1.診療科について

診療内容

診療内容

耳鼻咽喉科疾患全般の診療、すなわち耳、鼻・副鼻腔、咽頭、喉頭、頭頚部の疾患および気管・食道の一部疾患の診療を行っています。地域の診療機関と連携をとり、入院治療を中心に、その要望に応えられるように努めています。

医師のご紹介  外来診察表

施設認定

  • 日本耳鼻咽喉科学会専門医制度耳鼻咽喉科専門医研修施設
  • 日本気管食道科学会認定気管食道科専門医研修施設(咽喉系)

2.主な疾患と治療法

耳科領域

各種耳科手術(人工内耳を除く)、急性感音難聴やめまいの治療のほか、新生児聴覚スクリーニング後の精密診療機関としてABRなどの検査を行っています。心因性難聴や機能性難聴の精査も行っています。

慢性中耳炎

慢性中耳炎には化膿性中耳炎と真珠腫性中耳炎があり、真珠腫性中耳炎は扁平上皮の増殖により発生します。慢性中耳炎の手術では真珠腫性中耳炎に対する鼓室形成術の比率が高くなっています。真珠腫性中耳炎では真珠腫を完全摘出するために外耳道後壁骨を削除することがありますが、真珠腫再発をはじめ術後トラブルが起こりにくい形を目指して、外耳道を軟組織により再建し乳突洞非開放型にしています。術後の経過は良好です。一期的手術を基本にしていますが、真珠腫の進展範囲によっては段階手術を行います。
炎症の少ない、比較的小さな鼓膜穿孔が主体の中耳炎では、日帰りあるいは2泊3日入院で鼓膜形成術を行っています。

鼻科領域

慢性副鼻腔炎

慢性副鼻腔炎では、まず3ヶ月程度保存的治療を行い、改善が見られない場合には手術を行います。喘息やアレルギー性鼻炎などのアレルギー素因が関与して副鼻腔炎を発症する症例が多く、その場合には手術後にもかかりつけ医院で継続して治療が必要になります。また最近では真菌による副鼻腔炎が稀ならず見られ、真菌症では通常手術が必要です。
副鼻腔手術では内視鏡下鼻内副鼻腔手術を中心に低侵襲手術を行っています。ナビゲーションシステムを導入しており、より安全な手術が可能になります。
鼻領域の救急疾患の大部分は鼻出血であり、鼻腔内後方より出血している止血困難症例では入院治療を行います。

口腔・咽頭領域

この領域では扁桃手術が最も多く、他院腎臓内科からの依頼によりIgA腎症患者に対して手術を行うこともあります。睡眠時無呼吸症候群症例にはアプノモニターやポリソムノグラフィーを施行してCPAP適応の判定と導入を行っています。
救急疾患としては扁桃周囲膿瘍が多く、切開排膿、入院治療を行っています。

喉頭・気管・食道領域

喉頭は呼吸する部位であると同時に発声する器管で、喉頭の中心にある声帯の変化により声が変化します。その原因として声帯ポリープ、喉頭癌、反回神経麻痺等があります。
声嗄れを訴える症例には電子スコープやNBIによる診察を行い、癌の可能性の有無を判断します。声帯ポリープやポリープ様声帯に対しては全身麻酔下にポリープ摘出術(ラリンゴマイクロサージェリー)を行っています。時に反回神経麻痺症例に甲状軟骨形成術を行うことがあります。
食道異物は消化器内科が内視鏡下に摘出することが多くなりましたが、異物によっては当科が硬性食道鏡下に摘出します。
この領域の救急疾患には喉頭浮腫があり、入院治療を行っています。必要に応じて気管切開術を行います。
嚥下機能に関してはリハビリテーション科、歯科とともに診療に当たり、当科は内視鏡検査により原因疾患の有無の確認と嚥下機能評価を行っています。

頭頚部領域

頭頚部の良性・悪性腫瘍に対する手術を行っています。
良性腫瘍には耳下腺腫瘍、顎下腺腫瘍、頚嚢胞などがあります。

頭頚部癌

頭頚部癌は耳鼻咽喉科領域の癌で、脳、眼窩、頚椎、脊髄を除く頭部と頚部の大部分の癌を指します。 呼吸する、食べる、話すと言った人の基本的な機能に深くかかわる領域です。 頭頚部癌は日本の全癌の約5%で、その中で喉頭癌、咽頭癌、舌・口腔癌が多く発生しています。 いずれの癌も喫煙と飲酒により発生率が大きく影響されます。

喉頭癌

喉頭は呼吸と発声を担う部位で、直接発声にかかわる声帯とそれ以外の部位とでは病気の初期症状が異なります。喉頭癌の中で多い声門癌(声帯の癌)では、すぐに声の変化として本人や周囲が気付くため早期発見され易く、また転移しにくいため予後の良い癌です。早期がんであれば放射線治療のみで80~90%が治癒し、声が保存されます。ただし、進行すれば転移して生命にかかわることは多部位の癌と同じです。進行癌では多くの場合、喉頭全摘出術と永久気管切開孔造設を行います。手術後には発声機能を喪失するため、食道発声、プロボックス、電気喉頭などの補助の方法によりコミュニケーションをとります。手術を行えば進行癌でも治癒の可能性が高い癌です。症例によっては抗がん剤と放射線の同時併用療法を行います。
声帯以外の喉頭に発生する癌では症状が出にくく、声門癌に比べると転移し易いため進行癌として発見されることが多くなります。治療法は声門癌と同様です。

咽頭癌

咽頭は鼻の奥、頭蓋底(脳の底)の上咽頭、口の奥から舌の付け根あたりの中咽頭、喉頭の後方で食道直上の下咽頭に分けられ、部位により初期症状や治療法が異なります。上咽頭癌の初期症状は鼻閉、鼻出血、中耳炎症状、頭痛などです。治療は抗がん剤と放射線治療が主になります。
中咽頭癌と下咽頭癌の初期症状は咽の違和感、飲み込むときの痛みです。進行するまで症状が出現しないことも多く、特に下咽頭癌は発見されにくく、頚部リンパ節転移を初発症状として発見されることもしばしばです。早期癌であれば放射線治療のみで治癒できますが、ある程度進行して発見されることが多く、手術主体あるいは抗がん剤と放射線の同時併用療法のいずれかの治療法を行うことになります。手術の場合、中・下咽頭の中での腫瘍の部位と広がりにより喉頭全摘術も行うことがあります。摘出範囲が広くなると再建手術(他の部位から皮膚や腸管などを採取して欠損部位を再建)が必要になります。また手術法によっては手術後に誤嚥し易くなる場合もあり、症例ごとに癌の性質、癌の範囲、年齢、全身状態、治療後の生活環境などを考慮して治療法を選択します。
当院では再建を必要とする手術例よりも、抗がん剤と放射線の同時併用療法を行う症例が多くなっています。

舌癌

舌癌の発生には喫煙、飲酒、虫歯、内向きにはえた歯による慢性的刺激が危険因子として挙げられ、およそ90%が舌の辺縁に発生します。舌の変化は自分で気付き易く見え易いため、早期発見が可能です。早期癌では手術と組織内照射の方法がありますが、全国的に手術が選択されるようになっています。手術では癌の周囲に5mm~1cmの正常と見える範囲をつけて大きめに摘出しますが、舌を半分近く摘出しても術後の機能障害はあまりありません。進行癌になると再建を伴う摘出術が必要になります。
当院でも早期舌癌の手術を多数行っていますが、組織内照射は行っていません。再建を必要とする症例は岡山大学病院に紹介することがあります。

その他の領域

当院に救命救急センターがあるため外傷患者の搬入が多く、頚部外傷、気道熱傷の患者の診察や手術も行っています。

3.実績

診療実績

令和2年度に行った手術は、鼓室形成術・鼓膜形成術等耳下手術27件、内視鏡下鼻内副鼻腔手術108件、扁桃手術(アデノイドを含む)108件、頭頚部腫瘍手術18件(悪性含む)、気管切開33件、深頚部膿瘍切開術等585件でした。