IVRセンター

循環器内科(特に不整脈科)、脳血管内治療外科、心臓血管外科、放射線科、肝臓内科など多くの科が協力して、頻脈性不整脈、脳梗塞、急性末梢動脈閉塞症、多発性外傷、肝臓がんなどの多岐にわたる治療を積極的に行っています。
以下に各科の詳細な治療内容をお示しします。

IVRセンターにおける循環器内科治療

循環器内科ではIVRセンターにて主に不整脈に対する電気生理学試験・カテーテルアブレーション、閉塞性動脈硬化症に対するEVT(エンドバスキュラートリートメント)を行っています。

電気生理学試験

徐脈性不整脈、頻脈性不整脈の診断を行います。静脈より電極カテーテルを挿入し、心内心電図を記録します。徐脈の原因の診断や頻脈性不整脈の誘発を行い診断します。

カテーテルアブレーション

不整脈の起源となる部位・回路に対して高周波エネルギ−を用いて焼灼術を行い、治療をします。

右心房三尖弁輪起源が心房頻拍の起源であると同定し、カテーテルアブレーションにより治療を行っています。左の図が電極カテーテルを挿入している透視画像、右の図は3Dマッピングシステムを使用し不整脈起源の場所を記録している様子です。

左が治療前の心房頻拍の12誘導心電図、右が治療後の洞調律の心電図です。アブレーションにより不整脈は根治する事ができました。

末梢血管領域

当院のIVRセンターのシネアンギオ装置は、対角16インチ(約41cm)という大きな視野で末梢血管に対するカテーテルによる血管内治療(Endovascular treatment; EVT)が可能です。当院の心臓カテーテル室のシネアンギオ装置は対角8インチですので約4倍の面積の視野が確保でき、長い病変の治療には大変有用です。

右前脛骨動脈の長い閉塞例

閉塞性動脈硬化症の患者さんの、対角8インチでの右下腿(ひざ下)の血管造影です。前脛骨動脈(ぜんけいこつどうみゃく)が閉塞していることがわかります(白矢印)。閉塞長は約20cmですが、一視野におさまりきらないため画像をつぎはぎをしないと全体像が把握できません。そのため治療の成功率も低下します。

IVRセンターでの治療中

ガイドワイヤーを通過させることに成功しました。閉塞部が一視野におさまっていることが分かります。

最終造影

風船で拡張し、再開通に成功しました。大視野を活用して成功したEVTでした。

腹部血管造影について

局所麻酔下に大腿動脈を穿刺し、腹部大動脈から腹腔動脈,上腸間膜動脈,肝動脈などへカテーテルを挿入し,血管造影を行います。診断をすると同時に、カテーテルを病変部直近まで進めて、薬剤、塞栓物質、コイルなどを病変部に直接、選択的に入れて治療を行います。(図1)肝細胞がんに対する治療が主ですが、その他にも出血に対する止血術、胃静脈瘤の硬化療法などに用います。以下のような治療法があります。

①肝動脈化学塞栓療法(TACE)

肝細胞がんの多くは豊富な血流により栄養されているため、この血流を止めることによりがん細胞を阻血壊死させることができます。まず血管造影で肝動脈を造影し肝細胞がんに流入する栄養動脈を確認します。カテーテルの中にさらに細いカテーテル(マイクロカテーテル)を入れて、目的とする栄養動脈まで選択的にマイクロカテーテルを進めます。ここから抗がん剤と油性造影剤(リピオドール)を懸濁した薬剤を投与し、この薬剤を肝細胞がんの中に貯留させ、抗がん剤を徐放させます。さらにゼラチンスポンジ細片を注入することによりがん細胞を阻血壊死させます。一方、がん以外の正常な肝細胞は肝動脈と同時に門脈からも血流を受けているため障害を受けにくく、肝細胞がんの周辺の非がん部に対するタメージを最小限にすることができます。肝細胞がんが複数ある場合にも一度に治療することが可能です。患者さんに対する負担も少なく、繰り返して治療することもでき、ラジオ波治療などども併用することもあります。 一般に広く行われている治療です。(図2)

②肝動注化学療法(TAI)

肝細胞がんが進行して肝内の太い門脈に腫瘍栓ができている場合は①の塞栓療法を行うことができません。その場合はカテーテルを肝細胞がんの近くまで送り、抗がん剤を直接送って治療を行います。これを肝動注化学療法(TAI)と呼んでいます。カテーテル近位部につないだ穿刺器具(リザーバーまたはポートと呼びます)を皮下に留置して,薬剤を反復的・持続的に注入することもあります。

③止血術

肝細胞がんが増大し肝表面から突出するようになると、表面が壊れてそこから腹腔内に出血することがあります。多量の出血により失血性の血圧低下(ショック)となり生命が危険となることもあります。このような場合、緊急に血管造影を行い、カテーテルを出血している肝細胞がんに進めて出血動脈に対して塞栓術を行うことがあります。

胃静脈瘤に対するバルーン閉塞下逆行性静脈瘤塞栓術 (B-RTO)

肝硬変の患者さんで胃の上部(穹窿部)に太い血管ができることがあります。この血管が破れて出血(吐血)したり、この血管から腎臓へ血液が流れることにより、アンモニアが全身に直接流れて意識障害(肝性脳症)を起こすことがあります。このような時にB-RTOが適応となります。まず内頸静脈または大腿静脈からバルーンカテーテルを挿入します。これを左腎静脈へ進め、さらに胃静脈瘤から左腎静脈へつながる短絡血管まで進めます。ここでバルーン(カテーテルの先についている風船)を膨らませて血液の流れを止めます。さらにバルーンカテーテルの先から細いカテーテルを選択的に入れ、胃静脈瘤の中に血液硬化剤を満たすことにより胃静脈瘤を内部から固める治療です。

図1

図2

IVRセンター紹介 放射線科

放射線科としては手術等での処置が困難な致命的な出血に対して、血管内から動脈塞栓をおこなうことで緊急に止血し、救命を行っています。交通事故、転落等の外傷、潰瘍等による消化管出血、産科出血、喀血など、幅広い疾患に対応しています。また、腹部臓器の血栓塞栓症、透析シャントの不具合などに対しては、血栓除去、血管形成術を行い、機能温存に努めています。外科手術前の血流改変、術後、血管系合併症への対応も行います。