施設認定

ごあいさつ

当院は岡山県肝炎二次専門医療機関に認定されています。抗ウイルス療法(インターフェロン,核酸アナログ製剤)に対する肝炎医療費助成制度申請時の診断書作成も可能です。

医師のご紹介  外来診察表

当院は「岡山県肝炎二次専門医療機関」に認定されています。

主な診療内容

急性肝炎,慢性B型肝炎・C型肝炎,肝硬変,肝癌,脂肪肝,自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変など,肝疾患全般にわたり診断と治療を行っています。

  • 腹部超音波・造影超音波
  • インターフェロン療法
  • 核酸アナログ療法
  • 肝生検
  • 経皮的ラジオ波焼灼術(RFA)
  • 腹部血管造影・肝動脈化学塞栓療法(TACE)
  • 噴門部胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性閉塞術(B-RTO)
  • 難治性静脈瘤に対する経皮経肝静脈瘤塞栓術(PTO)

医療関係者の方へ

①肝臓内科では病診連携・病病連携により協力しつつ肝臓病の地域連携に貢献したいと考えています。
②B型肝炎,C型肝炎,肝癌の治療は急速に進歩しています。県からの抗ウイルス療法助成金制度もあります。治療適応の有無についてお気軽に御相談ください。
③B型肝炎,C型肝炎の方は肝機能検査が正常で無症状であっても肝がんが発生する場合があります。早期発見のためには無症候性キャリア・年1-2回,慢性肝炎の方・年2回,肝硬変の方・年4回,エコー(またはCT/MRI)での検査が必要です。脂肪肝から肝硬変・肝癌に進行することもあります。当科では定期的に画像診断チェックのご依頼に対応させていただきます。
よろしくお願い申し上げます。

研修医募集

肝臓内科では後期研修医および常勤医師を募集しています。
見学、研修などのご要望にも積極的に応じておりますので、ご遠慮なくご連絡下さい。

担当:小橋春彦 E-mail: kobashi0584@gmail.com

TEL:086-222-8811
FAX:086-222-8841

肝臓内科疾患情報

岡山赤十字病院肝臓内科 小橋 春彦,歳森 淳一
(2016年2月更新)

目次

Ⅰ.B型肝炎
(1) 疫学と自然経過
(2) B型肝炎ウイルスマーカー
(3) 診断の流れと経過観察
(4) 治療
(5) 治療ガイドライン

Ⅱ.C型肝炎
(1) 全体像
(2) 肝組織像と血小板数
(3) 診断の進め方
(4) 肝硬変への進行と肝発癌
(5) 治療
1) 抗ウイルス薬 ①直接作用型抗ウイルス薬(DAA) ②インターフェロン
2) 治療の実際 ①ジェノタイプ1型 ②ジェノタイプ2型 ③肝庇護療法
3) 治療ガイドライン:
①平成27年5月厚生労働科研研究班 (抄)
②平成27年12月4.1版日本肝臓学会ガイドライン(抄)

Ⅲ.肝細胞癌
(1) わが国における実態
(2) スクリーニングと診断
(3) 治療方針
- 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン
- JSHコンセンサスに基づく肝細胞癌の治療アルゴリズム
(4) 治療の実際

本文

Ⅰ.B型肝炎

(1) 疫学と自然経過

図Ⅰ-(1)

B型肝炎ウイルス(HBV)は肝臓に特異的に感染する肝炎ウイルスの1つです。血液・体液を介して感染し、感染時期や宿主免疫との関係により無症候性キャリア、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌などさまざまな病態を引き起こします。
わが国では人口の約1%がHBVの保有者(キャリア)と推定されています。ほとんどは出生時母子感染~幼少期感染が原因と考えられ,感染の後HBe抗原陽性・高ウイルス量・肝機能正常の無症候性キャリアとなります。(1986年以降はワクチンとグロブリン投与により母子感染は予防されるようになっています。)
HBVキャリアとなった方の85~90%は成人期までに肝炎発症を経てウイルス量が減少し,HBe抗原陰性・抗HBe抗体陽性(HBeセロコンバージョンといいます)・肝機能正常となりますが、残りの方は慢性肝炎に移行します。慢性肝炎から年率2%の割合で肝硬変へと進行します。また無症候性キャリアから年に0.1~0.4%,慢性肝炎から年に0.5~0.8%,肝硬変から年に1.2~8.1%の割合で肝がんが発生します。この間自覚症状が何もなく、気づいたときにはすでに進行した状態だった,ということが多いのが現状です。HBVキャリアかどうかは血液検査で簡単に判ります。一度調べておくことをお勧めします。
一方、成人期のHBV感染は主に性行為感染によるものです。その場合急性肝炎を発症し,ほとんどの場合は臨床的治癒の状態となります。しかし、約1%は劇症肝炎という重篤な状態となる点に注意が必要です。また従来日本にはほとんど存在しなかったジェノタイプA(いわゆる欧米型)のHBVによる急性肝炎が近年急速に増加しており,その場合は急性肝炎の約10%が慢性肝炎に移行すると推定されています。今後ジェノタイプAのB型慢性肝炎が増加するのではないかと懸念されています。

(参考:日本肝臓学会編。「慢性肝炎の治療ガイド2008」 文光堂(2007年),小橋春彦:「B型肝炎の最新の診断と治療」. 2007年度川崎病院教育テキスト)

(2) B型肝炎ウイルスマーカー

B型肝炎ウイルス(HBV)の状態を反映する各種の血液検査があり,B型肝炎ウイルスマーカーと呼ばれます。
(1) HBs抗原(HBsAg):陽性の場合,現在HBVに感染していることを示します。最近HBs抗原量を詳しく測定することができるようになり,HBs抗原量の多寡によって今後の肝炎の経過予測や,核酸アナログ製剤(後出)を中止できるかどうかの判断材料として有用であることがわかって来ました。
(2) HBs抗体:HBVの中和抗体。HBs抗体陽性の場合,過去にHBVに感染し現在は治癒していることを示します。ただし治癒した後も肝臓の中にごく微量ですがHBV DNAの一部が残っていると言われています(HBワクチン接種によって陽性化した人を除く)。
(3) HBe抗原:無症候性キャリア期から慢性肝炎期のウイルス量が多い時期に陽性。
(4) HBe抗体:活動期を経てウイルス量が減少し肝炎が鎮静化するとHBe抗原が陰性化しHBe抗体が陽性化します(HBeセロコンバージョンと呼びます)。ただし,HBe抗体陽性でもHBVが増殖し活動性の強い肝炎が続く場合もあり,必ずしも肝炎の鎮静化を示すわけではありません。
(5)HBc抗体:高力価陽性は持続感染を、低力価陽性は過去の一過性感染を示します。ただしHBs抗体と同じく,HBc抗体が陽性の場合は肝臓の中にごく微量ですがHBV DNAの一部が残っていると言われています。
(6)IgM型HBc抗体:高値陽性の場合はB型急性肝炎(初感染)であることを示します。
(7)HBV DNA量:病態・予後・肝発癌に関与する因子として重要です。現在最もよく用いられている測定方法はリアルタイムPCR法(Taq-Man PCR法)で,微量から高濃度まで広い範囲の血中ウイルス量を測定することができます
(8)HBV genotype(ジェノタイプ・ゲノタイプ)
HBV DNAの相同性に基づき8種類(A~H)のgenotypeに分類されています。世界地域によって分布が異なり、予後や治療反応性の違いの主たる原因となっています。日本全体ではgenotypeCが主体で(岡山では95%)、沖縄地方や東北の一部ではgenotypeBが比較的多いことが分っています。インターフェロンの有効性に関連があります。また従来日本にはほとんどなかったgenotypeA(とくに欧米型Ae)による急性肝炎が増加しつつあります。

図Ⅰ-(2)

(9)HBcrAg(HBVコア関連抗原)
HBVのコア抗原とHBe抗原を含むプレコア/コア遺伝子産物を測定するもので,HBVcccDNA量を反映すると言われています。核酸アナログ治療の方針(中止しても大丈夫かどうか)決定において有用です。

参考)

● 臨床検査データブック 2007-2008 高久 監修 黒川・春日・北村 編 医学書院
白鳥康史・小橋春彦「B型肝炎ウイルス遺伝子検査(HBV DNA)」。
●ルミパルスHBcrAg添付文書(富士レビオ株式会社)

(3) 診断の流れと経過観察  

図Ⅰ-(3)

HBs抗原陽性と判明したら病歴・家族歴の聴取,診察,腹部超音波を行い,血液肝機能と各種ウイルスマーカーを測定します。特にHBe抗原の陽性/陰性,血中HBV DNA量,ALT,血小板数などが重要です。
  ALTが異常値を示す場合は厳重に経過を観察し,異常値が持続し血中ウイルス陽性の場合には抗ウイルス療法の実施を検討します。ALTが正常値である場合は血液検査と腹部超音波により定期的に経過観察します。ただしALTが低値であっても肝硬変の場合には抗ウイルス療法の適応となる場合があります。
HBV感染者は肝発癌のリスクがあり、特に線維化の進行(肝硬変)と血中HBV DNA高値は高リスク状態です。肝細胞癌の早期発見には慢性肝炎では6か月毎、肝硬変では3か月毎の超音波(またはダイナミックCT、MRI)が必要です。腫瘍マーカー(AFP,PIVKA-II,L3分画)と組み合わせて実施します。なお無症候性キャリアからも発癌することがあるため,肝機能が正常であっても6(~12)か月毎の画像診断を要します。

(4) 治療 

最も重要なことは治療適応の有無を決定することです。若年者では自然経過で鎮静化する例が多い一方,短期間で急速に肝硬変に至る症例もあります。年令,HBe抗原・抗体,血中HBV DNA量,AST,ALT,血小板数,肝予備能,腹部画像診断などから進行度,活動性を評価します。通常,半年程度は経過観察したうえで,血液肝機能検査の異常値が持続または出没し,活動性の肝炎があり今後さらに進行すると思われる場合が治療の対象となります。治療適応の決定に際して肝生検を行い肝組織像を参考とすることがあります。

治療法は抗ウイルス療法と肝庇護療法に大別されます。治療の長期目標は肝内におけるHBV増殖を低下させ肝炎を鎮静化し、その結果肝硬変,肝細胞癌への移行を防止することです。指標となるのは第1にHBs抗原の陰性化,第2にHBe抗原の陰性化とHBe抗体の陽性化(セロコンバージョン),第3に血中HBV DNAの低下(4 Log Copies/mL未満),第4にALTの正常化です。

  抗ウイルス療法にはインターフェロン(IFN)と核酸アナログ製剤があります。それぞれ長所と短所がありウイルス側要因と宿主側要因を考慮して選択します。

図Ⅰ-(4)


平成23年よりペグインターフェロンα2a(ペガシス)(週1回皮下注射 48週間投与)がB型慢性肝炎でHBe抗原陽性・陰性の両方に対して保険適応となり,現在B型慢性肝炎インターフェロン療法の主力となっています。 ペグインターフェロンα2aの有効性はHBe抗原陽性例ではHBeセロコンバージョン2~3割,HBV DNA低下(5Log Copies/mL未満) 約3割,ALT正常化(≦40 IU/L)3~4割,HBe抗原陰性例ではHBV DNA低下(4Log Copies/mL未満) 約4割,ALT正常化(≦40 IU/L)6~7割と報告されています(Hayashi et al, JSH2011 O-53)。 有効率はまた不十分ですが,投与期間は限られており有効例では持続的な効果が得られることから若年者や病態が進行していない方に適しています。またペグインターフェロンα2aは核酸アナログよりもHBs抗原量の低下に有効と報告されています。
一方、核酸アナログ製剤-ラミブジン(ゼフィックス®),アデホビル(ヘプセラ®),エンテカビル(バラクルード®)、テノホビル(テノゼット®)-は経口投与が可能で副作用が少なく、血中HBV DNAの低下とALT正常化が高率に得られ,肝線維化の改善,肝予備能の改善や肝発癌抑制効果が得られます。肝硬変例,肝細胞癌治療後症例に対しても肝予備能改善効果を示します。なおテノホビルは胎児に対する安全性が高いとされています。その反面,核酸アナログ製剤は一旦投与を開始すると終了できる条件が明確ではなく長期間の投与を要することと,長期投与に伴い薬剤耐性変異ウイルスの出現による耐性化が起こることが重大な問題となります。エンテカビルおよびテノホビルは抗ウイルス効果が強く、耐性ウイルス出現率が低いことから、現在核酸アナログ未治療例に対する第一選択としてこの両剤が推奨されています。ラミブジン投与中に耐性ウイルスが出現した場合にはラミブジンとアデホビルの併用またはラミブジンとテノホビルの併用が推奨されています。ラミブジンとアデホビル両剤の耐性ウイルスやエンテカビル耐性ウイルスに対してラミブジンとテノホビル併用またはエンテカビルとテノホビルの併用が推奨されています。

 

(5) 治療ガイドライン

ウイルス性慢性肝炎(肝硬変を含む)の治療法選択の基準として厚生労働省研究班によるガイドライン(図5,6)、日本肝臓学会B型肝炎ガイドライン(図7)が発表されています。
厚生労働省ガイドライン(平成27年版)では年令,HBe抗原の陽性/陰性,HBV DNA量、HBVジェノタイプ、線維化の状態などに応じて抗ウイルス療法を選択することを推奨しています。35歳未満では自然経過でのHBeセロコンバージョンが期待できること,妊娠に対する安全性への懸念,核酸アナログ長期投与による耐性化の問題を考慮して,HBe抗原陽性例ではPeg-IFNα2a(48週間)またはIFN長期投与(24~48週間)を第一選択としています。しかし,血小板15万未満またはF2以上の線維化進行例など肝硬変への進行が懸念される症例ではエンテカビルまたはテノホビルが選択されます。一方35歳以上の方では自然経過におけるセロコンバージョン率が低くIFNの有効率も低いことから,エンテカビルまたはテノホビルを第一選択としており,条件によってはエンテカビルまたはテホボビル先行投与後のIFNまたはPeg-IFN投与が挙げられています。ただし35歳以上でもHBVジェノタイプAまたはBの症例ではIFNの感受性が高いためIFNまたはPeg-IFNが好ましいとされています。一方肝硬変では年令、HBe抗原の陽性・陰性にかかわらずエンテカビルまたはテノホビルを推奨しています。

図Ⅰ-(5)

図Ⅰ-(6)

日本肝臓学会ガイドライン(2015年第2.1版)では、基本方針として①慢性肝炎に対する初回治療ではHBe抗原、HBVジェノタイプにかかわらず原則としてPeg-IFNを第一に検討する、②慢性肝炎に対する再治療ではIFN・Peg-IFNによる再燃例ではPEG-IFNによる再治療を考慮、前回治療で効果がなかったIFN不応例では核酸アナログ治療を行う、核酸アナログを中止後に再燃した症例も核酸アナログによる再治療を考慮する ③肝硬変に対しては初回治療より核酸アナログの長期継続投与を行うことを推奨しています。

図Ⅰ-(7)

Ⅱ.C型肝炎

(1) 全体像 

●初めに
C型肝炎は急性肝炎から高率に慢性肝炎へ移行し、その後長期間にわたって緩徐に線維化が進行して肝硬変に至ります。肝硬変になると高率に肝細胞癌を合併し、C型肝炎関連死の最も大きな原因となります。C型肝炎治療の第一目標は抗ウイルス療法により血中のC型肝炎ウイルス(HCV)を持続的に陰性化させること(持続的ウイルス陰性化=SVR)です。第二目標は肝炎を鎮静化し,慢性肝炎から肝硬変への進行を防ぎ、ひいては発癌を抑制することです。そのためには抗ウイルス療法と肝庇護療法を適宜組み合わせて長期的にコントロールしていくことが必要です。

●急性肝炎から慢性肝炎への移行
わが国におけるHCV保有者数は約150万人と推定されます。HCVは血液・体液を介して感染し急性肝炎を発症します。C型急性肝炎の症状は軽いことが多く重症化、劇症化することはまれですが、高頻度に慢性肝炎に移行します。慢性化例の徴候として、自・他覚症状が軽い、ALT上昇の程度が低い、ALTが多峰性に推移する、発症12週後に血中HCV RNAが陽性である、などが挙げられています。C型急性肝炎に対するインターフェロン療法は治療効果が高いので、急性肝炎から慢性肝炎への移行が予想された場合は早期にインターフェロン療法を行なうことが重要です。

●慢性肝炎の臨床像
C型慢性肝炎は20~30年という長期間にわたり炎症が持続し、線維化が緩徐に進行して肝硬変に変化します。自然経過の中でHCVが排除されて治癒することはほとんどありません。なお、血中HCV RNA陽性で血液肝機能が正常である「無症候性キャリア」と呼ばれる時期でも、肝生検を行なうと多くの場合ごく軽度ではありますが炎症所見が見られます。慢性肝炎の時期には自覚症状を伴わないことが多く、罹患していることに長年気づかず、知らないうちに肝硬変に至っていることもまれではありません。

参考) 小橋春彦、高木章乃夫、白鳥康史:C型慢性肝炎の自然経過。最新医学別冊 新しい診断と治療のABC 27 ウイルス性肝炎 p177-183、最新医学社、東京、2005.

(2)組織像と血小板数

慢性肝炎の進行を評価する上で組織像の理解が必要となります。慢性肝炎では門脈域を中心にリンパ球をはじめとした炎症細胞浸潤と線維化、肝実質内の肝細胞の壊死炎症が認められます。肝炎の持続に伴い線維化が進行し肝硬変に至ります。新犬山分類(1996年) では線維化のステージをF0(線維化なし) 、F1(門脈域の線維性拡大)、 F2(線維性架橋形成)、  F3(小葉のひずみを伴う線維性架橋形成)、  F4(肝硬変)の5段階に分類しています(表)。線維化のステージを推測する目安として末梢血中の血小板数が有用です。すなわち、F0、F1、F2、F3、F4の血小板数は、それぞれ20万、18万、15万、13万、10万以下/μl 程度であり、簡便な目安となります。図Ⅱ-(1)

図Ⅱ-(1)

慢性肝炎の活動性が軽度の場合は線維化の進行は緩徐で、活動性が高度の場合線維化の進行は急速です。C型慢性肝炎は一般にB型慢性肝炎に比して活動性は軽度であり、それを反映してC型慢性肝炎はB型慢性肝炎に比して肝硬変への進行は緩徐です。しかしF1-2期に比してF3期は活動性が高くなり、線維化の進行速度が速くなる傾向があります。

参考) 小橋春彦、高木章乃夫、白鳥康史:C型慢性肝炎の自然経過。最新医学別冊 新しい診断と治療のABC 27 ウイルス性肝炎 p177-183、最新医学社、東京、2005.

(3) 診断の進め方

C型肝炎のスクリーニングとして,第一にHCV抗体を測定します。HCV抗体が陽性であれば血中HCV RNA量を測定(リアルタイムPCR法)で測定し,これが陽性であればHCV感染ありと診断されます。同時に血液肝機能検査(AST ALT など),血球検査,腹部超音波検査を行います。リアルタイムPCR法ではHCV RNAの有無とウイルス量の結果を同時に知ることができます。

図Ⅱ-(2)

C型肝炎ウイルスにはいくつかに細分化され,わが国では7割の方はセログループ1型(ジェノタイプ1b),3割の方がセロタイプ2(ジェノタイプ2a,2b)です。セログループ(ジェノタイプ)は抗ウイルス療法の選択に際して重要な指標となります。そのほかにインターフェロンを行う際に治療効果予測となる検査法としてNS5A領域ISDR変異や,保険適応にはなっていませんがHCVコア70変異,91変異,IL28B遺伝子多型(SNPs)があります。

(4) C型肝炎から肝硬変への進行と肝発癌 

図Ⅱ-(3)

C型慢性肝炎から肝硬変にかけての線維化の進行速度に関する報告によると,線維化ステージの進行速度は1年間で0.1程度と推測されています。約10年で線維化ステージが1段階進行することになります。ALT正常者では進行速度は1/2になります。また進行速度に関与する因子として感染時の年令(40歳以上)、飲酒(50g/日以上)、男性の3つを挙げられ,20歳以下で感染した場合30-40年かけて肝硬変へと進展するが40歳以上の年令で感染した場合、感染後10年くらいで急速に肝硬変へ進行することがあると報告されています。これらを総合的に見ると、C型慢性肝炎において線維化は平均して約10年毎にF1→2→3→4と1段階ずつ進行し、20-30年で肝硬変に移行します。注意すべき点は、線維化の進行速度(傾き)は直線的ではなく年令が進むに従って加速することであり、50代に入ると進行速度が速くなり50歳代後半から60歳台にかけて肝硬変になりやすいと考えられます。

●肝細胞癌の発生
HCVに初感染してから肝細胞癌が発生するまでの期間は約30年とする報告が多く見られます。発癌に関連する因子として線維化の進行、年齢、飲酒、男性,ALT高値が挙げられています。中でも線維化ステージの進行はもっとも重要です。 Yoshidaらは2890例のC型慢性肝炎患者を平均4.3年経過観察し、ステージ別に見た発癌率(/人/年)を、F0-F1で0.5%、 F2で2.0%、F3で5.3%、F4で7.9%と報告しています。また、発癌を抑制する因子としてインターフェロン治療を挙げています。またALT値の平均値が持続的に80 IU/lを越えている症例は、80未満であった症例に比して肝細胞癌発生が有意に高率であったとの報告が見られます。
参考)小橋春彦、高木章乃夫、白鳥康史:C型慢性肝炎の自然経過。最新医学別冊 新しい診断と治療のABC 27 ウイルス性肝炎 p177-183、最新医学社2005.

(5) C型肝炎の治療~インターフェロンフリー療法(経口抗ウイルス薬)が主流に~

1)抗ウイルス剤

型慢性肝炎治療の目標は血中HCV RNAの低下~消失、ALTの正常化と、その結果として肝硬変への進行および肝細胞癌発生の抑制です。治療法は抗ウイルス療法と肝庇護療法に大別されます。抗ウイルス療法(原因療法)にはインターフェロンと直接作用型抗ウイルス薬(DAA)が、肝庇護療法(対症療法)にはグリチルリチン(強力ネオミノファーゲンC)、ウルソデオキシコール酸、瀉血・除鉄療法があります。近年、新しい抗ウイルス療法が次々と実用化されてきました。特に経口直接作用型抗ウイルス薬(DAA)の登場によりC型肝炎の9割以上が治癒する時代になってきました。2015年からはインターフェロン(注射)を使わない、内服薬であるDAAの組み合わせによる「DAA併用療法」=「インターフェロンフリー療法」が主流となっています。DAA併用療法は治療効果が高いだけでなく副作用も比較的少ないので、高齢患者さんや代償性肝硬変の方も治療することができます。

① 直接作用型抗肝炎ウイルス薬 (DAA: direct-acting antivirals )

ウイルスが作るたんぱく質の働きを阻害したり、ウイルスの複製を阻害することによりC型肝炎ウイルスの増殖を直接的に阻害する薬です。大きく分けて3つの種類があります。さらにそれらを組み合わせた合剤が市販されています

#1 NS3プロテアーゼ阻害薬

NS3/4Aプロテアーゼ(ウイルスが作るタンパクを切断する働き)を阻害する薬。

  • テラプレビル(テラビック®) (貧血、皮膚障害が起こりやすい)
  • シメプレビル(ソブリアード®)
  • バニプレビル(バニヘップ®)
  • アスナプレビル(スンベプラ®)
  • パリタプレビル(オムビタスビルとの合剤であるヴィキラックス®として市販)

#2 NS5A阻害薬

NS5Aタンパク(ウイルス粒子形成に必要)を阻害する薬。

  • ダクラタスビル(ダクルインザ®)
  • レジパスビル (ソホスブビルとの合剤であるハーボニー®として市販)
  • オムビタスビル(パリタプレビルとの合剤であるヴィキラックス®として市販)

#3 NS5B阻害薬

RNAポリメラーゼ(ウイルスRNAを複製する酵素)を阻害する薬。

  • ソホスブビル (ソバルディ®)
  • ソホスブビル+レジパスビルの合剤(ハーボニー®)

なお、●リバビリン (レベトール®、コペガス®)はインターフェロンあるいはDAAと併用され抗ウイルス効果を高める薬剤です。副作用として貧血があります。

② インターフェロン

インターフェロンにPEG(ポリエチレングリコール)を結合し長時間作用するようにしたペグインターフェロンPeg-IFN(2a型ペガシス® と2b型ペグイントロン®)が主に使用されます。

2)実際の治療

多くの種類の薬があり複雑に見えますが、実際に使用する組み合わせは数種類に限られ、それほど難しくありません。ウイルス側因子と宿主側因子を考慮して最適な治療法を選択します。

ウイルス側因子

HCVジェノタイプ(遺伝子型)(セロタイプ)1型(1b型)2型(2a、2b型)
血中ウイルス量
HCV遺伝子変異(Core領域アミノ酸70・91、NS5A領域ISDR変異)
薬剤耐性関連変異(主なもの)・・・
NS3領域  D168変異:プロテアーゼ阻害
NS5A領域 L31 Y93 変異:NS5A阻害薬が効きにくい  
NS5B領域 S282変異:ポリメラーゼ阻害剤が効きにくい
宿主(人間)側因子
年令、性別、肝線維化の進行度、背景疾患(心疾患、腎疾患、高血圧など)の有無

①ジェノタイプ1型
#1 ソホスブビル/レジパスビル(ハーボニー配合錠®)

特徴:ソホスブビル(NS5B阻害剤)400mgとレジパスビル(NS5A阻害剤)の合剤
有効率が高い。腎障害や心疾患を有する方には禁忌あるいは要注意。
効能・効果:セログループ1(ジェノタイプ1)C型慢性肝炎又は代償性肝硬変
用法・用量:1日1回1錠 12週間経口投与
有効率(SVR12)(国内第Ⅲ相試験)
治療終了から12週間後の血中ウイルス(-)であればSVR12(著効)と判定
ソホスブビル+レジパスビル群(171例) 100%
ソホスブビル+レジパスビル+リバビリン群(170例)98%
副反応:弥咽頭炎、頭痛 倦怠感
禁忌:重症腎障害(eGFR<30)または透析を要する腎不全の人
併用禁忌薬:アミオダロン、カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、
セイヨウオトギリソウ(sento/ジョーンズ・ワート)含有食品
#2 オムビタスビル+パリタプレビル/リトナビル (ヴィキラックス配合錠® )
特徴:オムビタスビル(NS5A阻害剤)25mg+パリタプレビル(NS3阻害剤150m)およびリトナビル100mgの合剤。
有効率が高い。
カルシウム拮抗剤をはじめ併用禁忌薬や併用注意薬が多い点に注意が必要
開始前に耐性ウイルスがいないことを確認する必要あり。
効能・効果:セログループ1(ジェノタイプ1)C型慢性肝炎又は代償性肝硬変
用法・用量:1日1回2錠 食後 12週間経口投与
有効率(SVR12)(国内第Ⅲ相試験)94.6% (肝硬変では90.5%) 
禁忌:中等度以上(Child-Pugh分類B又はC)の肝機能障害
併用禁忌薬:アゼルニジピン,トリアゾラム,ミダゾラム,ブロナンセリン,ピモジド,エルゴタミン酒石酸塩,ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩,エルゴメトリンマレイン酸塩,メチルエルゴメトリンマレイン酸塩,シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ),タダラフィル(アドシルカ),リバーロキサバン,バルデナフィル塩酸塩水和物,リオシグアト,シンバスタチン,アトルバスタチンカルシウム水和物,カルバマゼピン,フェニトイン,フェノバルビタール,リファンピシン,エファビレンツ,セイヨウオトギリソウ(St. John’s Wort,セント・ジョーンズ・ワート)含有食品,エチニルエストラジオール含有製剤
併用注意薬:カルシウム拮抗剤(アゼルニジピン除く)、フロセミド、シルデナフィルクエン酸塩、タダラフィル、エレトリプタン臭化水素酸塩、ロスバスタチンカルシウム、プラバスタチンナトリウム、アミオダロン塩酸塩、ベプリジル塩酸塩水和物、キニジン硫酸塩水和物、プロパフェノン塩酸塩、クエチアピンフマル酸塩、ジアゼパム、クロラゼプ酸二カリウム、オメプラゾール、アルプラゾラムなど。

#3 ダクラタスビル(ダクルインザ)・アスナプレビル(スンベプラ)併用療法
NS3プロテアーゼ阻害薬 アスナプレビル(スンベプラ)1回1錠1日2回 24週間
+NS5A阻害剤 ダクラタスビル(ダクルインザ)1回1錠 1日1回 24週間
インターフェロン注射はなく、内服薬のみ。
2014年9月発売。当初の適応は IFN不適、不耐、過去のIFN無効例(一度もウイルスが陰性化しなかった)のみだったが、2015年春には初回治療例にも使用可能となる見込み。
SVR率 IFN不適・不耐例87.4%、前治療無効80.5%、全体 84.7%
副作用:治療中、肝機能(AST、ALT)、ビリルビンが上昇する例がある。
★注意:NS5A領域L31、Y93に変異を有する場合があり、その場合のSVR率は4割と低い。ASV+DCV併用療法で失敗すると高度耐性ウイルスが出現し、今後の治療に影響する恐れがある。従って、あらかじめNS5A耐性を検査し、耐性変異ウイルスがないことを確認できた症例を治療の対象とすることが勧められている。

#4 ペグインターフェロン+リバビリン+プロテアーゼ阻害薬「3剤併用療法」
Peg-IFN(皮下注)週1回×24週間 =ペグイントロン、ペガシス®
リバビリン(600~1000mg/日 分2)24週間 = レベトール、コペガス®
プロテアーゼ阻害剤 12週間 
シメプレビル(ソブリアード®)1回1錠、1日1回
バニプレビル(バニヘップ®)1回1錠、1日1回(過去の治療で無効例は24週間)テラプレビル(テラビック®)1回3錠、1日3回
●治療成績(SVR率)
初回治療 前治療再燃 前治療無効
PEG-IFN+リバビリン+テラプレビル  73%   88%     34%
PEG-IFN+リバビリン+シメプレビル  90%    90%    50%
PEG-IFN+リバビリン+バニプレビル  84%    92%    77%

●副作用
〇インターフェロンの副作用
インフルエンザ様症状(発熱・関節痛) 食欲不振 倦怠感  脱毛
血小板、白血球数減少
うつ病(1/100)、間質性肺炎(1/1000)、自己免疫疾患の増悪、網膜症、
〇リバビリン:貧血
〇シメプレビル:副作用は少ないが、脳出血の報告がある
〇バニプレビル:嘔気、嘔吐
〇テラプレビル:高度貧血、腎機能障害、皮膚症状(重篤な皮膚障害の報告もある)

② ジェノタイプ2型
#1 ソホスブビル(ソバルディ®)+リバビリン
 特徴:ソホスブビル(NS5B阻害剤)400mg
    有効率が高い。腎障害や心疾患を有する方には禁忌あるいは要注意。
 効能・効果:セログループ2(ジェノタイプ1)C型慢性肝炎又は代償性肝硬変
用法・用量:1日1回1錠 12週間経口投与
      リバビリン600~1000mg/日(体重によって異なる)と併用
有効率(SVR12)(国内第Ⅲ相試験)
未治療 83例 97.6%
  既治療 57例 94.7%
  合計  140例 96.4%
副反応:貧血、頭痛、倦怠感など
禁忌:重症腎障害(eGFR<30)または透析を要する腎不全の人
併用禁忌薬:カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(セント・/ジョーンズ・ワー含有食品
 
#2 インターフェロン療法
高ウイルス量:ペグイントロン®+レベトール®の24週間投与,
低ウイルス量:ペガシス®単独24~48週間または従来型IFN(IFNα2a,IFNα2b,IFN-β)の(8~)24週間投与 SVR率は70~80%

肝庇護療法
抗ウイルス療法の適応とならない方の場合、ALTを低下させ肝硬変や肝癌への進行を予防することを目的とした肝庇護療法を行います。肝庇護療法には内服薬ウルソデオキシコール酸(ウルソ®など)1日600(~900)mgの内服、グリチルリチン製剤の注射(強力ネオミノファーゲンC®など)があります。またC型肝炎では肝臓内に鉄が沈着しやすく、肝障害を助長することが知られています。肝臓内に鉄が沈着していると考えられる場合は瀉血療法と鉄分の多い食物制限する食事療法を行います。

3)治療ガイドライン

治療法選択のための指標として,厚生労働省研究班による「肝硬変を含めたウイルス性肝疾患治療の標準化に関するガイドライン」と日本肝臓学会によるC型肝炎治療ガイドラインがあります。

①厚生労働科研研究班 平成27年C型慢性肝炎・肝硬変治療のガイドライン 平成27年5月改訂版(抜粋)

基本方針:
・C型慢性肝炎・肝硬変では肝機能の持続異常や線維化の進展、また高齢化に伴い肝細胞癌の発生頻度が上昇することから、ウイルス排除が可能な症例はできる限り早期に抗ウイルス療法を開始すべきである。
・C型肝炎の治療では有効性・安全性を考慮し、Genotype1,2共にIFN freeの経口抗ウイルス剤併用療法を第一選択とする。
・(中略)
・新たな治療薬の開発・治験が進んでおり、治療法の進歩を注視する必要がある。
(以下略)

②C型肝炎治療ガイドライン(第4.1版)2015年12月(日本肝臓学会 肝炎診療ガイドライン作成委員会 編) (抜粋)

1.慢性肝炎/ゲノタイプ1型(DAA 治療歴なし)

※1 高齢者、線維化進展例などの高発癌リスク群は早期に抗ウイルス療法を行う.
※2 RBV併用をしないPeg-IFN(IFN)単独の既治療例は初回治療に含む.
※3 重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)又は透析を必要とする腎不全の患者に対するSOFの投与は禁忌である.
※4 Genotype1aに対するOBV/PTV/rの有効性は確立していない.原則としてカルシウム拮抗薬の併用は推奨されない.CYP3A、P-gp、BCRP、OATP1B1/1B3を基質とする薬剤との併用にあたっては用量調節を考慮する(資料3参照).OBV/PTV/r治療前には、極力Y93変異を測定し、変異がないことを確認する.OBV/PTV/r治療が非著効となった場合に惹起される多剤耐性ウイルスに対しては、現時点で確立された有効な治療法はないことを考慮に入れる.
※5 Genotype1b はDCV/ASVも選択肢となる.ただし、DCV/ASV治療前には、極力Y93/L31変異を測定し、変異がないことを確認する.また、DCV/ASV治療が非著効となった場合に惹起される多剤耐性ウイルスに対しては、現時点で確立された有効な治療法はないことを考慮に入れる.
※6治療法の選択においては、IFN-based therapyには発癌抑制のエビデンスがあることを考慮する.
※7 IFN未治療の低ウイルス量例は適応外である.
※8 Peg-IFN(IFN)単独療法ならびにRBV併用療法の再燃例.

図Ⅱ-(4)

2.慢性肝炎/ゲノタイプ1型・2型(プロテアーゼ阻害剤/Peg-IFN/RBV前治療の非著効例)

※1 重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)又は透析を必要とする腎不全の患者に対するSOFの投与は禁忌である.
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※2 前治療により誘導されたD168変異をもつ症例ではDCV/ASV療法の著効率が低いことが想定され、またVANあるいはSMV/Peg-IFN/RBV併用治療に対するD168変異の影響についてのエビデンスがないため、原則として推奨されない.
※3 再治療の効果についてのエビデンスがないため、推奨されない。ただし、テラプレビル併用療法の副作用のため薬剤投与量が不十分であった症例では選択肢となる.

3.慢性肝炎/ゲノタイプ1型(DCV/ASV前治療の非著効例)※1

※1 DCV/ASV治療の非著効例で、既にY93/L31変異が惹起されている症例への対応には、難易度が高い総合的な判断を要するため、このような症例の適応判断ならびに治療方針は、ウイルス性肝疾患の治療に十分な知識・経験を持つ医師によって検討される必要がある。
※2 IFN投与が可能である場合には、薬剤耐性変異の存在が問題とならないIFN-based therapyを行なう。
※3 SMVまたはVAN/Peg-IFN/RBV治療を行う場合には、D168変異を測定し、D168変異がないことを確認する。
※4 IFNが使用できない場合には、さらなる複雑な薬剤耐性変異の出現を防ぐため、詳細な薬剤耐性を精査しその結果を踏まえた上で適切な治療を選択する。
※5 DCV/ASV治療と同部位に変異が惹起される可能性があるOBV/PTV/r治療は推奨されない.
※6 SOF/LDV治療を選択する場合には、Y93/L31変異を含めた耐性変異を詳細に測定し、少なくともL31・Y93多重変異がないことを確認する。DCV/ASV治療により誘導されたL31・Y93多重変異をもつ症例ではSOF/LDV治療の有効性は確認されておらず、再治療の効果についてのエビデンスがない。このような症例の適応判断ならびに治療方針は、発癌リスクならびに変異例に対してSOF/LDV治療を行う場合の著効率とさらなる複雑な多剤耐性獲得のリスクを十分に勘案して方針を決定する。

図Ⅱ-(5)

4.慢性肝炎/ゲノタイプ2型※1 ※2 ※3 ※4

※1 治療法の選択においては、IFN-based therapyには発癌抑制のエビデンスがあることを考慮する.
※2 高齢者、線維化進展例などの高発癌リスク群は早期に抗ウイルス療法を行う.
※3 RBV併用をしないPeg-IFN(IFN)単独の既治療例は初回治療に含む.
※4 1型と2型の混合感染の治療は、1型に準じてSOF/LDVで治療する
※5 重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)又は透析を必要とする腎不全の患者に対するSOFの投与は禁忌である.
※6 IFN未治療・高ウイルス量の保険適応は、Peg-IFNα-2b/RBVのみである.
※7 Peg-IFN(IFN)単独療法ならびにRBV併用療法の再燃例.

5.代償性肝硬変(初回治療・再治療)

※1 Peg-IFN/RBV併用も選択肢となる.
※2 重度の腎機能障害(eGFR<30mL/分/1.73m2)又は透析を必要とする腎不全の患者に対するSOFの投与は禁忌である
※3 Genotype1aに対するOBV/PTV/r の有効性は確立していない。Child-Pugh分類grade Bに対する投与は禁忌である。原則としてカルシウム拮抗薬の併用は推奨されない.CYP3A、P-gp、BCRP、OATP1B1/1B3を基質とする薬剤との併用にあたっては用量調節を考慮する(資料3参照).
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OBV/PTV/r治療前には、極力Y93変異を測定し、変異がないことを確認する.OBV/PTV/r治療が非著効となった場合に惹起される多剤耐性ウイルスに対しては、現時点で確立された有効な治療法はないことを考慮に入れる.
※4 Genotype1b はDCV/ASVも選択肢となる.ただし、DCV/ASV治療前には、極力Y93/L31変異を測定し、変異がないことを確認する.ま た、DCV/ASV治療が非著効となった場合に惹起される多剤耐性ウイルスに対しては、現時点で確立された有効な治療法はないことを考慮に入れる.

図Ⅱ-(7)

Ⅲ.肝細胞癌 

(1) わが国における実態 

現在わが国における死因の第一位は悪性新生物によるものです。2009年にがんで死亡した人は344.105例で,そのうち肝癌による死亡は32725人と,第3位(男性で第3位,女性で第6位)を占めています。(人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部。国立がん研究センターがん対策情報センターHP http://ganjoho.ncc.go.jp/public/index.html より引用)

第18回全国原発性肝癌追跡調査報告書2004-2005(肝臓51 巻8 号460―484,2010)によると,原発性肝癌のうち94%が肝細胞癌であり,そのうち82.3%が慢性肝炎の,71.9%が肝硬変の既往(疑いを含む)があると報告されています。また肝細胞癌症例の67.7%がHCV抗体陽性,15.0%がHBs抗原陽性であり,それぞれC型肝炎,B型肝炎ウイルス感染症を背景としていると考えられます。 肝細胞癌の原因としてB型およびC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎と肝硬変が重要であることを示してます。 ただし第17回調査に比してHBs 抗原,HCV 抗体陽性率は減少しており,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などを背景とする肝細胞癌が増加しているのではないかと推測されています。また平均の診断時年齢は男性66.4歳,女性69.9歳と,高齢化の傾向が見られます。
C型肝炎では慢性肝炎から肝硬変へと線維化が進行するにつれて年間発癌率が上昇します。Yoshidaらは2890例のC型慢性肝炎患者を平均4.3年経過観察し、ステージ別に見た発癌率(/人/年)を、F0-F1で0.5%、 F2で2.0%、F3で5.3%、F4で7.9%と報告しています(Yoshida H, et al. Ann Intern Med 131:174-81,1999)。また高齢者になるに従って発癌リスクが高くなります。一方インターフェロン著効により発癌リスクは軽減します。

 B型肝炎では 慢性肝炎,代償性肝硬変,非代償性肝硬変からの年間発癌率はそれぞれ<1%,2-3%,7-8%と報告されています。B型肝炎からの発癌リスクとして血中HBVDNA量高値,肝硬変,高齢,男性などが関与することが知られています。一方,肝機能が正常なB型肝炎ウイルス無症候性キャリアからも少数ではあるが肝細胞癌の発生が見られ,注意が必要です。

(2) スクリーニングと診断 

①スクリーニング(肝細胞癌サーベイランス)
肝細胞癌の発生に関して,B型・C型慢性肝炎,非ウイルス性肝硬変は高危険群,B型およびC型肝硬変は超高危険群であることが知られています。肝細胞癌を早期に発見するためにはこれらの症例を対象とした計画的なスクリーニングを行うことが必要です。 近年の画像診断の発達により肝癌をより早期に発見することが可能となってきました。高危険群では6か月毎,超高危険群では3-4か月毎にスクリーニングとして超音波検査と腫瘍マーカー(AFP/PIVKA-Ⅱ)を行うことが推奨されています。また超高危険群,腫瘍マーカーの上昇が続く症例,肝萎縮や進んだ肝硬変で超音波での腫瘍描出が困難な症例などではダイナミックCTあるいはダイナミックMRIの実施を年1-2度程度組み合わせます。

②画像診断の進め方
超音波検査で結節性病変が指摘された場合,ダイナミックCTあるいはEOB造影MRI を行います。典型的な肝細胞癌像は動脈相で高吸収域,門脈相と平衡相で相対的に低吸収域に描出される結節です。EOB MRIでは20分後に撮影する肝細胞相で高感度に肝細胞癌が検出され,早期肝細胞癌の発見に有力な方法です。また超音波造影剤ソナゾイドを用いた造影超音波でも後期像(クッパー細胞相)で高感度に肝細胞癌を検出することができます。

③腫瘍マーカー
肝細胞癌の腫瘍マーカーとしてAFP,PIVKA-Ⅱ,AFP-L3分画があります。1-2か月毎に腫瘍マーカーを測定すべきとの意見もあります。 また2種類以上の腫瘍マーカーを組み合わせることにより感度の上昇が得られます。AFPの持続的な上昇あるいは200ng/mL以上の上昇,PIVKA-IIの40mAU/mL以上の上昇,AFP-L3分画の15%以上の上昇は肝細胞癌の存在を示唆します。しかし,腫瘍マーカーの感度は画像診断よりも低いため,腫瘍マーカー単独でのスクリーニングでは不十分で,超音波などの画像診断と併用して用いることが重要です。

④核酸アナログ投与中のB型慢性肝炎・肝硬変におけるAFP
AFPは特異度が低く偽陽性率が高く,肝癌がなくても陽性になることが多いことが知られています。しかし核酸アナログを投与しているB型慢性肝炎・肝硬変症例のほとんどでAFPは10ng/mL以下に低下しており,偽陽性率は著明に低下し特異度が上昇します。自験例の検討ではカットオフ値10ng/mLでの特異度は97.3%でした。(Kobashi H, et al. Hepatology Research 2011;41(5):405-16.)したがって核酸アナログを投与中の症例でAFPが10ng/mLを超えて上昇を続けた場合には肝細胞癌が潜在する可能性が高く,画像診断などで精査を進めることで早期発見につながると考えられます。

(3) 治療方針

●肝細胞癌の多くは肝硬変などを背景に発生するため,肝細胞癌の症例は しばしば肝予備能低下を伴います。また肝細胞癌は同時性または異時性に多発しやすいことが知られています。これらの特徴を踏まえて,各症例の腫瘍因子と肝予備能を評価した上で治療方針を選択することが重要です。
●肝細胞癌の治療法として以下のものが挙げられます。
(1)肝切除術
(2)局所療法
1)ラジオ波焼灼療法(RFA;radiofrequency ablation)経皮的・腹腔鏡下
2) 経皮的マイクロ波凝固療法(PMCT;percutaneous microwave coagulation therapy)
3) 経皮的エタノール注入療法
(3) 肝動脈化学塞栓療法(TACE)
(4) 肝動注化学療法(HAIC)
(5) 分子標的薬  (ソラフェニブ Sorafenib (ネクサバール))
(6) 肝移植
(7) 放射線療法: 外部照射(門脈腫瘍栓などに対する),粒子線療法(限られた施設で実施)
肝細胞癌の腫瘍側因子(大きさ,個数,形態,存在部位,Stage,脈管侵襲の有無)と宿主側因子(肝予備能)を総合的に評価したうえで最適の治療法を選択します。治療法の選択に際して,肝細胞癌治療のアルゴリズム(科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン),JSHコンセンサスに基づく肝細胞癌の治療アルゴリズムが参考になります。
① 科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン図Ⅲ-(1)
② JSHコンセンサスに基づく肝細胞癌の治療アルゴリズム
図Ⅲ-(2)

図Ⅲ-(1)

図Ⅲ-(2)

(4) 治療の実際 

主たる内科的な肝細胞癌の治療について説明します。

①経皮的ラジオ波焼灼療法(RFA)図Ⅲ-(3)
超音波で腫瘍を描出し,局所麻酔を行ったうえで経皮的にラジオ波針を腫瘍に穿刺し,通電して熱凝固します。原則として腫瘍径3cm以下,個数3個以内,肝予備能Child-Pugh分類AまたはB,出血傾向や腹水がない場合が適応となりますが,個々の症例の条件によって適応を拡大する場合もあります。発生部位によっては人工胸水・人工腹水など作成して,より安全確実に治療できるようにします。

図Ⅲ-(3)

②肝動脈化学塞栓療法 (TACE)図Ⅲ-(4)(5)
局所麻酔下に大腿動脈を穿刺して腹部大動脈から腹腔動脈,上腸間膜動脈,肝動脈などへカテーテルを挿入し,血管造影を行います。CTを併用することもあります(Angio CT)。肝細胞癌への栄養血管を確認し,マイクロカテーテルを選択的に挿入し,リピオドール(油性造影剤)加抗腫瘍剤,続いてゼラチンスポンジ細片を栄養血管に注入して塞栓を行います。肝細胞癌が多血性で,サイズが大きい場合や多発病変の場合が主な適応になります。繰り返して施行することが可能です。

図Ⅲ-(4)

図Ⅲ-(5)

③肝動注化学療法
肝動脈カテーテルから抗腫瘍薬を注入する治療法です。カテーテル近位部につないだ穿刺器具(リザーバーまたはポートと呼びます)を皮下に留置して,薬剤を反復的・持続的に注入することもあります。肝予備能Child-Pugh分類AまたはBで,TACE不応例や,門脈腫瘍栓合併などでTACE不適応例などが適応となります。

④ 分子標的治療薬
内服薬ネクサバールによる治療法です。Child-Pugh分類Aで進行例,TACE不応例などが適応となります。