診療内容

血液内科

平成26年より血液内科が開設されました。平成27年より竹内医師・藤井医師の2人体制で診療にあたっております。
外来は竹内医師が月曜日と木曜日を担当し、藤井医師は火曜日と金曜日を担当します。竹内医師は主に急性白血病を専門として診療を行い、藤井医師は悪性リンパ腫を中心に診療を行います。                          入院患者は主に血液悪性疾患です。平均入院患者数は、15名から20名です。疾患別には、悪性リンパ腫と急性白血病が多く、他には骨髄異形成症候群や多発性骨髄腫、慢性白血病です。悪性疾患以外には各種貧血や血小板減少症の診断と治療を行います。外来では、上記の疾患以外に溶血性貧血や血友病の診療を行います。            

新病棟南館には5床の準無菌室が整備され、主に急性白血病の治療に利用しております。無菌室の利用により清潔な環境で強力な抗がん剤治療を安全に行うことが可能です。

医師のご紹介  外来診察表

主な疾患の解説

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫はリンパ組織由来の悪性疾患です。 治療は主に抗がん剤による化学療法で、局所治療が必要な場合には、放射線治療を行います。 完全寛解とその後の治癒を目指します。化学療法は治療ガイドラインに従い標準治療を行います。 保健適応のある新規抗がん剤の早期導入も心がけております。

白血病

急性白血病は急速に進行する血液のがんです。無治療の場合、短期間で命にかかわることとなる疾患ですが、強力な化学療法により完全寛解とその後の治癒を目指します。
慢性骨髄性白血病は緩徐な経過をとる血液のがんで、 無症状のことが多いです。抗がん剤の内服治療が著効し、治療 を継続することで深い寛解が得られます。治療導入時には、 入院にて治療の副作用の有無を確認し、その後は外来治療を継続します。

骨髄異形成症候群及び多発性骨髄腫

骨随異形成症候群と多発性骨髄腫は高齢者に多い血液がんです。 いずれも緩徐な経過を辿ります。これらの疾患に対して治療ガイドラインでは 新規抗がん剤による治療が推奨されており、当科でも治療ガイドラインに準じて 治療を行い、寛解を目指します。

造血幹細胞移植、骨髄移植

現在、当科では移植医療は実施しておりません。 造血幹細胞移植が必要なハイリスク患者は、近隣の移植可能施設へ治療を依頼しております。

診療実績

1年間の新規入院患者数(平成28年度)

悪性リンパ腫57名、急性白血病15名、骨髄異形成症候群10名、多発性骨髄腫6名、慢性白血病2名、その他、再生不良性貧血、マクログロブリン血症、成人T細胞白血病、後天性血友病、TAFRO症候群など。

1年間の新規入院患者数(平成27年度)

悪性リンパ腫45名、急性白血病8名、骨髄異形成症候群8名、多発性骨髄腫5名、マクログロブリン血症3名、その他、成人T細胞白血病、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少性紫斑病など。

1年間の新規入院患者数(平成26年度)

悪性リンパ腫37名、骨髄異形成症候群8名、慢性白血病1名、多発性骨髄腫5名、その他、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、エバンス症候群、血栓性血小板減少性紫斑病など

血液内科

血液内科

当院における悪性リンパ腫の治療成績

(5年生存率、対象は平成18年から24年までの新規患者133名)

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(73名)

①全体66%、②年齢65歳以下95%、65歳から80歳64%、

③臨床病期1期及び2期91%、3期及び4期44%

ろほう性リンパ腫(17名)

①全体81% ②年齢65歳以下100%、65歳から80歳67%

ホジキンリンパ腫(11名)

①全体100%

ただし、80歳以上の超高齢者は治療成績の対象外とさせて頂きました。

治療の基本方針

血液悪性疾患では65歳以下の若年の場合、標準治療により多くの寛解導入と その後の治癒が期待できます。悪性リンパ腫の場合には、計6回の化学療法を 月1回の割合で反復します。65歳以上の高齢者では臓器合併症の有無や予備力の評価が重要で、 時に薬剤の減量が必要となります。他のがん種に比べて治療が強力で、治療後に重症感染症や 臓器障害を合併する危険性があるため、80歳以上の超高齢者患者では、本人及び家人と 相談しながら治療方針を慎重に検討します。

血液カンファレンス

毎週水曜日に、医師、看護スタッフ、薬剤師、がん相談支援センター職員による 多職種カンファレンスを行い、スタッフ間で治療方針や診療上の問題点の確認など 患者情報を共有します。

関連施設及び臨床研究

当科は、岡山大学血液腫瘍内科の関連施設です。血液腫瘍内科が事務局となり主催している 西日本リンパ腫治療グループ(West-Japan Hematology Oncology Group:West-JHOG)の臨床研究に 参加しております。
急性白血病の治療では、日本成人白血病共同研究グループ(Japan Adult Leukemia Study Group:JALSG)の臨床試験に参加しております。

研修希望及び認定医資格の取得について

当科では後期研修医を募集しています。病院見学等を希望される場合には当院人事課へご連絡下さい。適宜、対応させて頂きます。
当科は、日本内科学会、日本血液学会、日本臨床腫瘍学会、日本がん治療医認定機構の 教育研修施設です。取得が可能な資格としては、日本内科学会総合内科専門医、 日本血液学会専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医、 日本がん治療医認定機構認定医があり、資格の取得まで責任を持って指導します。

各疾患の具体的な診断と治療

悪性リンパ腫の診断と治療

悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫は、リンパ組織の悪性疾患です。その半数は頚部、腋窩、そけい部のリンパ節に生じ、残り半数は全身の臓器に生じます。頻度の多い臓器や部位は胃、扁桃腺、鼻腔、大腸、甲状腺で、その他に、肺、肝臓、脾臓、膀胱、骨、皮膚、骨髄に病変を生じます。

組織分類と悪性度

悪性リンパ腫は、組織分類ではホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されます。患者数が多いのは、非ホジキンリンパ腫です。さらに、非ホジキンリンパ腫はB細胞型リンパ腫とT細胞型リンパ腫に分類されます。組織分類の種類は多く、およそ30種類から40種類もの組織分類があります。
組織分類は、病気の進行する早さを示す悪性度と関連しています。悪性度は、週単位で急速に進行する高悪性度、月単位で病期が進行する中悪性度、数ヶ月から年単位で病期が進行する低悪性度の3つに分類されます。中悪性度の中で患者数の多い組織型は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、低悪性度の中で患者数の多い組織型は、ろほう性リンパ腫です。

組織診断とリンパ節生検

リンパ節腫脹を認めた場合、診断目的にてリンパ節生検を行います。病理検査により組織診断を行い、さらにリンパ腫細胞の表面蛋白マーカーの分析や遺伝子の束である染色体検査にて予後不良因子の有無を判断します。

悪性リンパ腫の症状

症状として、リンパ節原発の場合には、頚部、腋窩、そけい部に、リンパ節腫脹を生じます。通常、腫脹したリンパ節は硬めで痛みを伴うことはまれです。臓器に病変を生じた時には、臓器特有のがんの時と同じ症状を認めます。進行期の場合には、発熱、食欲不振、体重減少などの全身症状を伴い、それらはB症状と呼ばれます。

悪性リンパ腫の検査

悪性リンパ腫での検査の目的は、臓器予備力の評価、合併症の有無の確認と病気の広がりを判定することです。血液検査にて、肝機能検査、腎機能検査を行い、胸部レントゲン検査、心電図にて各臓器の予備力を判定します。また、治療上問題となる合併症の有無につき評価をします。血液検査では、B型肝炎、C型肝炎の有無や糖尿病の有無についても評価します。
病気の広がりについては、画像検査では、全身CT検査を行います。可能であれば近医にてPET-CT検査を行います。PET-CT検査は悪性リンパ腫に関しては、とても有用な検査で微小なリンパ節病変の検出が可能です。その他、骨病変や肝臓、脾臓へのリンパ腫の浸潤の検出も可能です。また、胃カメラ検査にて胃病変の確認と骨髄検査にて骨髄中へのリンパ腫細胞の浸潤の有無を判断します。

臨床病期と治療の計画

病気の進展を示す臨床病期は、病変が局所に限局したⅠ期、Ⅱ期と病変が広い範囲に進展したⅢ期、Ⅳ期に分類されます。通常、Ⅰ期、Ⅱ期では、抗がん剤を用いた化学療法3コースと放射線治療の組み合わせ治療を行い、Ⅲ期、Ⅳ期の進行期では、およそ月に1回の割合で化学療法6コースを行います。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の治療

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対する標準治療は、リツキサンを併用したCHOP療法です。CHOP療法は、エンドキサン、アドリアマイシン、オンコビンの3種類の抗がん剤と副腎皮質ホルモン剤のプレドニンの合計4剤を組み合わせた治療です。非ホジキンリンパ腫に対して有効で、従来の標準治療です。リツキサンは、リンパ腫細胞の表面にあるCD20蛋白に対する抗体です。単剤でも抗腫瘍効果があり、CHOP療法に併用することで上乗せ効果があります。CD20陽性リンパ腫に対して、リツキサン併用CHOP療法は新しい標準治療として位置づけられています。その治療の効果としては、8割近い患者で病変が全て消える完全寛解が得られ、5割近い患者で再発のない治癒が期待できます。
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む中悪性度リンパ腫の予後は、①年齢 ②血液検査のLDH ③全身状態 Performance Status ④臨床病期 ⑤リンパ節以外の病変の数の5項目からなる国際予後指数により低リスク群、低−中リスク群、高−中リスク群、高リスク群の4群に分類されます。国際予後指数での高リスク群や、治療抵抗性を示す染色体異常が検出された症例や早期に再発した症例では、65歳以下の若年であれば、再発予防を目的として自家末梢血幹細胞移植を組み込んだ治療計画を検討します。

ろほう性リンパ腫の治療

ろほう性リンパ腫は、病状が緩除に進行する悪性リンパ腫です。無治療でもあまり病状が進行しないこともあり、現在も、明確な標準治療や治療指針が確立されていません。推奨される治療内容や治療方針には、1.従来の化学療法の実施、2.新規の化学療法の実施、3.リツキサンを併用した化学療法の実施、4.リツキサンの単剤治療、5.無治療にて経過観察などがあります。当院では、診断後はタイミングを見てリツキサン併用化学療法の実施を勧めています。また、再発や再燃を認めた場合にも、明らかな進行がなければ経過観察としています。

高悪性度悪性リンパ腫の治療

高悪性度の悪性リンパ腫の場合、CHOP療法では治療効果が十分ではなく、再発する危険性が高いため、急性白血病に準じた強力な化学療法を実施します。しかし、その治療が著効した場合には治癒を期待することができます。

治療完遂の意義

悪性リンパ腫の治療では、一定の期間内に治療スケジュールを完遂することが大切です。その結果、多くの患者で寛解導入とその後の治癒が得られます。具体的には、感染を含む治療関連の合併症の予防と、合併症の発症時には早期診断と治療を行い重症化させないことが重要と考えます。

急性白血病の診断と治療

症状と診断

急性白血病は、骨髄中の幼弱な白血球が腫瘍化し急速に進行する疾患です。無治療の場合は数日から、数週間で命に関わる状態となります。症状として、正常な白血球減少による発熱や肺炎などの感染症状、赤血球減少による息切れや動悸などの貧血症状、血小板減少による鼻出血や歯肉出血、出血斑などの出血症状を生じます。急性白血病が疑われた場合には骨髄検査を行い、細胞分類、腫瘍細胞の表面蛋白マーカーの分析や染色体検査、白血病関連の遺伝子検査を行います。

急性白血病の分類

急性白血病は、白血病細胞の種類により急性骨髄性白血病、AMLと急性リンパ性白血病、ALLに分類されます。成人での比率は4対1の割合でAMLが多いです。AMLの中には治療薬剤の異なる急性前骨髄性白血病、APLがあり、ALLには、通常のALLとフィラデルフィア染色体(Ph)陽性ALLがあり、治療薬剤が異なります。現在、急性白血病は、従来の形態分類に基づくFAB分類と、染色体検査や遺伝子検査に基づくWHO分類によりその種類はさらに細かく分類され、治療効果や予後を判断します。

予後因子とリスク分類

急性白血病の予後に関わる要因として、AMLでは、1.芽球のペルオキシダーゼ染色陽性細胞の割合、2.年齢、3.初診時の白血球数、4.FAB分類、5.全身状態 Performance status、6.寛解導入療法の実施回数、7.染色体異常があります。予後分類では、予後良好群、予後中間群、予後不良群の3群に分類します。特に染色体異常や遺伝子変異は重要な予後因子です。
ALLでは、Ph陽性は大きな予後不良因子であり、通常のALLと異なる治療薬剤や治療方針を実施します。通常のALLでは、1.寛解導入までに要した期間、2.初診時の白血球数、3.年齢、4.染色体異常により、高リスク群を判定します。高リスク群の場合、標準治療だけでは治療効果が不十分で再発が多いため、55歳以下の若年であれば、寛解後治療として骨髄移植など造血幹細胞移植の追加を積極的に検討します。

無菌管理と準無菌室について

急性白血病の治療は、強力な抗がん剤治療です。副作用として、治療後3週間程度の著しい白血球減少を生じ易感染性となります。この期間は重症肺炎など重篤な感染症を合併することがあるため無菌管理が必要です。当院では、準無菌室への入室、あるいは一般個室にてクリーンベッドを利用して無菌管理を行います。準無菌室の利用により安全に治療を行うことが可能です。

急性白血病の治療の手順

治療の手順として、まず、入院後早期に複数の抗がん剤による化学療法を行います。初回治療では、骨髄検査にて白血病細胞が消失し造血が正常となる完全寛解を目指します。この治療を寛解導入療法と言います。寛解導入後は、残存する病変をさらに減少させるため、強力な化学療法を反復します。これを地固め治療と言います。地固め治療により病気が再発しない状態の治癒を目指します。AMLでは地固め治療で治療は終了です。ALLでは再発が多いため、再発予防を目的として維持療法を行います。標準治療だけでは再発の危険性が高い高リスク群や、再発後に治療にて2度目の完全寛解となった場合は、積極的に造血幹細胞移植を検討します。

急性骨髄性白血病(AML)の治療と成績

AMLの標準治療として、寛解導入療法は、キロサイドとダウノルビシン、またはキロサイドとイダルビシンの2種類の抗がん剤を7日間投与します。治療後、8割の患者が完全寛解となります。その後は、薬剤を変更して地固め療法を3回から4回行います。治療により治癒する割合は、おおよそ予後良好群で7割、予後中間群で5割、予後不良群で2割です。予後不良群でも若年の場合、寛解後治療に造血幹細胞移植を行うことで5割の患者で治癒が得られます。

急性前骨髄性白血病(APL)の治療と成績

AMLの中でもAPLは、播種性血管内凝固症候群、DICを合併し出血症状を伴う重篤な白血病です。APLに対して、レチノイン酸の内服にて白血病細胞を正常白血球へと変化させる分化誘導療法はとても有効です。標準治療として、レチノイン酸の内服と抗がん剤治療の併用にて寛解導入療法を行い、寛解後は地固め治療を3回から4回行います。APLの治療成績は良好で、9割の患者が完全寛解となり、8割の患者で治癒が得られます。

通常の急性リンパ性白血病(ALL)の治療と成績

通常のALLの標準治療として、オンコビン、ダウノルビシン、エンドキサン、ロイナーゼの4種類の抗がん剤と副腎皮質ホルモンを併用し、3週間かけて寛解導入療法を行います。治療後、8割の患者が完全寛解となります。寛解後は、薬剤を変更しながら、4回から6回の地固め療法を行い、その後は外来にて、オンコビンの注射やロイケリン散とメソトレキセートの併用内服などの維持療法を2年間継続します。また、ALLでは脳神経再発を生じるため、初回治療より抗がん剤の髄腔内注射を全身治療に併用します。ALLは低リスク群では化学療法単独でおおよそ5割の患者で治癒が得られますが、高リスク群では再発が多く、ALL全体での治癒は3割程度です。高リスク群でも若年であれば、寛解後治療に造血幹細胞移植を実施すれば5割の患者で治癒が得られます。

フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病(Ph陽性ALL)の治療と成績

Ph陽性は、ALLでは強力な予後不良因子で、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)の使用以前は寛解導入不能や早期再発も多く、造血幹細胞移植の実施も困難で、長期生存は2割程度でした。しかし、慢性骨髄性白血病の治療薬であるTKIのグリベックと化学療法を併用した治療により成績が大きく改善し、9割の患者が完全寛解になるようになりました。現在は、第二世代TKIのスプリセルと化学療法の併用により、治療成績がさらに改善することが期待されています。TKIの併用によりPh陽性ALLでも、若年であれば寛解後治療に造血幹細胞移植を実施することが可能となり、5割以上の患者で治癒が得られます。

高齢者急性白血病の治療

急性白血病の患者のうち、半数は65歳以上の高齢者です。高齢者では、併存疾患の合併や肝臓や腎臓などの臓器予備力が低下していることがあります。高齢者では、若年に行う強力な標準治療の実施が困難で、治療後に重症肺炎や臓器障害を生じる危険性があります。また、白血病自体が治療抵抗性のことも多く、治療成績は不良です。高齢者白血病に対する標準治療はなく、若年と同様に治癒を目指して治療を行う場合もあれば、生活の質(QOL)の維持を目指して治療を行う場合もあります。治療は、減量した多剤併用化学療法、少量化学療法、保存的治療に大別されます。70歳以下の場合は、若年に準じた化学療法を行い、80歳以上の場合は、少量キロサイド療法など少量化学療法が主体です。高齢者の治療に関しては、治療目標の検討、治療方法の選択、治療薬剤の使用量など慎重な対応が必要と考えます。

慢性骨髄性白血病の診断と治療

慢性骨髄性白血病の診断

慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞のがん化により生じる血液のがんです。慢性白血病では、様々な分化段階の白血球系細胞が存在し、経過は数年にわたり、ゆっくりと進行します。症状は無症状であることが多く、時に倦怠感や腹満感を伴うこともあります。人間ドックや健康診断の受診をきっかけに病気が見つかることも多くあります。
検査では、血液一般検査にて白血球数の著しい増加を認め、白血球数は2万から10万となります。幼弱な白血球から成熟白血球までの様々な白血球が増加します。慢性期では貧血や血小板減少を伴うことは稀で、むしろ血小板数は増加することがあります。骨髄検査でも、血液一般検査と同様、白血球系細胞の著しい増加を認め、幼弱な白血球から成熟白血球までの様々な白血球が増加します。骨髄の染色体検査では、9番染色体と22番染色体の染色体転座により生じるフィラデルフィア染色体異常を認めることが特徴です。最近は、血液検査でもフィラデルフィア染色体異常を確認することが可能です。フィラデルフィア染色体異常により強力なABLチロシンキナーゼ活性を持つ異常蛋白が合成され、その結果、造血幹細胞が異常な増殖を始め、白血病細胞の増加を生じます。

病気の時期

病気の時期には、3年から5年かけてゆっくりと病気が進行していく慢性期、白血病化して急速に病状が進行する急性転化、その間の期間の移行期の3つの病期があります。

慢性骨髄性白血病、慢性期の治療

慢性期の慢性骨髄性白血病には、抗がん剤の内服治療を行います。治療効果はとても有効です。治療薬には、第1世代薬剤のグリベックと第2世代薬剤のタシグナ、スプリセル、ボシュリフ、第3世代薬剤のアイクルシグの計5種類のチロシンキナーゼ阻害薬があります。チロシンキナーゼ阻害薬は、異常蛋白のABLチロシンキナーゼ活性を選択的に阻害し、白血病化をさまたげ病気を治します。グリベックによる長期の治療成績が定期的に報告されており、8年間の観察期間で、8割から9割の患者が再発することなく生存しています。第2世代の薬剤のタシグナとスプリセルでは、さらに良好な治療成績が期待されています。現在の治療目標は、治療薬にて短期間の内に病気を減少させ、分子学的寛解と遺伝子学的寛解を達成し、その後の生存期間を延長することです。

慢性骨髄性白血病、急性転化時の治療

白血病が急性転化した場合、急性白血病に準じた強力な抗がん剤による化学療法とチロシンキナーゼ阻害薬の内服を同時に行います。しかし、その治療成績は良好ではありません。また、治療後、寛解が得られ50歳以下の場合には、再発予防を目的として骨髄移植の実施が望ましいです。

治療期間とその有効性

治療が有効な場合はできる限り治療を継続します。治療期間が長い程、骨髄中の白血病細胞はさらに減少していき、より深い寛解を得ることができます。現在、治療期間や治療の終了時期に関しては、明らかな結論は得られていませんが、治療の継続により深い寛解状態を維持して、病状を急性転化へと進展させないことが大切です。

骨髄異形性症候群の診断と治療

診断

骨髄異形成症候群(MDS)は造血幹細胞の異常により生じる血液のがんです。進行は緩徐で、無症状で見つかることも多くあります。MDSは、主に60歳をこえる高齢者に生じ、発症の平均年齢はおよそ70歳です。骨髄検査では、赤血球、白血球、血小板の3血球系統の造血細胞に形態の異常を認めます。異常血球は正常に発育せず造血の途中で崩壊してしまうため、貧血、白血球減少、血小板減少などの血球減少を生じます。血球減少の組み合わせは1血球だけのものから3血球全てが減少するものまで様々で、重症の場合には赤血球や血小板の血液製剤の輸血が必要です。一部のMDSでは骨髄芽球の増加を生じ、病気が進行すると急性白血病に分類されます。

MDSの分類

MDSは、造血細胞の形態の異常、骨髄芽球の増加の有無、染色体検査での異常の有無より、①不応性貧血、②単系列の細胞異形を伴う不応性血球減少、③多系列の細胞異形を伴う不応性血球減少、④環状鉄芽球を伴う不応性貧血、⑤過剰芽球を伴う不応性貧血−1、⑥過剰芽球を伴う不応性貧血−2、⑦分類不可能なMDS、⑧5qマイナス症候群に分類されます。

重症度と予後

病気の重症度は、国際予後スコアシステム(IPSS)、あるいは、国際予後スコアシステムの改訂版(IPSS-R)が用いられます。IPSSでは、骨髄中の骨髄芽球数、染色体検査、血球減少の系統数の3項目により、低リスク群、中間リスク群−1、中間リスク群−2、高リスク群の4群に分類されます。また、IPSS-Rでは、超低リスク群、低リスク群、中間リスク群、高リスク群、超高リスク群の5群に分類されます。重症度により平均余命が異なり、IPSSによる50%生存期間は、低リスク群で6年、中間リスク群−1で3年6ヶ月、中間リスク群−2で1年、高リスク群で5ヶ月とされています。IPSS-Rでは、超低リスク群で9年、低リスク群で5年、中間リスク群で3年、高リスク群で1年6ヶ月、超高リスク群で10ヶ月です。重症であるほど平均余命は短く、より強力な治療が必要です。

症状と検査

症状は、貧血症状としては動悸、息切れ、ふらつきがあります。白血球減少では肺炎や敗血症など感染や発熱を生じ、血小板減少では鼻出血など粘膜出血や手足の紫斑など出血傾向を生じます。
検査では骨髄検査が重要です。骨髄検査では造血細胞の形態異常の有無、骨髄芽球の増加の有無を判断します。同時に染色体検査を行います。

治療の目的と方法

MDSは治療により根治することが難しい疾患であるため、治療目標は元気な状態での延命です。治療方法は、芽球が増加しないタイプ、芽球が増加するタイプ、血球減少の程度や染色体異常の種類により異なります。治療としては血球減少が主体である低リスク群には、蛋白同化ホルモン剤の内服やサイトカイン療法を行い、輸血依存性や芽球の増加を伴う高リスク群では化学療法を行います。サイトカイン療法では赤血球造血を刺激するエリスロポイエチン製剤や白血球の造血を刺激する顆粒球コロニー刺激因子製剤(G−CSF製剤)を使用します。芽球が増加するタイプでは抗がん剤による化学療法を行い、標準治療としてアザシチジン治療が推奨されています。アザシチジン治療では高い有効性が報告されており、治療が有効な場合にはできる限り長期間、治療を継続していくことが勧められています。他の化学療法としては、少量キロサイド治療もあります。補助療法としては重症貧血に対して赤血球製剤の輸血を行い、著明な血小板減少に対して血小板製剤の輸血を行います。重症例の場合には長期間にわたり輸血が必要となります。
他の治療方法としては一部のMDSに対して免疫抑制療法やレナリドマイド内服治療を行います。骨髄低形成型のMDSではシクロスポリン内服による免疫抑制療法が有効で、5qマイナス症候群ではレナリドマイド内服治療が有効です。年齢が50歳以下で重症の場合には根治を目指して骨髄移植など造血幹細胞移植を行うこともあります。
治療方針に関しては、病型や重症度に加え、年齢、全身状態 Performance status、合併症の有無を考慮して検討します。特に70歳代や80歳代の高齢者の場合には慎重な対応が必要と考えます。