には放射線、砒素、タール、熱傷瘢痕、円板状エリテマトーデスや扁平苔癬などの慢性炎症、ヒト乳頭腫ウイルスの感染などが挙げられます。発生母地に関しては、1985年までは熱傷瘢痕が最多でしたが、その後は日光角化症(AK)が第1位となっており、さらに経年的増加も著しい状況です。
 一般的には、SCCはリンパ節転移や遠隔転移を生じる確率はあまり高くなく、原発巣の切除のみで治療は十分である場合が多いといわれます。手術を中心とした局所療法で90%以上の治癒率が期待でき、原発巣が切除不能例には放射線療法が選択されます。
 外科的に切除されたSCCの再発率については、観察期間5年以上の場合、8.1%という報告があります。また、転移に関しては80%以上が所属リンパ節に初発することが知られており、全経過を通じて所属リンパ節転移の発現率は5-10%といわれています。さらには、局所再発と転移の95%は治療後5年以内に出現すると考えられ、術後少なくとも5年間は局所再発および転移をチェックするために定期的なフォローが必要です。その際、定期的な画像検査の重要性はあまりなく、むしろ原発巣部と所属リンパ節の厳重な診察が不可欠とされています。局所再発・転移のリスクからみた危険因子を表に示します。一つでも該当する項目がある場合には高リスク群と判定されます。

SCCの危険因子(局所再発・転移)
発生部位と腫瘍径 顔(頬、額以外)・陰部・手足:6mm以上
頭・頬・額・頚部:10mm以上
体幹・四肢(手足以外):20mm以上
放射線照射部位や慢性炎症が発生母地
免疫抑制状態:臓器移植後など
臨床所見 再発例
急速な増大
原発巣の境界が不明瞭
神経学的な自覚症状:神経浸潤に伴い現れる症状-疼痛、灼熱感、知覚麻痺、異常感覚、顔面神経麻痺、
          複視、霞視
組織学的所見 中~低分化
特殊な組織型:adenoid type(棘融解による腺様構造)、adenosquamous type(ムチン産生)、
       desmoplastic type(線維形成性)
深達度がレベルⅣ(真皮網状層に侵入)以上
腫瘍の厚さ:4mm以上
神経あるいは脈管浸潤

 日本皮膚悪性腫瘍学会による皮膚悪性腫瘍診療ガイドラインでは、原発巣は最低限4mmの距離で、高リスク群では6-10mm離して切除することが推奨されています。リンパ節の取り扱いに関しては、SCCはリンパ行性に転移を生じやすく、多くは所属リンパ節に転移を生じた後に初めて遠隔転移を起こしてくると考えられています。臨床的にリンパ節転移を確認してからでもリンパ節郭清術によって根治可能な場合が多く、予防的郭清術を行っても生命予後が改善される保証はないことから、予防的リンパ節郭清の適応とはなりません。なお、最近がん治療の分野で話題となっているセンチネルリンパ節生検に関しては、SCC症例においては施行することによって生存率が向上するという明確なデータはありませんが、考慮しても良いとされています。
 SCCの臨床像:一般的には表面が角化した隆起性病変ないし斑状病変を呈します。高分化型SCCでは、厚い角化性鱗屑が固着する、あるいは過角化した結節・腫瘤・局面となることが多く、表面にビランや潰瘍を生じた場合にはカサブタ(痂皮)を付けてきます。低分化型SCCでは、易出血性の肉芽腫様の外観から、組織の壊死が生じると潰瘍を形成し、さらにはカリフラワー状の増殖を呈してきます。浸出液も多く、悪臭を放つのが特徴です(図4)。

図4:SCC

早期病変

早期病変;淡紅色結節。表面にビランあり、痂皮を付す。

高分化型

高分化型;常色の腫瘤。cysticで角質様物質が中に充満している。

日光角化症(AK)進展SCC(1)

日光角化症(AK)進展SCC(1);暗紅色斑上に生じた肉芽腫様結節。

日光角化症(AK)進展SCC(2)

日光角化症(AK)進展SCC(2);紅斑落屑性局面上に生じた紅色結節。

日光角化症(AK)進展SCC(3)

日光角化症(AK)進展SCC(3);角化性疣状局面に生じた紅色結節。

日光角化症(AK)進展SCC(4)

日光角化症(AK)進展SCC(4);表面にビラン、潰瘍を伴うカリフラワー状の大型腫瘤。周辺に日光角化症が散在する。

2)表皮内有棘細胞癌

 基本的にSCCは、表皮内有棘細胞癌として発生し、放置すると増殖・進展、浸潤性病変を形成し、その後に転移を生じてくると考えられます。したがって、SCCの初期の病変である表皮内有棘細胞癌を早期に発見し、早期に治療することが非常に重要な意味合いを持ってきます。
 代表的な表皮内有棘細胞癌には、ボーエン病(BD)と日光角化症(AK)があります。以前、AKは前がん病変と考えられていましたが、その発生頻度の高さとSCCの多くがAKを発生母地とすることから、現在では表皮内有棘細胞癌と認識され、特に重要視されています。

(1)ボーエン病(BD)

 BDの臨床像は多彩です。典型例では、境界明瞭な紅褐色の斑状病変ないし局面で、表面に鱗屑やカサブタ(痂皮)を付すことが多く、湿疹様に見えるのが特徴(図5)です。角質増殖があるとイボ状に、外陰部や肛門部では色素沈着を伴うことがあり、亀頭部などの皮膚粘膜移行部に生じるとビロード状の紅色局面を呈します(紅色肥厚症)。また、爪部を冒すと爪の変形を生じ、黒色腫や疣ぜいとの鑑別が必要となります。

図5:BD

典型例

典型例;紅斑落屑性局面。表面に鱗屑、痂皮、角化を伴う。一見湿疹やタムシを連想させる。

ボーエン病(BD)進展SCC

ボーエン病(BD)進展SCC;
鱗屑、痂皮を付す紅褐色局面上に生じた角化や肉芽腫様変化を伴う扁平隆起。

 BDの病因に関しては、古くから砒素が有名ですが、その他に放射線、紫外線、最近ではヒト乳頭腫ウイルス(human papilloma virus:HPV)感染が知られています。特に外陰部、肛門部のBDでは、病変部よりHPV-16や18(発癌ウイルス)が検出されることから、これらの部位のBDの場合には尿道、膣、子宮頚部、肛門の癌の有無を検索しておく必要があります。また、肛門部のBDではHIV感染者が多く、HIVの検索も行ったほうが良いといわれています。
 BDの発生部位については、白人では頭頚部や下腿など日光裸露部に多いのに対して、我が国では体幹部や外陰部に多いのが特徴です。通常は単発ですが、10~20%の頻度で多発します。
 BDの治療の第1選択肢は手術です。病変部から5mm程度離し、皮下脂肪織中層で切除することが 推奨されています。術後の再発率については、5%との報告があります。また、SCCへ進展する確率は 5~8%といわれています。

(2)日光角化症(AK)

 AKは、太陽光に含まれる紫外線の長期にわたる曝露により中・高年齢者の露光部、顔面、禿頭部、耳介部、下口唇、前腕、手背部に好発する紅斑角化性病変です。人口の高齢化とともに、その患者数は急増してきており、推定罹病数は年間100万人以上といわれています。年齢別有病率は、30歳代では10%以下ですが、60歳代のスキンタイプⅠ(色白で、日焼けするとすぐに真っ赤になるが、その後には色素沈着を生じない)の人では80%以上になります。
 AKの臨床的意義は、皮膚原発SCCの半数近くが、頭頚部SCCに限っていえばその約70%が、AKから進展している点にあります。我が国の皮膚SCCは顔面に最も多く発生していることと考え合わせれば、紫外線対策とAKの治療がいかに重要であるかが理解できると思います。なお、AKからSCCに進展する確率については、10-15%程度と予想されています。また、10年以内にAKからSCCに進展する可能性は10%ともいわれています。
 AKの臨床像:様々な臨床病型がありますが、共通する基本的な特徴は、大きさが1cm以内の、境界はやや不明瞭で、鱗屑・痂皮を付す、表面粗造な不整形の紅斑です。病型としては、紅斑型(基本型)、色素沈着型、角化丘疹型、疣状型、皮角型、肥大型などがあります(図6)。

図6:AK

紅斑型(基本型)

紅斑型(基本型);1cm位の紅斑角化性皮疹。

角化丘疹型

角化丘疹型

疣状型

疣状型

色素沈着型

色素沈着型

 AKの臨床診断は必ずしも容易ではありません。AK疑いで皮膚生検の施行した場合の正診率は75%に満たなかったという報告があります。したがって、治療の前には皮膚生検を行い、必ず病理組織学的検査をやっておかなければなりません。
 AKの治療ですが、第一に遮光です。現時点での発生予防にもなりますし、病変の消失にも有効であることが示されています。なお、長期的には小児期からの対策が必要と考えられています。我が国での標準的な治療としては、外科的切除、液体窒素による凍結療法、およびイミキモド外用療法が挙げられます。
 外科的切除については、切除マージン1mm、皮下脂肪織中層での切除が推奨されています。この方法で切除後1年以上経過したAK127例で、側方断端陽性9例のうち局所再発を生じたのは2例(22%)であったとの報告がみられます。なお、病理標本で水平方向に取り残しがある場合には再手術を行うか、厳重な経過観察でも構いませんが、深部に取り残しがある場合には再手術が必要であるとされています。
 液体窒素による凍結療法は、その場で麻酔なしで、1-2週の間隔で繰り返し施行できる簡便な治療法です。ただし、再発率がやや高く、跡に色素沈着や色素脱失を伴うことがあり、当科ではあまり採用していません。
 最近登場したイミキモド外用療法は、週3回4週間の外用(1クール)で4週休薬後、効果なければもう1クール追加する方法です。治療期間は長くなりますが、治療後の色素異常もほとんどなく、再発率も低く、手術を希望されない、あるいは出来ない例に使用しています。当科では、ここ2~3年は手術例より多くなっています。治療前、治療後の臨床像を掲示しておきます(図7)。

図7:AKに対するイミキモド外用療法

イミキモド外用治療(治療前)

イミキモド外用治療(治療前);紅斑角化性皮疹。一部に疣状変化。

イミキモド外用治療(治療中)

イミキモド外用治療(治療中);病変部に限局するビラン反応

イミキモド外用治療(治療後)

イミキモド外用治療(治療後);病変は消失。淡い紅斑と老人性色素斑部の色素脱失。

3)悪性黒色腫(malignant melanoma:MM)

 BCC、SCCについで多いのがMMです。我が国における罹病率は1.12人/10万人と公表されています(2001年WHO)。日本皮膚悪性腫瘍学会が行った全国調査(2006、2007年度定点調査と2005~2010年度追跡調査)では3179例の症例が集計され、我が国ではMMの患者数は年々増加しているといわれています(年間2500~3000人程度と推計する報告あり)。
 MMの病型には、悪性黒子型黒色腫(lentigo maligna melanoma LMM)、表在拡大型黒色腫(superficial spreading melanoma SSM)、末端黒子型黒色腫(acral lentigious melanoma ALM)、結節型黒色腫(nodular melanoma NM)の4基本型以外に粘膜部黒子型黒色腫、無色素性黒色腫などがあります。以前は病型により悪性度(予後)が異なると考えられていましたが、現在ではその見解は否定され、悪性度(予後)は腫瘍の厚さにより規定されると改められました。
 LMMは、高齢者の露光部、特に顔面に見られ、我が国ではMM全体の8%を占めています。長年かけてゆっくり拡大する色素班で、10cmに達することもあります。境界一部不明瞭、不規則形、濃淡のある黒色班で、病変内に結節を伴ってきます。
 SSMは、白人に多い病型(白人では全体の63%)で、男性の上背部や女性の下腿など紫外線間欠的曝露部に好発します。やや若年発症の傾向があり、色素性母斑の多発を伴うことが多いといわれています。境界明瞭、不規則形、軽度隆起する濃淡のある黒褐色局面で、病変内に結節や潰瘍を伴います。我が国ではMM全体の19%を占め、最近増加してきています(NMを抜いて第2位)。
 NMは、いきなり結節性病変として発症する病型です。好発部位は特になく、ドーム状あるいは半球状の黒褐色結節や腫瘤で、表層の壊死や潰瘍を伴ってきます。先行する色素斑はなく、前述したABCD ruleは適用できません。我が国ではMM全体の14%を占めています。
 ALMは、我が国で最も多い病型です(全体の44%)。手掌足底、爪および爪周囲、特に足底に好発します。境界不明瞭、不規則形、濃淡のある黒色班で、進行に伴い病変内に結節や潰瘍を伴ってきます。爪母に生じると、爪甲色素線条として観察されます。進展してくると爪甲周囲への色素の沁み出し(Hutchinson徴候)、さらには爪甲の破壊から結節や潰瘍を形成してきます(図8)。

図8:MM

末端黒子型黒色腫早期病変 ALM in situ

末端黒子型黒色腫早期病変 ALM in situ;
濃淡のある不規則形の色素斑、色むらのある局面形成

末端黒子型黒色腫 ALM

末端黒子型黒色腫 ALM;
扁平隆起、一部に結節形成。

末端黒子型黒色腫 ALM

末端黒子型黒色腫 ALM;出血性腫瘤形成。周囲に濃淡のある不規則形の色素斑。

末端黒子型黒色腫 ALM

末端黒子型黒色腫 ALM;無色素性黒色腫

鑑別診断 青色母斑

鑑別診断 青色母斑;漆黒青色の扁平隆起性小結節。左右対称性で、色むらなし。

 MMの発症危険因子としては、紫外線曝露が、白人では特に重要視されています。白人のMMの90%が露出部に発生するといわれ、慢性的曝露よりも間欠的な大量曝露(バカンス時の日光浴、日焼けマシンの使用など)が危険因子と考えられています。また、白人においては小児期の日焼けの度合いが、将来のMM発生のリスクを決定付けるとされており、皮膚がん大国のオーストラリアでは国家プロジェクトとして遮光に対する取り組みがなされています(表)。遮光グッズも“オーストラリアがん協会”が規格などの管理、専用ショップでの販売を行なっています。

国家プロジェクト:Sun Smart Program
* Slip・Slop・Slap・Wrap
 Slip on a long sleeved shirt!  長袖のシャツを着よう!
 Slop on some sunblock!  日焼け止めを塗ろう!
 Slap on a hat that will shade your neck!  首をカバーする帽子をかぶろう!
 Wrap on some sunglasses!  サングラスをかけよう!
学校教育
* No Hat, No Play Policy  帽子を忘れた子供は、曇った日でも戸外に出さない

 我が国においては、小児期に遮光をすることがMMの予防につながるという結論は得られていませんが、近年紫外線が影響すると考えられている悪性黒子型黒色腫と表在拡大型黒色腫が増加しているとの報告があり、紫外線対策は必要と思われます。
 紫外線以外の危険因子には、外傷、免疫抑制状態(臓器移植患者・悪性リンパ腫患者・HIV感染/AIDS患者)、肥満(男性)、女性ホルモンの曝露期間などが挙げられます。特に外傷は、日本人に多い末端黒子型黒色腫との関連が示唆されています。なお、喫煙や妊娠・出産回数はリスク低減因子と考えられています。
 色素性母斑からMMが発生するかどうかは気になるところです。長径が20cmを超える巨大先天性色素性母斑では、数%(2.3~7.5%)にMMが発生するとされています。その発症時期は幼児期、70%が10歳以下であり、色素性母斑の真皮深層から生じてくるといわれています。小児期から思春期におけるMMの発生リスクは、一般人に比べ465倍高いとも報告されています。したがって、巨大先天性色素性母斑に対しては早期切除(少なくとも思春期までに)が行なわれており、早期の予防的切除群と非切除群におけるMMの発生率は各々0.6%と7.5%であったという報告があります。
 小型(1.5cm以下)あるいは中型(長径20cm未満)の先天性色素性母斑でのMM発生リスクは、0.8~2.6%程度といわれ、その発生時期は思春期以後のことが多く、母斑の辺縁の表皮内成分から生じてくるとされています。小型、中型の先天性色素性母斑については思春期以降に切除することが勧められています。
 いっぽう、ほとんどの日本人に認められる後天性色素性母斑からMMが生じてくることは極めて希であり、通常は無視してよいかと思います。ただ、後天性色素性母斑の個数が多いとMM発生リスクが高まることが、オーストラリアやアメリカでの調査で明らかになっています。前者の調査では、後天性色素性母斑が100個以上の場合、10個以下の場合と比べMM発生リスクは12倍となっています。我が国でも最近、末端黒子型黒色腫(ALM)以外の黒色腫患者群では健常コントロール群より有意に2mm以上の後天性色素性母斑の数が多いことが示されています。
 MMの新規症例(遠隔転移なし)につき治療の流れを示しておきます。まずは全切除生検を行い腫瘍の厚さを決定します(予後に密接の関連する因子です)。切除範囲ですが、以前は5cm離して切除していた時期もありましたが、最近ではエビデンスに基づき表に示すようになっています。

推奨切除マージン:
腫瘍の厚さ切除マージン
In situ5mm以上
1.0mm以下1.0cm
1.01-2.0mm1.0-2.0cm
2.01-4.0mm2.0cm
4.01mm以上2.0cm程度

 リンパ節に関しては、臨床および画像評価でリンパ節転移があれば所属リンパ節郭清となりますが、転移がない症例ではセンチネルリンパ節生検が行なわれます。その場合、腫瘍の厚さが0.75mm以下のケースでは推奨されていませんが、1.0mm以上では勧められています。なお、0.75~1.0mmのケースでは個々のケースにより判断するとなっています。センチネルリンパ節生検で転移が証明された場合、標準治療としてリンパ節郭清が勧められています。
 リンパ節郭清術後は補助療法として化学療法が追加されます。リンパ節転移がなくても腫瘍の厚さが4mm以上の場合には、転移リスクが高いため術後補助療法(化学療法)が望ましいとされています。

過去8年間の皮膚悪性腫瘍手術件数

 表および図に平成18年以降、当科で行った手術件数を示しています。最近、AKの手術件数が減少していますが、治療法がイミキモド外用療法にシフトしてきたことによるものです。期間を通して最も多い皮膚癌はBCCであり、ここ2-3年SCCとともに増加しています。悪性黒色腫(MM)については、方針として岡山大学皮膚科皮膚外科班に紹介することにしておりますので、平成21年以後に手術治療症例はありません。なお、表中MCSとは、metastatic carcinoma of the skinの略で、転移性皮膚癌(他臓器癌の皮膚転移)のことです。

AKBDBCCSCCMMMCS
平成18年730200
平成19年438211
平成20年612111
平成21年944304
平成22年644001
平成23年712702
平成24年248501
平成25年308402
平成26年 5 2 6 13 0 4
平成27年 2 4 8 7 1 1

皮膚悪性腫瘍手術件数