消化器外科のご紹介

外科

医師のご紹介  外来診察表

対象疾患

  • 消化器がん(食道、胃、大腸、肝臓、胆道、膵臓など)
  • 胆石症、ヘルニア、痔など良性疾患
  • 腹部救急疾患(虫垂炎、胆嚢炎、腸閉塞、消化管穿孔など)

特徴

1)当院は臨床研修教育病院であり、以下の認定施設となっています。消化器外科はスタッフ5人、後期研修医2~3人、初期研修医2~3人で診療を行っています。

  • 日本外科学会認定医・専門医制度修練施設
  • 日本消化器外科学会専門医修練施設
  • 日本大腸肛門病学会認定施設

2)大腸、胃、肝胆膵の各領域に経験豊富な専門医・指導医がいて完全に分担して手術・術前術後管理を行っていますので、高度な医療が提供できます。

3)特に大腸がん、早期胃がん、肝がんには積極的に腹腔鏡下手術を行い術後成績は良好です。各領域のページをご覧ください。

4)胆石症、胆嚢炎、虫垂炎、鼡径ヘルニア等、良性疾患の手術症例数も多く、腹腔鏡手術の割合が高いのが特徴です。

5)当院には救命救急センターがあり、毎日二人以上の拘束医師を置いて腹部救急疾患に24時間、365日対応しています。重症疾患でも高い救命率を誇っています。

6)症例数の多い疾患にはクリニカルパスを使用し標準治療を行っています。病棟業務の効率向上や在院日数短縮が可能となりました。

研修医募集

消化器外科では後期研修医を募集しています。
見学、研修などのご要望にも積極的に応じておりますので、ご遠慮なくご連絡ください。

担当:劔持雅一
E-mail:
TEL:086-222-8811
FAX:086-222-8841

診療内容

疾患別手術症例数 (2013年)

臓器・疾患名合計鏡視下
手術
麻酔の内訳
全麻腰麻局麻
消化器大腸1478514520
胆道13711713700
虫垂1157211500
胃・十二指腸82328200
肝臓31143100
小腸2072000
イレウス1961900
肛門181882
膵臓1711700
食道1231200
脾臓40400
腹部ヘルニア15350125253
腹膜・腹壁1211011
その他CVポート2300023
リンパ節41202
総計7943907273631

主な疾患と手術術式および入院期間(2013年)

疾患手術術式パスの入院設定期間(日)実際の入院期間(中央値、日)
急性虫垂炎虫垂切除術54
鼠径ヘルニア根治術(すべての術式)55
胆石症腹腔鏡下胆嚢摘出術66
肝がん腹腔鏡下肝切除1010
開腹肝切除1314
胃がん胃切除術、胃全摘術、腹腔鏡下幽門側胃切除術1616
結腸がん結腸切除術(開腹、腹腔鏡下)1814
直腸がん腹腔鏡下直腸切除1818

消化器がんの手術成績 (2013年)

2013年の代表的ながん(原発性)の年間手術症例数と手術死亡数を示しました。
がんの治療法や5年生存率などは各領域別のページに記載しています。

がんの部位手術症例数手術死亡数在院死亡数
大腸10701
(結腸)7101
(直腸)3600
6000
肝・胆・膵4700
  • 手術死亡数は、入退院の区別なく、術後30日以内に死亡した患者数
  • 在院死亡数は、手術後、退院せずに死亡した患者数(手術死亡数を除く)

疾患目次

胃がん

胃がんの進展形式

胃がんは日本人に最も多いがんで、胃の粘膜から発生し、次第に胃の壁を深く浸潤していきます。
その過程で
(1)リンパ管からリンパ節に転移
(2)胃壁の外側に露出した場合、がん細胞が腹腔内(おなかの中に)こぼれ落ち、腸やダグラス窩(腹腔内の一番低い部分)に腹膜転移
(3)血管から血行性に肝臓など離れた部位に転移していきます

病期分類

胃がんの病期分類(進行度)は、胃壁への浸潤の深さ(深達度)、リンパ節転移、他の臓器への転移により決定されます。その病期分類(進行度)によって、治療方法が決められてきます。
早期胃がんは粘膜、粘膜下層までの浅い層にがんの浸潤が留まっており、治療により治癒する可能性が高い胃がんです。

治療方法

切除可能な胃がんには、手術を施行します。当院での手術は年間約100例施行しています。手術療法のコンセプトは胃病変の完全切除とリンパ節を廓清する(取り除く)ことです。胃がんガイドラインでは、胃がんの定型手術は胃の2/3以上切除と2群リンパ節(病変からやや離れたリンパ節)までのリンパ節廓清とされています。従って発生部位により胃幽門側切除術、胃全摘術が選択されます。またリンパ節へ転移する可能性が低い早期胃がんには胃の機能、神経などをできるだけ温存する縮小手術や傷の小さな腹腔鏡手術を施行します。

手術方法

内視鏡的胃粘膜切除(EMR)

早期胃がんのなかでも、リンパ節転移がまず考えられない粘膜内にとどまる小さな胃がんに対して施行します。内視鏡下で、病巣粘膜の下に生理食塩水などを注入して病変の粘膜を浮き上がらせ、輪状の針金あるいは内視鏡で扱える細いナイフのようなものを用いて粘膜を切除する方法です。 胃は温存されますが、切除後の病理結果で粘膜下まで浸潤がある場合は、通常の胃切除術を追加することがあります。

局所切除術

EMRが困難な場所にあったり、EMRの適応外であってもリンパ節転移がまず考えられない早期胃がんに対して施行します。術前に胃カメラで病変の周りにクリップでマーキングし、クリップを含めてやや大きめに局所切除します。念のため色素法でセンチネルリンパ節を同定し、その周囲のリンパ節を含めて廓清します。胃の大きな切除になりませんので、術後の食事摂取上の問題も少なくてすみます。

幽門輪温存胃切除術

リンパ節転移の可能性が少ない胃の中部にある早期胃がんでは、幽門輪(胃の出口)を残す胃切除の方法があります。幽門は胃の内容を少しずつ十二指腸に送り出す役割りをしていますが、通常の幽門側胃切除術では幽門は切除されるため、ときにより胃内の食物が急に十二指腸・空腸に流れるために起こるダンピング症状が起こることがあります。幽門が温存されるとダンピング症状がほとんどなく、胆汁が胃内に逆流するのを防止できます。ただし、逆に胃からの排出が悪いための当初は腹部膨満感などの症状が出ることもあります。しかし2-3ヶ月すると食事量が少しづつ増えてきます。

噴門側胃切除術

胃の口側(噴門側)に近い早期胃がんに対しては、噴門側の胃を1/3~1/2切除する噴門側胃切除術を施行します。残胃が小さい場合には小腸パウチ(嚢)を作成して、食道への逆流症状を予防しています。

幽門側胃切除術

胃の肛門側(幽門側)に近い、中~下部の胃がんに対して、幽門側胃切除術を施行します。胃がんガイドラインでは、定型手術は2/3以上の幽門側胃切除術と2群リンパ節(病変からやや離れたリンパ節)までのリンパ節廓清とされています。リンパ節転移の可能性の少ない早期胃がんにはリンパ節廓清を縮小したり、神経温存や大網温存を行っています。

胃全摘術

胃の病変が上部まで拡がっている胃がんに対し、胃全摘術とリンパ節廓清を施行します。胃に接して脾臓があり、リンパ節廓清のため脾臓も切除することがあります。また膵周囲への浸潤が認められるものには膵臓を合併切除したり、拡大廓清を行います。

腹腔鏡による胃切除術

当院では胆嚢、大腸、虫垂などに年間180例以上の腹腔鏡手術を施行しているという経験があり、胃切除術もリンパ節転移の可能性の少ない早期胃がんに対して年間20~30例施行しています。
腹腔鏡というカメラを腹腔内に挿入し、5~10mmの鉗子を使って手術を行い、最後に5~7cmの小切開創から再建を行います。開腹手術に比べると手術時間が長いという欠点がありますが術後の回復が早く、痛みが少ないという長所があります。

入院期間

検査は基本的に外来で施行し、一般的には手術の2日前に入院。術後は合併症がなければ、幽門側切除で約2週間、胃全摘で2~3週間の入院となります。

化学療法

胃がんに対する抗がん剤治療は新しい効果のある抗がん剤がでてきており。再発胃がんに対しては、全身状態が許せば積極的に使用しています。最近は長期生存例もでてきています。

大腸がん

大腸がんの治療法について

大腸がん治療は切除が一般に第一選択で、完全切除ができたかどうかが最も予後を左右します。リンパ節転移のみならず、肝、肺など血行性の遠隔転移巣に対しても切除可能であれば手術的除去が望ましいです。

EMR(内視鏡的粘膜切除)

殆どの大腸がんは粘膜組織から発生し、がん細胞が粘膜内に留まっているうちはリンパ行性、血行性転移の可能性は殆どありません。そのため治療は原発巣除去で充分と考えられ、内視鏡的粘膜切除(EMR)が一般的です。

手術療法

EMRでの完全切除が難しい例や、摘出標本の病理検査で粘膜下層にまでがん細胞の浸潤がみられる場合(正確には大腸癌取り扱い規約でのsm2、sm3)は、豊富なリンパ流のため10%強の確立で腫瘍周囲リンパ節への転移がみられ、外科手術の対象となります。全例に手術した場合、残りの90%弱の症例に対しては行う必要のない手術をすることになるため、実際はインフォームドコンセントによりがん根治の可能性を90%弱からほぼ100%に引き上げたいと望む方が対象となります。全身状態などが不良で、手術に際して生命に関わる危険率がリンパ節転移率の10%強を上回る例では、手術による不利益が利益を上回ると考えられ、手術の決定には慎重な態度が必要となります.

早期がん

がんの浸潤が粘膜下層までの例は早期がんに分類され、遠隔リンパ節転移や血行性転移の可能性は低く、適切な腫瘍組織除去でほぼ100%近くが完治します。リンパ節除去を含めた手術治療が必要となるのはこのように粘膜下層以深へのがん浸潤が存在する例で、ある程度のリンパ節郭清と原発巣を含めた腸切除、吻合が標準的術式です。早期がんの場合、起こり得る10%強のリンパ節転移も殆どは腫瘍周囲に存在し、腫瘍域腸管の栄養動脈基部リンパ節への転移例は殆どないため、リンパ節郭清は大腸がん取り扱い規約での2群までに留め、不要な手術侵襲を避けていることが多いです。吻合に関しては術前イレウス、全身状態不良などの理由で回避され人工肛門となることもありますが、がんの根治性とは原則として関連性はありません。現在では早期がんの術後補助療法として抗ガン剤の使用は行わないのが一般です。

進行がん

がん浸潤が腸壁筋層まで及んでいる場合は進行がんに分類され、リンパ流、血流が豊富故により遠位のリンパ節転移や血行性転移の可能性が高くなります。がん組織切除に対して、より精密な手術が要求され、リンパ節も大腸がん取り扱い規約上3群までの郭清が必要となります。がんが筋層を越え、漿膜を貫いて腹腔内に露出した例では腹膜播種の可能性が生じます。腹膜播種の治療法については未だ確立したものはありませんが、初回手術の際に同時切除可能なレベルであれば、あくまでも外科的切除に委ねております。広範囲に播種巣が多発している場合や腹膜播種での再発例はさすがに手術のみによる予後改善を望むことは難しく、化学放射線療法の併用も相談しなくてはなりません。がんが周囲臓器に浸潤している場合は積極的に合併切除を行い完全切除を目指しています。大手術となり侵襲が過大となっても周術期を乗り切れば、他臓器のがんに比較し良好な予後が期待できるからです。

遠隔再発した場合

初回手術時に既に顕微鏡的に遠隔転移していたのが最初はわからず後に確認される、いわゆる再発例に対しても切除可能例には積極的に再手術での除去を提案しています。血行性転移である肝、肺転移についても切除可能なら同時、異時を問わず外科手術を優先させるのが予後が良いとされているからです。加えて化学療法、放射線療法も適宜相談しています。

局所再発した場合

直腸がんなどの局所再発例に対しても完全切除できれば予後は良好です。さすがに直腸がん局所再発に遠隔転移を伴う例となると手術適応とはなりませんが骨盤内臓全摘、仙骨合併切除術などの大手術でも乗り切ればがんが治る可能性も開けるので、完全切除が期待できる方には積極的に手術を検討しています。化学療法、放射線治療などは、状況に応じ、適宜相談しています

化学放射線療法

化学療法、放射線治療などは手術単独での根治が不可能か、あるいは切除不能の場合に用いられており、未だ絶対的に有効と判定される方法は確立されていないのが現状です。よって施行にあたっては患者様の病状などいろいろな事情を考慮、相談しながら計画しております.

腹腔鏡補助下手術

従来開腹術では、手術規模の大小に関わらず腹部に大きな創をつけるのが常識でした。しかし、近年様々な医療器具などの進歩により、同じ手術内容に対して術野への到達方法を変化させ低侵襲化を目指そうという動きが出ており、大腸疾患に対する腹腔鏡下手術は1991年に最初の報告がなされています。当院でも病状によって大腸腹腔鏡下手術を取り入れていますが、以下一般的な適応、方法、利点、問題点、最後に当院の現状を紹介致します.

適応

良性疾患に対しては、技術的に可能であれば同じ手術内容なら創が小さい腹腔鏡下手術の方が良いということに異論はないと思われるので適応にしています。悪性疾患のうち早期がんでは起こり得るリンパ節転移の殆どは腫瘍周囲であり、腫瘍の栄養動脈根部リンパ節への転移は殆どないためなるべく不要な手術侵襲を避けております。このような場合が大腸癌における腹腔鏡下手術の良い適応と思われます。がんの浸潤がさらに深く腸壁筋層まで及ぶ進行がんへの腹腔鏡下手術の実施は、患者様の病状や全身状態を含めて相談し決定しています。

方法

腹腔鏡から得た像をモニターを通して認識し、腹腔鏡手術用鉗子などを用いて手術を進めるのが基本です。病巣を摘出する小開腹創は通常必要ですから、早めにこの創をおき、そこから適宜直視下操作を加えるという開腹術の利点を活かした方法もあります。腹腔内での操作腔確保の手段としては二酸化炭素での気腹か腹壁吊り上げ法のいずれかを用いますが、視野確保が優れているとの理由で気腹を選択する施設が多いようです

次に手術に占める腹腔鏡下操作の割合ーすなわち手術にどの程度腹腔鏡下操作を取り入れているかで分けた腹腔鏡下手術の分類について紹介致します。

  • 腹腔鏡下手術の分類 大きく3つに分かれます。
    • 完全腹腔鏡下手術ー病巣摘出や吻合操作など必要最小限の直接操作が必要な部分のみ体外で行い、他の剥離操作、リンパ節郭清や血管処理などの操作は全て腹腔鏡でのモニター観察下に行うものです。難度が高く、経験の積み重ねを必要とします。欠点は腹腔内で触診による情報が得られないことです。
    • HALS(Hand Assisted Laparoscopic Surgery) ー小開腹創から片手を腹腔内に挿入し手での直接操作を手術の助けとする方法です。不意の出血への圧迫止血なども可能ですが、手術操作はあくまで腹腔鏡モニターの映像を見ながら進めます。片手が入る分、完全腹腔鏡下手術に比べやや小開腹創は大きくなりますが(約8cm)触診の情報も得られ、また手での臓器の直接把持などが行える利点もあります。手術操作の難度は完全腹腔鏡下手術より一般の開腹術に近づき比較的容易となります。
    • ミニラパ(mini-laparotomy)ー小開腹創併用ー結果的に病巣摘出などに必要な小開腹創を手術早期において利用する方法です。腹腔鏡下操作が望ましい部分は腹腔鏡下に行い、小開腹創からの直接操作が可能な部分は適宜直視下に行うことで手術の簡略化と時間短縮を求めます。当院では症例別にこの方法を選択していますが、基本手技として行っている施設、また腹腔鏡手術には分類されませんが、ミニラパのみで全手術過程を行う施設もあります。

    次に実際の手術手順というべきアプローチ法について説明致します

  • 実際の手術の進め方ーアプローチ法
  • 腹腔鏡下手術では視野の確保や実際の操作が難しいため、アプローチの違いによる手術の進め方の違いは手術の難度を左右する手技上の重要な要素となります。このアプローチ法は大きく3つに分かれます。

    • 内側アプローチ法ー腹腔内で内側から外側に向かって腸間膜や腸の剥離を進める方法です。具体的には腫瘍付近の剥離に先立ち、リンパ節郭清や血管処理を先に行う方法で、手術操作による腫瘍の直接刺激から引き起こされるがん細胞の血行性転移を未然に防ぐ可能性が高いとされています。当院でもこの内側アプローチ法をよく用いていますが、どちらかといえば転移防止よりは術式簡略化のためという意味で行っております。つまり内側アプローチを選択した方が技術的に容易になると思われる例を病変部位別ならびに症例の条件別に選択して用いているということです。
    • 外側アプローチ法ー通常の開腹術と同じ手術手順で腹腔内外側ー結腸の腹壁固定部から内側の栄養血管基部に向かって剥離を進める方法です。開腹術で馴染んだ手術手順なので受け入れ易く、腹腔鏡視野でのorientationもつき易いのが利点です。
    • 後腹膜アプローチ法ー後腹膜腔を作成して剥離を進めリンパ節郭清と血管処理を先に行った後に腹腔内に入って腸切除を進める方法です。手術既往による腹腔内癒着の影響を受け難いという利点があります。

実際はこれら3種類のアプローチのうち、各施設が容易と判断し好む方法を選択、あるいは組み合わせて行っているのが現状です。

腹腔鏡下手術の利点:主なものを挙げます

  • 小さな創ー最大の創が3~6cmと従来の開腹術に比べ小さいため低侵襲で、疼痛が軽減することが最大の利点といえます。そのため早期離床が可能で肺炎、肺塞栓などの呼吸器合併症や腸閉塞などの術後合併症軽減が期待されます。
  • 拡大視効果ー腹腔鏡の拡大視効果により細部まで詳細に観察できます。残すべき神経線維などが容易に確認でき、切除すべきリンパ節の取りこぼしなどがなくなり、手術精度が増すと思われます。
  • 深部操作の容易化ー骨盤底深部や胃切除術の際の食道裂孔部など通常の開腹術では確認し難い深い部分が腹腔鏡により比較的容易に観察し操作することができます。
  • 体温、水分喪失の防止ー創が小さく開腹時間が短いため腹腔内からの体温喪失や不感蒸泄が減り、腸のダメージなどが少ないと考えられます。

腹腔鏡下手術の問題点

通常の開腹術と同様の合併症に加え、腹腔鏡下手術特有の問題が存在します。代表的なものを挙げます。

  • 長時間手術ー開腹術より時間がかかるのは欠点です。しかし腹腔内が外界に曝されないため通常の開腹術程の悪影響はないとの報告もあります。また長時間手術の割には出血量は少なく、多少時間が長くなっても低侵襲性が損なわれることはないようです。
  • 気腹に関連した合併症ー腹腔内での操作腔確保のため二酸化炭素で気腹することが多いですが、そのため腹腔内圧が上昇し心肺への悪影響、高二酸化炭素血症、下肢血栓形成、皮下気腫形成などが起こり得ます。心肺系異常例への適応制限、気腹圧低下、手術時間短縮、下肢への血栓防止用器具装着などで予防、対処しています。
  • 傾斜体位での神経圧迫による麻痺ー操作腔確保には気腹以外にも体位変換で重力を利用し、障害物となる臓器を下方に押しやり手術の助けとしています。この際手術台の支柱に接した部の神経が長時間圧迫され麻痺する可能性があります。過度の傾斜体位を避け、接触部にクッションを置き、また手術時間を短縮するなどで予防しています。
  • ポート留置部のヘルニアー大きなポート挿入部に起こり得ます。器具の改良に伴い5mm以下の細いものに変更するか、縫合できる筋膜は縫合することで予防できます。

当院の成績

当院は大腸腹腔鏡下手術について中四国で屈指の施設と自他ともに認めております。適応は良性疾患、早期がん、進行がんの一部(病状などにより決定)で方法は完全腹腔鏡下操作を基本にしていますが、症例に応じて適宜小開腹創をおき、直視下操作の利点も取り入れています。また結腸癌の場合、手術歴、体型、リンパ節郭清度など個々の症例の条件に応じて内側、外側アプローチ法を適宜使い分け、術式を症例別にオーダーメイド化しています。イレウス症例では口側腸管洗浄などのため片手操作を手術の助けとしたHALSも取り入れています

2003年9月までに約130例を経験し、手術時間は結腸がんで3時間余り、直腸癌で4時間余りと開腹例より1時間程度は長くかかります。出血量は100ml台で特に輸血は必要としません。合併症発生率も同時期の開腹症例と差はなく、生命に関わる重篤なものはありませんでした。特に縫合不全は結腸症例では生じておりません。直腸症例では一般に縫合不全は10~20%の発生率とされ、適応の違いから腹腔鏡下手術例に軽症例が多いにもかかわらず、開腹症例に比べ縫合不全が起きやすいとされています。しかし、当院では腹腔鏡下施行例で45例中2例4.4%、同時期開腹例で65例中4例6.2%と両者に有意差はなく満足できる結果でした。

予後については手術関連死や腹腔鏡操作に関連したと思われる再発などはありません。今後は現在の適応例には引き続き応用し、加えて一般に腹腔鏡下手術の適応となり難いイレウス症例や下部直腸がん症例などについても部分的に腹腔鏡下操作を応用することで手術の低侵襲化を追求する方針です。

術後合併症

腹腔鏡下手術の項でも述べましたが、開腹術一般の合併症としては縫合不全、腸閉塞、肺炎、肺塞栓などが挙げられ、ある一定の確率で起こり得ます。当院では幸い生命に関わる程の重篤なものは最近経験しておりませんが、入院期間(一般的に術後10日位)を延長しなければならない程度のものの発生率は5~6%程あります。適応例の病状が軽いためもあると思いますが、腹腔鏡下手術施行例のほうが合併症発生は少ないようです。

後遺症

合併症が起こらなければ結腸術後ではあまり後遺症は残りません。直腸術後では、特に人工肛門を避け、肛門近くの低位で吻合した場合には頻便が起こり得ます。時間がある程度解決してくれますが、ほぼ肛門直上で吻合した場合はいくらかの頻便は後遺症として残るかもしれません。また当院では基本的に排尿、性機能温存を重視した自律神経温存の方針ですが、がん切除に際しやむなしと判断した場合には(術前に)自律神経合併切除について提案し同意が得られれば必要分は合併切除致します。この場合には切除範囲に応じた排尿、性機能を失うこととなり、泌尿器科などと一緒に治療を進めております。

長期生存について

一般的な成績(5年生存率)をDukes分類で紹介します。

Dukes A:がんが大腸壁(筋層)内に留まるもの 95%
Dukes B:がんが大腸壁を貫いて浸潤するがリンパ節転移のないもの 85%
Dukes C:リンパ節転移のあるもの 70%
Dukes D:肝、肺、腹膜など遠隔転移のあるもの 30%

当院でも以上の生存率でよしとせず、少しでも向上させるべく努力しております。治療の成否と正確、厳格に向き合うために術後数年経っても、ハガキなどで近況をお尋ねすると思いますが、一層の発展、寄与のために患者様にはご協力よろしくお願い申し上げます。

当院の方針と現状

当院では年間に約100例の大腸がん手術が行われており、約半数が結腸がん、残り約半数が直腸がんです。腹腔鏡下手術は約1/3の患者様に行っておりますが、器械、技術の向上により、適応とする症例数は年々増加傾向にあります。術後は数年にわたり再発チェックのため時々受診して頂き、必要な検査を行います。当院へは年3~4回お越し頂き適宜CT検査などを施行しますが、普段はお近くの先生にホームドクターをお願いして血液検査や予薬などの診療を分担、連携して行う方針としています。患者様には「二股かけて下さい」と説明しています。ご理解にうえ、ご協力よろしくお願い申し上げます。

2001-2007年 結腸癌登録 427件 

うち5年生存未確認件数 111(5年生存確認率74.0%)
C180~C189結腸癌427件
生存率
手術例335件80.0%
非手術例18件39.7%
内視鏡例74件100.0%
C180~C189結腸癌427件
生存率
0期62件98.0%
Ⅰ期99件100.0%
Ⅱ期76件98.1%
ⅢA期41件78.3%
ⅢB期48件72.2%
ⅢC期19件82.1%
Ⅲ期11件90.9%
Ⅳ期61件15.9%
ステージ不明10件87.5%

グラフ

2001-2007直腸癌登録 232数件 

うち5年生存未確認件数 65(5年生存確認率72.0%)
C19 C20 直腸癌232件
生存率
手術例185件79.0%
非手術例7件75.0%
内視鏡例40件100.0%
C19 C20直腸癌232件
生存率
0期33件100.0%
Ⅰ期70件94.1%
Ⅱ期36件90.5%
ⅢA期23件84.7%
ⅢB期21件63.9%
ⅢC期10件62.5%
Ⅲ期4件100.0%
Ⅳ期26件18.6%
ステージ不明9件100.0%

グラフ2

肝臓がん

わが国における死因の第一位は悪性新生物によるものです。そのうち肝がんによる死亡は第3位(男性で第3位、女性で第6位)を占めています。(厚生労働省大臣官房統計情報部、2009年人口動態統計)。肝がんにはもともと肝臓から発生した原発性肝がんと他臓器がんが肝臓に転移した転移性肝がんがあります。原発性肝癌のうち94%が肝細胞がんであり、そのうち約68%がC型肝炎ウイルス、15%がB型肝炎ウイルスの持続感染から発生しています(2004~2005年第18回全国原発性肝癌追跡調査)。B型およびC型慢性肝炎の患者さんは肝がんになりやすい高危険群、肝硬変の患者さんは超高危険群ということがわかっています。一方慢性肝炎や肝硬変に対して治療を行うことにより肝がん発生の危険性が著明に低下することも知られています。肝がんにならないこと、また肝がんになったとしても早期発見し根治的治療につなげることが必要です。そのためには、まず一人一人の方が自分がB型またはC型肝炎ウイルスに持続感染していないかどうかを一度調べてみて、もし現在感染していることが判ったら医療機関を受診し、正確な診断を受け、定期的な検査や適切な治療を受けることが重要です。

B型・C型肝炎ウイルス感染症の自然経過と肝がんの発生

B型肝炎ウイルスは出生時母子感染~幼少期感染により持続感染状態(キャリア)となります。B型肝炎ウイルスキャリアの方の85~90%は成人期までに肝炎発症を経てウイルス量低値・肝機能正常の無症候性キャリアとなりますが、残りの方は慢性肝炎へ移行し、その後年率2%の割合で肝硬変へと進行します。肝がんの発生率は、無症候性キャリアから年に0.1~0.4%、慢性肝炎から年に0.5~0.8%、肝硬変から年に1.2~8.1%と言われています。なお成人期のB型肝炎ウイルス感染は主に性行為によるもので、急性肝炎を発症します。従来は成人期のB型急性肝炎からキャリア状態や慢性肝炎に移行することはほとんどありませんでしたが、近年増加しつつあるジェノタイプAと呼ばれるB型肝炎ウイルスの場合には1割の方は慢性肝炎に移行すると推測されています。
一方、C型肝炎ウイルスは血液を介して感染し、急性肝炎を発症後、約7割という高頻度で慢性肝炎に移行します。C型慢性肝炎は20-30年という長期間にわたり炎症が持続し、線維化が緩徐に進行して肝硬変に変化します。慢性肝炎から肝硬変へと線維化が進行するにつれて年間発癌率が上昇します。C型慢性肝炎のステージ別に見た発癌率(/人/年)は、F0(線維化なし)-F1(軽度線維化)で0.5%、 F2(中等度線維化)で2.0%、F3で5.3%、 F4(肝硬変)で7.9%と報告されています(Yoshida H、 et al. Ann Intern Med 131:174-81、 1999)。また高齢者になるに従って発癌リスクが高くなります。一方インターフェロン著効により発癌リスクは軽減します。

肝細胞がんの診断

肝細胞がんの診断方法には画像診断(超音波、ダイナミック造影CT、EOBプリモビスト造影ダイナミックMRI)と血液腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-Ⅱ、AFP-L3分画)があります。その他に治療を兼ねて行う血管造影およびAngio CTや、診断困難例に対して細い針で組織の一部を直接採取して調べる生検組織診断という方法もあります。肝がん早期発見のためには危険度に応じた計画的な定期検査を行うことが必要です。高危険群であるB型・C型慢性肝炎、非ウイルス性肝硬変の方は6か月毎に、超高危険群であるB型・C型肝硬変の方は3-4か月毎に、超音波検査と腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-Ⅱ)測定を行うことが推奨されています。また超高危険群、腫瘍マーカーの上昇が続く場合、進んだ肝硬変で超音波での腫瘍描出が困難な場合にはダイナミックCTあるいはダイナミックMRIの実施を年1-2度程度組み合わせることが有効です。

治療

肝細胞がんの患者さんの多くは肝硬変を背景に有するためしばしば肝臓がはたらく力(肝予備能)が低下しています。そのため治療の種類や範囲が制限されます。また肝細胞がんは何か所かに同時に発生したり肝臓内の他部位に広がることが多く、また治療を行っても新たに別の部位に発生しやすいことが知られています。これらの特徴を踏まえて、がんの大きさや数、肝予備能を評価した上で総合的に判断することが重要になります。肝細胞がんの治療方法には以下のようなものがあり、それぞれ長所と短所があります。この中から個々の患者さんに最も適した方法を選択して治療を行います。

(1)肝切除
がんを含めて肝臓の一部を切り取る方法です。肝機能良好である場合、最も良好な長期予後が得られます。当院では、日本肝胆膵外科学会が認定した高度技能指導医が肝臓手術を行っているため、術後合併症は極めて少なく、多くの患者は手術後10日以内に退院されています。しかし、開腹による肝切除術は大きく腹壁を切開するため、身体への負担が大きく、また、手術後に傷の痛みが大きいという欠点があります。この欠点を克服する手術が腹腔鏡下肝切除です。当院では、平成22年6月から腹腔鏡下肝切除を始めました。平成26年8月までに44例おこなっています。

腹腔鏡下(補助下)肝切除の利点と欠点

利点
  1. 傷が小さい。目立たない。
  2. 術後の痛みが少ない
  3. 手術翌日から歩けるようになる。
  4. 早く退院できる。仕事に早く復帰できる。
欠点
  1. 手術が難しい。
    →→→400例以上の肝切除の経験を持つ高度技能指導医が手術を行い、
         腹腔鏡下肝切除も30例近い経験があるので心配ありません。
  2. 手術時間が長くなる。
    →→→手術時間は開腹手術に比べ長くなりますが患者のメリットが大きいので頑張ります。
  3. 医療材料費が高くなる。
    →→→診療報酬で大きく加算されました。
         患者の支払いは高額療養費制度があるため今までと大きく変わりません。

手技の実際

腹部に4~6本のポート(カメラや鉗子を出し入れできる筒)を挿入して、肝臓を切っていきます。出血のコントロールが最も難しいのですが、近年、ソフト凝固と呼ばれる方法で電気凝固する機器が開発され肝臓からの出血を完璧に止血できるようになりました。はじめは、部分切除や肝臓の外側区域切除など簡単な切除から始め、今では肝右葉切除、左葉切除など系統的な大きな肝切除もできるようになりました。平成25年3月末の時点で29例行っています。

皮膚の手術瘢痕の比較

A. 開腹肝切除

70代、女性

外来診察表

肝右葉切除を行った患者。
右肋弓下に20~30cm長の
手術瘢痕ができてしまいます。

60代、女性

外来診察表

転移性肝癌に対し肝右葉切除を行った患者

B. 腹腔鏡下肝切除

70代、男性

外来診察表

5本のポートを使用して腹腔鏡下肝部分切除した患者。臍を少し切り広げて切除した肝臓を取り出しました。
臍の傷はほとんど目立ちません。

50代、女性

外来診察表

5本のポートを使用して腹腔鏡下肝外側区域切除を施行した患者。大きな肝臓だったので恥骨の上を5cm程横に切って
ここより取り出しました。
下腹部の横切りの傷は目立ちにくいし下着に隠れます。

(2)経皮的ラジオ波焼灼療法
超音波ガイドで腫瘍を描出し、局所麻酔を行ったうえで経皮的にラジオ波針を腫瘍に穿刺し、通電して熱凝固します。原則として腫瘍径3cm以下、個数3個以内、肝予備能Child-Pugh分類AまたはB、出血傾向や腹水がない場合が適応となります。ただし個々の症例の条件によって適応や方法(人工胸水・人工腹水下など)を変更する場合があります。

(3)肝動脈化学塞栓療法(TACE)
局所麻酔下に大腿動脈を穿刺して腹部大動脈から腹腔動脈、上腸間膜動脈、肝動脈などへカテーテルを挿入し、血管造影を行います。CTを併用することもあります(Angio CT)。肝細胞癌への栄養血管を確認し、マイクロカテーテルを選択的に挿入し、リピオドール(油性造影剤)加抗腫瘍剤、続いてゼラチンスポンジ細片を栄養血管に注入して塞栓を行います。

(4)肝動注化学療法
肝動脈カテーテルから抗腫瘍薬を注入する治療法です。カテーテル近位部を皮下に留置して(リザーバー)、薬剤を反復的・持続的に注入することもあります。肝予備能Child-Pugh分類AまたはBで、TACE不応例や、門脈腫瘍栓合併などでTACE不適応例などが適応となります。

(5)分子標的治療薬(ソラフェニブ)
内服抗がん剤による治療法です。肝予備能が良好(Child-Pugh分類A)で進行した症例やTACEの効果が不十分な場合などが適応となります。

(6)放射線療法
門脈腫瘍栓などに対して局所的に放射線照射を行います。

胆道・膵臓がん

胆嚢がん・胆管がん

胆管は肝臓でつくった胆汁(消化液)を十二指腸まで導く管です。約8cmの長さがあり、太さも1cm以下がふつうです。胆嚢は胆管の途中に胆嚢管を介して合流しています。胆汁を入れて貯めておく袋で、食事が胃から十二指腸に送られると反射的に胆嚢は収縮して胆汁を胆管をとおして十二指腸に送り込み消化を助ける仕組みになっています。さて、この胆管の粘膜にがんが発生し、大きくなって胆管を閉塞するようになると胆汁の流れがとどこおり、黄疸、白色便、黄疸尿、かゆみなどの症状がでます。発生する部位により、肝臓、膵臓、周囲の血管などへ直接に浸潤し、また周辺のリンパ節に転移を起こします。胆嚢がんの場合は、胆管より胆嚢が大きく膨らみがあるのでさらに大きくなってから発見されやすいです。また、胆石を合併することが多いので胆嚢炎の手術の際に偶然発見されることもときにあります。胆嚢がんは肝に接しているために、肝への浸潤が高率におこり、また周囲組織やリンパ節転移も非常によくおこします。

診断

超音波検査、CT、MRI(核磁気共鳴画像)、PTC(経皮経肝胆管造影)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)などを行って、がんの存在部位、周囲組織への浸潤の程度を調べます。

病期(進行度、Stage)

胆嚢がん、胆管がんの進みぐあいは、I期からIV期までの4段階の病期(進行度)で示します。

I期 がんが胆管内や胆嚢内だけにとどまっている段階です。
II期 がんが周囲臓器にわずかに拡がっているか、あるいは近傍のリンパ節に転移をしている状態です。
III期 周囲臓器(肝臓、膵臓、十二指腸)に明らかに直接浸潤して拡がっているか、II期より遠くのリンパ節に転移している状態です。
IV期 III期よりさらに遠くへがんが浸潤していたり、肝への転移、腹膜への転移がある状態です

治療

胆嚢がん
  • 外科療法
  • 最も根治的な治療法ですが、手術で根治できる割合が胃がんや大腸がんに比べると低いのが現状です。最も早期の胆嚢がん(I期)は胆嚢を摘出するだけで充分です。腹腔鏡下で行うときもあります。少し周囲に拡がった胆嚢がん(II期)には、拡大胆嚢摘出術と称して、胆嚢以外に胆嚢の接した肝臓や、胆管、所属リンパ節を一緒に切除します。さらに、肝臓や肝門部に拡がったものは肝右葉切除をしたり、膵周囲リンパ節や膵内胆管に浸潤したものは膵頭十二指腸切除(膵の一部と十二指腸を切除する)を行う場合があります。このような拡大手術はIII期やIV期の一部に行われますが、術後の合併症発生頻度が高くなり、リスクも高くなります。正確な術前の進展度診断が重要になります。

  • 抗がん剤による化学療法
  • 切除できない胆嚢がんには、抗がん剤を全身投与したり、肝動脈内に投与したりして治療します。副作用として食欲低下や、吐き気、白血球減少、貧血、脱毛などがあります。

胆管がん
  • 外科療法
  • 最も根治的な治療法ですが、胆管周囲には肝動脈、門脈という重要な血管が走行しているので、がんがどこまで進展しているかが手術可能か否かを判断する場合に重要になります。胆管がんは大きく分けて、肝臓より(肝門部胆管がん、上部胆管がん)と膵臓より(中部・下部胆管がん)に分けられ、肝門部・上部胆管がんは肝葉切除(肝臓の右側2区域か左側2区域を切除する)をしないと根治手術にならないことが多く、長時間に及ぶハイリスクな手術です。中部・下部胆管がんは膵頭十二指腸切除を標準的に行います。治癒切除ができれば長期生存する可能性もあるので、長時間に及ぶハイリスクな手術でも行う価値があります。

  • 放射線療法
  • 切除不能な胆管がんに対し行うことがありますが根治的ではなく、がんによる狭窄部に対して胆汁の通過をよくするために局所的に照射することがあります。副作用として消化管に潰瘍ができたり、制御できない出血がおきたりします。

  • 化学療法
  • 切除不能な胆管がんやその転移に対して、延命効果を期待して行います。

膵臓がん

膵臓は腹部の最も深いところにあり、しかも重要な血管や神経叢、十二指腸、胆管、胃、大腸などに隣接しているため治療が最も困難な臓器です。膵臓は膵液という強力な消化液をつくり消化管に排泄する(外分泌機能)ことと、インシュリンなどのホルモンをつくり全身に供給する(内分泌機能)ことのふたつの機能をもった臓器です。膵液は主膵管に集められ胆管と合流して十二指腸の乳頭部から排泄されます。よって胆管とは密接な関係にあります。インシュリンは糖の代謝に重要なホルモンで、膵機能の低下によって糖尿病になります。膵管の上皮にできたがんが一般的にいわれている膵がんで、内分泌細胞からできた腫瘍は膵内分泌腫瘍と呼ばれ膵がんとは性質を異にします。ここでは膵がんのことを述べます。膵臓は大きく頭部、体部、尾部と三つの部位に分けられ、それぞれに膵がんが発生した場合、症状、治療法が違ってきます。

膵頭部がんは胆管に近いため胆管に浸潤し閉塞させ、閉塞性黄疸をおこします。黄疸により膵頭部がんが発見されることは日常的です。一方、膵体部がんや膵尾部がんは黄疸をきたしにくいため、受診が遅れさらに大きくなって発見されるため進行している場合が多いです。膵がん全体に共通する症状は腹痛、腹部不快感、背部痛、食欲低下、体重減少などで、症状が出たときにはかなりの進行がんか切除不能ながんになっていますので、膵がんの予後は非常に悪いものとなっています。

診断

超音波検査は簡便で最初に行う検査としては有用です。これで膵がんを発見することもあります。次の検査はCTが有用で膵に異常があれば、ダイナミックCTやMRI(核磁気共鳴画像)、ERCP(内視鏡的胆管膵管造影)、PTCD(経皮経肝胆管ドレナージ)を行い膵がんの確定診断をします。腫瘍マーカー(CEA, CA19-9, Dupan-2,Span-1など)も測定し参考にします。時に腫瘤を形成する慢性膵炎との鑑別が困難な時がありますが、がんを否定できない時には手術を行います。浸潤傾向が無く、膵管内に限局して発育する膵管内腫瘍や膵内分泌腫瘍とも鑑別します。膵がんと診断されれば次に進展度診断(周囲組織への拡がり)が、切除可能か否か、切除対象にするか否か、に重要な情報ですので、ダイナミックCTで局所や転移の有無を詳細に検討します。腹部血管造影を追加して行うこともあります。

治療

膵がんは診断時にはすでに周囲神経叢、血管、リンパ節への浸潤転移、肝転移、腹膜播種などをおこしているため切除の対象とはならないことが多く、切除できた場合でも顕微鏡レベルでは取り残しがあり根治的な手術になっていない場合が多くほとんど再発、再燃をおこして2年以内に死亡する予後不良ながんです。切除できない場合は6ヶ月以内に死亡することが多いです。よって外科療法だけでなく、放射線療法や抗がん剤を使った化学療法を併用しますが、依然として現在でも充分な成績を上げていません。

  • 外科療法
  • 膵頭部にあるがんは、膵頭十二指腸切除といって膵臓の頭部と胃の一部・十二指腸・胆管・胆嚢・周囲リンパ節・神経叢の一部などを合併切除します。胃は切除せずに温存する場合もあります。神経叢を広範に切除すると根治性はあがりますが術後重篤な下痢を引き起こしこれにより栄養不良をもたらしてしまいますのでこの点に関しては専門家の間でも意見の相違があります。膵体部や膵尾部にあるがんは膵体尾部切除といって、膵臓の体部と尾部、脾臓、周囲リンパ節や神経叢を切除します。現在、膵がんで膵臓全体を切除することはその障害の大きさに比べ利益は少ないのでほとんど行いません。

  • 放射線療法
  • 切除不能な膵がんの時に化学療法と併用して行いますが、がんを死滅させるほどの大量を照射すると副作用として消化管出血がおこり致命的になります。外科手術時に切除した後に開腹したままで局所に少量照射する方法は安全で多くの施設で取り入れられており当院でも行っています。しかしこの術中照射の延命に対する意義は議論の余地があるところです。

  • 化学療法
  • 現在、膵がんに有効な抗がん剤はないといっても過言ではありませんが、他の治療法と組み合わせて行っているのが現状です。

食道がん

食道がんは悪性度が高いといわれていますが、早期がんの中でがんが粘膜の表層にとどまっているものは、リンパ節転移がほとんど無いとされ内視鏡による治療が可能です。方法は内視鏡を使い病巣の粘膜下に生理食塩水等を注入し粘膜を浮き上がらせ、特殊なナイフにより粘膜を焼き切ります。切除された組織が顕微鏡検査にて粘膜表層に限局しており、完全に切除されていることが確認されれば治療完了となります。治療前の診断と異なり、がんがより深くに広がっていればリンパ節転移の可能性があるため、外科手術や放射線、抗がん剤治療が必要となります。主な合併症として出血、穿孔(食道に穴があく)があります。ほとんどが内科的に治療可能ですが、外科手術が必要となることもあります。入院期間は約1週間です。早期にがんをみつけるためには色素を使った内視鏡検査が極めて有用です。この方法は通常の内視鏡検査にくらべ時間がかり、胸やけなどの症状、ヨード過敏などの問題がありますが、通常では発見が困難な初期のがんを見つけることができます。50歳以上の男性でたばこを吸う方、お酒を多く飲む方は食道がんになる可能性が高くなるので色素を使った内視鏡検査を受けることをお勧めします。

鼠径ヘルニア

「鼠径」とは、太ももの付け根の部分のことをいい、「ヘルニア」とは、体の組織が正しい位置からはみ出した状態をいいます。
「鼠径ヘルニア」とは、お腹の内側の膜(腹膜)や腸などの臓器が、鼠径部の弱くなった腹壁の間から袋状に皮膚の下に出てくる病気です。俗に「脱腸」と呼ばれている病気です。

鼠径ヘルニアの症状

 初期のころは、立った時とかお腹に力を入れた時に鼠径部の皮膚の下に柔らかいはれができますが、普通は指で押さえると引っ込みます。次第に小腸などの臓器が出てくるので不快感や痛みを伴ってきます。

ヘルニアの嵌頓(かんとん)

はれが急に硬くなったり、押さえても引っ込まなくなることがあり、強い痛みや吐き気、熱などの症状が出ることがあります。
これをヘルニアの嵌頓といい、すぐにはさまった腸を元に戻さなければ腸が腐ることもあるので、緊急手術が必要となります。

鼠径ヘルニアになりやすい人

 乳幼児の鼠径ヘルニアは先天的なものですが、成人の場合は加齢により組織が弱くなることが原因で、40歳以上の男性に多く起こる傾向があります。腹圧のかかる力仕事、立ち仕事に従事する人に多くみられます。便秘症の人、肥満の人、前立腺肥大の人、咳を良くする人、妊婦もなりやすいとされています。

鼠径ヘルニアの出来るわけ (少々専門的になりますが)

 鼠径部にはお腹と外をつなぐ筒状の管(鼠径管)があり、男性では睾丸へ行く血管や精管(精子を運ぶ管)が、女性では子宮を支える靱帯が通っています。成人鼠径ヘルニアになる人は生まれたときからヘルニア嚢という袋(腹膜鞘状突起の遺残)があるのですが,鼠径管の出口を筋肉が塞いで腸が脱出しないメカニズム(シャッターメカニズム)が働いています。しかし、年をとってきて筋肉が衰えて鼠径管の出口が緩んで,出口を塞ぐメカニズムが壊れると、お腹に力を入れた時などに袋の中に腸など、お腹の中の臓器が出てくるようになります。これを外鼠径ヘルニアといいます。一旦壊れたシャッターメカニズムは元には戻らないので自然治癒は期待できません。
もう一つの原因として、腹壁には弱い場所があり、年をとってきて筋肉が衰えてくるとここを直接、押し上げるようにして腹膜がそこから袋状に伸びて途中から鼠径管内に脱出します。これを内鼠径ヘルニアといいます。外観は外鼠径ヘルニアと変わりません。  鼠径部の下、大腿部の筋肉、筋膜が弱くなって膨らみが発生するヘルニアを大腿ヘルニアといいます。

鼠径ヘルニアの治療について

 乳幼児の鼠径ヘルニアは腹壁が強くなることで自然に脱出しなくなることがありますが、成人の鼠径ヘルニアではそれとは異なり自然に治ることもなく、緩んでしまった腹壁は体を鍛えることで良くなることはありません。また、ヘルニアバンドという器具はありますが、ヘルニアの飛び出しを抑えるだけで、ヘルニアが治ってしまうことはありません。
成人の場合は一旦出来てしまったヘルニアは、手術しないと治りません。

鼠径ヘルニアの手術について

 手術では、腸をおなかに戻し脱出した袋を切除し、弱くなった腹壁の補強をします。腹壁の補強法として従来法と人工補強材を用いる方法がありますが、最近ではほとんど全例で人工補強材を用いる方法を行っています。

従来法

 以前から行われている方法で、腹部の筋肉や筋膜を糸で縫い合わせ、鼠径管の口を縫い縮めることで補強します。この方法で補強すると縫い合わせた筋肉や筋膜の部分に”つっぱり”ができ、術後の痛みやつっぱり感の原因になることがあります。また、加齢によってさらに筋膜が弱くなると再発することがあります。再発率は約2~10%と報告されています。

テンションフリー法(人工補強材を用いる方法)

 筋肉や筋膜を縫い縮めずに、代わりに人工補強材(ポリプロピレン製メッシュ)を入れて補強する方法です。術後のつっぱりをなくすために1990年代になり開発され、現在日本で最も多く用いられている方法です。再発率は低く(1%ぐらい)、術後よりすぐに歩行が可能です。加齢によって筋肉や筋膜が弱くなっても補強材があるので再発を防ぎます。 当院では、メッシュプラグとクーゲルパッチを主に補強材として用いています。 いずれも麻酔は硬膜外麻酔とよばれる、腰の後ろから細いチューブを入れ、手術を行う部分だけの痛みを取る麻酔で行っています。

腹腔鏡下ヘルニア根治術

 胆嚢や胃・大腸手術で行なっている腹腔鏡手術を用いる方法もあり、当院でも少数例ながら採用しています。カメラや道具をお腹の内側に挿入し、内部から人工補強材を当てる方法です。全身麻酔による手術が必要なこと、手術時間および費用がテンションフリー法よりかかります。

手術の合併症について

 主な術後合併症は、出血(通常この手術での出血はごくわずかです。)、創感染(傷が化膿すること)、副損傷(神経や精管や腸管の損傷)、血腫(術後の出血で傷の周りが腫れること。時間の経過とともに吸収されます。)、ヘルニアの再発(当院では約1%)などがあります。いずれの合併症も可能性としてはかなり低く、過度の心配は必要ありません。

入院期間は

 テンションフリー法の利点は術後の痛みが少ないことで、入院期間は3-5日。抜糸は1週間目に外来通院でおこないます。

日常生活に復帰するには

 退院後は、入浴を含めて通常の生活が送れます。事務仕事であれば1週間で仕事に復帰できます。力仕事、激しい運動は1ヶ月程度避けたほうがいいでしょう。