1.診療科について

診療内容

診療スタッフ

 急性期病院の小児科として、小児の急性疾患全般に対応しています。その一環として、当院の特色である救急医療に対しても、岡山大学小児科の助力を得ながら、24時間365日小児科医が対応しています。
また、急性疾患のみならず、乳児健診、学校検診で見つかった心雑音、心電図異常、検尿異常などの精査・管理やてんかん、アレルギーなどの慢性疾患の診療にも力を注いでいます。約40年前より小児糖尿病サマーキャンプを主導しており、1型糖尿病をはじめ、低身長、思春期異常などの内分泌・代謝疾患にも対応しています。昨今、問題となっている食事アレルギーに対しても、食物負荷などの検査を行っています。
ご紹介患者様には、できうる限りの対応をいたしますが、特に、時間外では人員、検査などが限られることもあります。円滑な連携のためにご一報いただければ幸いです。

2.主な疾患と治療内容

神経疾患

 小児の主な神経疾患はてんかん・熱性けいれん・胃腸炎関連けいれん・急性脳症です。令和2年の診療実績は新規てんかん約30例、熱性けいれん約200例、胃腸炎関連けいれん約10例、急性脳症1例です。必要に応じて脳波・頭部MRIなどの検査も随時行っております。また救急搬送される疾患患児も多く、令和2年度は120名にのぼっています。
神経疾患の紹介は月曜日午後、もしくは水曜日・金曜日の午前中にしていただければ幸いです。

熱性けいれん

 38℃以上の発熱に伴って乳児期に生じる発作性疾患(けいれん・非けいれん性疾患を含む)で中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因疾患がないものとされています。誘因は感染に伴う免疫反応と体温上昇とされていますが発熱時におけるIL-1βなどの脳内サイトカイン・神経伝達物質の産生と異常反応・GABA神経系などの神経ネットワークの未熟性・温度感受性イオンチャンネルの活性化などが関係しているといわれています。
当院での救急外来での症例203例では、発症年齢は8か月から6歳までと幅広いですが、平均2歳0か月でした。得に1歳台に好発していました。発作持続時間は85%が5分未満と比較的短く、病院到着時には頓挫している例が大部分でした。発作回数は3回未満が約9割を占めていました。特に再発作を起こす可能性が高い症例は①遷延・重積発作(15分以上)の既往。②発作回数2回以上で要注意因子(家族歴・発達遅滞など)2項目以上あり。③群発発作の既往(2回/半日 3回/半年 4回/年)であり、当院の熱性けいれん全体の約10%ほどです。これらの症例には、熱性けいれんのガイドラインに基づきジアゼパム座薬で発熱時の指導を行っております。

軽症胃腸炎にともなうけいれん

convulsion with gastroenteritis

 ノロウイルス・ロタウイルスなどの主にウイルス性胃腸炎に伴うけいれん発作で6か月~3歳までの乳幼児期に好発する疾患です。発作型は無熱性全般けいれんで短時間(5分以内)のことが多く、しばしば群発しますが24時間以内には治まることが殆どです。電解質異常・低血糖・著明な脱水などを伴わず、家族歴・既往歴なども特にないことが多いようです。これは熱性けいれんなどの予防に用いられるジアゼパムなどGABA受容体に作用する薬剤の有効性があまり高くなく、カルバマゼピンなどナトリウムチャネルに作用する薬剤の治療効果が高いことからも支持されています。また同日に発作を繰り返す良性乳児けいれんとの関連(10%に合併)も指摘されています。
治療はカルバマゼピン5mg/kgの1回経口投与で、当院の症例では、ほぼ全例で痙攣の再発はみられていません。啼泣や痛みで誘発されることがあり、当院でも点滴などの処置中に発作を起こした例があり、出来るだけ処置前に投与を行っています。

てんかん(epilepsy)

 てんかん発作※(けいれん・意識障害など)を生じやすい永続的な素因と、それによりもたらされる神経生物学的、認知的、心理的な結果を特徴とする脳の疾患です。少なくとも2回以上のてんかん発作を特徴とする状態で直近の明らかな原因によって誘発されたもの(機会発作:熱性けいれんのみ・電解質異常など)は除外する必要があります。
脳波検査・頭部画像検査などを行い、必要に応じて抗てんかん薬の投与を一般的には3年~5年間行います。予後が良好と予想されるものに関しては無投薬で経過をみせていただくこともあります。
当院で特に夜間に遭遇する頻度が高いてんかんについて説明します。

※てんかん発作(epileptic seizure)
脳における異常なニューロン活動による一過性の症状や徴候のこと

中心・側頭部に棘波を持つ良性小児てんかん

(benign childhood epilepsy with centrotemporal spike:BECTS)

 大脳側頭部周囲に焦点を持ち自然寛解する予後良好な年齢依存性てんかんで睡眠中、起床前後に発作を起こすことが多く(約70%)、口腔や顔面をピクピクさせるような部分発作が特徴です。時に睡眠中に全身けいれん(全般化)を起こすことがあります。過半数が6回以下のことが多いとされています。発症年齢は2~15歳(8~9歳がピーク)で5歳未満は難治といわれています。脳波検査では典型的にはcentrotemporal spikes(CTS)があり睡眠時に増強がみられます。画像所見では異常はありません。
治療に関して基本的に経過観察とされていますが、1:覚醒中(活動時)の発作がみられる例 2:頻回の部分発作(≧2回/3カ月)3:複数回の全般化(≧2回/年)などの例は抗てんかん薬内服をしていただいております。(バルプロ酸・ゾニサミド・レベチラセタムなど)
2年以上発作が抑制できたら積極的に減量・中止を考慮しておりますが言語、注意、行動の異常が10~20%にみられることがあり注意深く観察しております。

Panayiotopoulos症候群

 早期ないし中小児期(1~12歳)に生ずる年齢依存性の良性焦点性発作性疾患です。睡眠中(75%)、起きがけに悪心、嘔吐、顔面蒼白などの自律神経発作で突然発症し、欠神様脱力発作(ictal syncope)が続発します。10分以上続くことが多く、二次性全般化発作が重積することもあるてんかんです。けいれん性疾患の家族歴・熱性けいれんの既往を高率に認めることも多いです。脳波では後頭領域~前頭極部・中心側頭領域の移動性、多焦点性のてんかん波を認めることが特徴です。画像では異常を認めません。
発作は約3割が1回のみで1~2年以内に2~5回発作を起こして治癒する例が多いとされています。当院では初回はジアゼパム座薬の投与を行い、脳波などで本疾患を疑う場合基本的に2回以上で抗てんかん薬の内服(バルプロ酸・クロバザム・レベチラセタムなど)を考慮しております。当院での症例は来院時頓挫している症例がほとんどで睡眠時の複雑部分発作や嘔吐などの徴候が診断確定の一助となりうるため詳しい問診を心がけております。

内分泌・代謝疾患

 小児のおもな内分泌・代謝疾患は低身長、甲状腺疾患、思春期早発症、糖尿病などです。令和3年度の診療実績は低身長約140例(うち成長ホルモンによる治療は26例)、思春期早発症25例、甲状腺疾患13例、1型糖尿病10例です。
当院は社会貢献の一環として小児糖尿病児を対象とした糖尿病キャンプを昭和51年より毎年夏季に行っており、例年20名前後の糖尿病児の参加があります。その縁もあり、小児糖尿病の診療にも力を入れています。最近では、より自由度の高い生活が可能となる持続インスリン皮下注射(CSII)や持続血糖測定と連動した持続インスリン皮下注射療法(SAP)の導入も積極的に行っています。内分泌疾患の紹介は地域連携室を通じて月曜日もしくは木曜日の午前中にしていただければ幸いです

低身長

 同性、同年齢の標準身長と比較して、身長が-2SD以下を低身長と定義することが一般的です。成長曲線は低身長の診療において最も重要な情報であり、これを記載することが診療の第一歩となります。そのため過去の身長データー(母子手帳、保育園・幼稚園・学校での記録)を持参してきていただく必要があります。特に、最近では、在胎週数に比して小さく生まれてきた赤ちゃんが3歳になっても低身長のままだと、治療が可能な場合もありますので、母子手帳の情報は重要です。外来では、一般検査のほか、骨年齢、IGF-I(ソマトメジンC)などを測定します。また女児の場合、低身長以外の所見の目立たないTurner症候群が存在するため、保護者の了解のもと染色体検査も行います。これらの結果を踏まえて(特にIGF-Iが低値の場合)成長ホルモン分泌刺激試験を入院にて行うこととなります。成長曲線はインターネットでも簡単に手に入れることができます。背が低いのではと感じられた際にはぜひご確認ください。

思春期早発症

 性成熟徴候が早期に出現し、身長の伸びが加速する状態です。厚労省の診断の手引きによると男児では1)9歳未満で睾丸、陰茎、陰嚢などの明らかな発育が起こる。2)10歳未満で陰毛発生を見る。3)11歳未満で腋毛、ひげの発生や声変わりを見る。女児では1)7 歳6ヶ月未満で乳房発育が起こる。2)8歳未満で陰毛発生、または小陰唇色素沈着などの外陰部早熟、あるいは腋毛発生が起こる。3)10歳6ヶ月未満で初経を見る、とされています。男児に比べて女児に多く、女児では特に原因が特定されない特発性思春期早発症が大部分で、男児では女児に比べて何らかの原因がある場合が多いとされています。また、男児の思春期の最初の兆候である外性器の発育の判定は医療関係者以外では判定がむつかしく、見過ごされがちです。近年は学校健診で身長の伸びが加速していると指摘されたことを契機に紹介受診される方が増えています。特発性思春期早発症は4週おきの皮下注射で治療可能です。
これと、鑑別が必要な状態としては早発乳房があります。これは主に2歳までの女児に起こる、片側または両側の乳房発育で、数か月から数年で消退するものです。成長加速などの他の思春期徴候がなく、治療の必要がありませんが、一部の症例では思春期早発症に移行する場合もあり、経過観察が必要です。

糖尿病

 糖尿病は“インスリン作用の低下、もしくは欠如によって偏位した代謝状態で、高血糖によって特徴づけられる”と定義されますが、ここでは小児に多い1型糖尿病について述べます。1型糖尿病はインスリン分泌細胞である膵β細胞が破壊されることによって絶対的なインスリン不足から生じる糖尿病です。日本人には稀ですが、年少小児を含め、全年齢にわたって発症します。当科では、年少児の対応はもちろん、ケトアシドーシスで発症する急性症例に対しては24時間体制で対応しています。また、青年期には糖尿病内科とも連絡し、内科への移行を円滑にしています。治療の原則は頻回注射(Basal-Bolus療法 、4回注射法)ですが、年少児で自己注射のできない患児には学校などで昼の注射の不要な治療を行っています。また、最近、普及が目覚ましい持続インスリン皮下注射(CSII)や持続血糖測定と連動した持続インスリン皮下注射療法(SAP)も、県内では最も早くより導入しており、患児・家族のライフスタイルに合わせた治療を目指しています。

アレルギー疾患

 小児のおもなアレルギー疾患であるアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症などの診断・治療を行なっております。近年アレルギーを持つ患者さんは非常に増加しており、今では日本人の1/2~1/3の方が、何かしらのアレルギーを持っていると言われています。アレルギー疾患は年齢によってその症状を変え、一般的には、アトピー性皮膚炎・食物アレルギー → 気管支喘息 → アレルギー性鼻炎・花粉症と進行していくことが多く、その進んでいく様子は「アレルギーマーチ」と呼ばれています。
日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会などによるガイドラインが作成・改訂され、診断・治療は日々進歩おり、早期から適切な治療を行なっていくことが、将来的なQOLの改善に繋がっていきます。
アレルギー専門外来は、火曜日・木曜日の午前と水曜日の午後に行なっております。
かかりつけの先生を通して紹介いただけると、今までの経過がよくわかりますので、よろしくお願いします。

食物アレルギー

 食物アレルギーの発症の大きな原因として、経皮感作(皮膚を通して、アレルギー物質が侵入すること)が注目されています。私たちの身体は、食事として腸から吸収されたものは「食べ物」と認識していますが、皮膚(アトピー性皮膚炎などの湿疹)から侵入した物質は「異物」と認識しており、湿疹が食物アレルギー発症・増悪の原因の一つと考えられてきています。なので、早期に皮膚の治療をしっかりした上で、安全なレベルの食品を少しずつ食べていくことが治療に繋がるとされています。
当院では、正確な診断や治療を進めていくために、血液検査でのアレルギー検査以外にも、実際に病院で食品を食べてみる「食物経口負荷試験」を行なっております。また、自然治癒が難しい重症例・難治例の方には、積極的に食べて治していく「緩徐経口免疫療法」も実施しております。いつでもご相談下さい。
また、原因食品を摂取してすぐに、蕁麻疹やアナフィラキシーを起こす即時型アレルギーと言われる一般的な食物アレルギー以外に、原因食品を摂取して数時間してから嘔吐を来す乳幼児消化管アレルギーという食物アレルギーも増加しています。食品摂取から症状出現までに時間が長いので、原因がわかりにくいことがあるので、注意が必要です。

アトピー性皮膚炎

 乳児湿疹が重症、もしくは難治(3カ月以上続く)な方は、アトピー性皮膚炎の可能性があります。治療には、適切なスキンケアとステロイドによる皮膚の炎症改善が必要です。早めに治癒して、最終的にステロイドの使用量を少なくするためには、適切な強さのステロイドを、適切な量・適切な期間使用していくことが大切になってきますので、当院では医師・看護師でスキンケアやステロイドの塗り方の指導を行なっております。
また、アトピー性皮膚炎の方は、食物アレルギーの発症リスクが高まります。特に鶏卵アレルギーが発症しやすいですが、アトピー性皮膚炎をしっかり治療した上で、アレルギー専門医の元で、生後半年くらいから少量の加熱鶏卵を食べることで、鶏卵アレルギーの発症を予防することが可能と言われており、当院でも積極的に実施しておりますので、ご相談下さい。

気管支喘息

 風邪を引いたり、運動したりした時に、喘鳴(ゼイゼイする呼吸)を繰り返す方は、気管支喘息の可能性があります。気管支喘息は、症状がない時も常に気道に炎症が起きている病気のため、定期的な治療が必要です。早期に治療を開始して、治療内容を適切に調整することで、寛解(症状がない状態) → 治癒(薬を中止しても症状がない状態)を目指していきます。気管支喘息は成人期になっても続いてしまう人がいますので、まずは小児期にしっかり診断し、治療していくことが重要です。
当科では、呼吸機能検査、呼気NO検査などの検査を組み合わせながら、治療計画を進めていきます。吸入治療に不慣れな子供でも適切に治療が行えるように、薬剤師による吸入指導も実施しております。また、吸入ステロイド治療ではコントロール不良な重症例に対する生物学的製剤の導入等も行なっております。

アレルギー性鼻炎・花粉症

 アレルギー性鼻炎・花粉症も増えています。最近では低年齢化も進んでおり、幼稚園児や小学生でも発症している方があります。
従来は鼻水や鼻詰まりなどの症状を緩和する対症療法が中心でしたが、近年では、根本的な治療に繋がる舌下免疫療法が小児期から出来るようになってきています。舌下免疫療法は、ダニ抗原やスギ抗原を含んだ舌下錠を、舌の下から吸収することで、ダニやスギ花粉に身体を慣らしていき、症状の改善をはかる治療です。当院でも積極的に実施しておりますので、いつでもご相談下さい。

循環器疾患

 小児のおもな循環器疾患は、先天性心疾患、不整脈、川崎病などです。令和3年度の診療実績は、循環器外来約500名であり、うち先天性心疾患及びその疑いは約100名(心室中隔欠損症37名、心房中隔欠損症21名、動脈管開存症7名、大動脈縮窄/離断1名、他)、不整脈及びその疑いは約25名、令和3年度発症の川崎病約50名です。
これらの疾患の診療以外にも、学校検診での二次検診の役割も担っています。心電図異常(不整脈、QT延長等)、心雑音など、学校で異常を指摘された場合にもご相談ください。カテーテル診断・治療、および外科的治療を要する症例は岡山大学小児科にご紹介させていただいております。
外来は金曜日に行っています。地域連携室を通じてご予約いただければ幸いです。

川崎病

 4歳以下の乳幼児に多い病気で、全身の血管に炎症をおこします。時に心臓の筋肉に栄養や酸素を送る冠動脈に瘤(コブ)ができるなどの合併症もみられます。そのため、早期発見と適切な治療が極めて大切です。現在のところ原因はわかっていません。症状としては、①発熱、②手のひら・足のうらが赤くなり、硬くはれる、③全身に赤い発疹が現れる・BCG痕が赤くなる、④眼球の結膜が赤くなる、⑤口唇・のど・舌が赤くなる、⑥首のリンパ節がはれる、以上6つの症状のうち、5つ以上見られた場合、川崎病であると診断します。全国で毎年10,000人以上の患者さんが発生しており、うち再発例は2~3%、同胞例は1~2%にみられます。川崎病に対する治療の最大目的は冠動脈瘤の発生予防です。免疫グロブリン療法とアスピリン療法を行います。初回免疫グロブリンに反応しない不応例が約10%認められ、これらは高率に冠動脈瘤が発生することが知られています。主要な症状がおさまり、血液検査の異常値もほぼ正常化し、合併症もない方は退院します(発症10日目~14日目ころ)。退院後は数か月アスピリンを内服し、必要に応じて定期的な診察と検査を受けます(冠動脈瘤などの合併症がなければ発症から約5年間)。予防接種のみ注意が必要になりますが、普通の生活ができます。

期外収縮

 心臓は1日に10万回あまりも規則的に収縮と拡張を繰り返していますが、時には何かの理由で次に来るべき周期よりも早く収縮が起きることがあります。これを期外収縮と呼んでいます。異常興奮の発生場所により、心房性、房室接合部性、心室性に分けられます。また、心房性と房室接合部性を合わせて上室性と呼ぶこともあります。高齢者では多いですが、若い年齢層でも50%に認められることが知られています。この期外収縮の多くは無害ですが、一部の重篤な心臓病に伴っている期外収縮の場合には致命的な不整脈に移行する危険性があります。心室性期外収縮は小児で最もよくみられる不整脈の一つであり、学校心臓検診では小学1年生0.38%、中学1年生0.66%、高校1年生0.86%に認められています。小児では無症状のことが多いですが、動悸、脈が跳ぶなどと訴える場合があります。心エコー検査で基礎疾患の有無を検索したり、運動負荷心電図や24時間ホルター心電図を行い、予後や治療の必要性などについて調べます。器質的疾患を認めない心室性期外収縮は一般に予後良好で、運動制限は必要なく、ホルター心電図で数年間経過観察した報告によると、心室性期外収縮がまったく消失するものも少なくありません。また悪化する例は少なく、一般的には予後良好といわれています。

新生児疾患

 新生児病棟はベッド10床、うちNICU(新生児集中治療室)3床となっています。当院では在胎28週以上37週未満の早産児、2500g未満の低出生体重児の管理を主に行っています。その他、呼吸障害、感染症、黄疸などを扱っています。令和3年の新生児病棟入院114例であり、そのうち出生体重2500g未満の児は45例で、17例がNICU管理となり、8例に人工呼吸器などの呼吸補助が必要でした。
また、産科と連携して、糖尿病や甲状腺疾患など母体合併症のある妊婦さんに対して出生後の処置や検査、授乳などについて、出生前に小児科医より説明を行い、不安軽減を図ります。

早産・低出生体重児

 様々な原因で早く生まれたり、小さく生まれたりした子は未熟性に伴う合併症がおこる可能性があります。必要に応じて点滴治療・人工換気などを行い、状態が落ち着き体重が十分に増えるまで経過をみます。

呼吸窮迫症候群(RDS)

 肺サーファクタント欠乏のためにおこる呼吸障害で、在胎34週未満の児など肺の未熟性に起因することがほとんどです。多呼吸、陥没呼吸、呻吟、チアノーゼなどの症状を呈します。治療としてはサーファクタントの投与、人工換気を行います。

未熟児動脈管開存症(PDA)

 胎児に存在し、本来なら出生後1~2日で機能的に閉鎖する動脈管が閉じずに残っている状態です。心不全、呼吸不全、肺出血、臓器血流低下による壊死性腸炎、腎不全などの合併症が起こることがあります。症候性PDAに対してはインドメタシン投与を行います。

黄疸(高ビリルビン血症)

 新生児は生理的に黄疸が認められますが、一定以上の強い黄疸があるとその原因物質であるビリルビンが脳にたまり神経症状をおこすことがあります。光線療法、交換輸血などを行い治療します。

付記:看護部より ~家族と育む新生児室・NICU~

当新生児室・NICUでは、「赤ちゃんの人権を守り、家族と赤ちゃんにとってやさしい医療・看護を提供する」をモットーとしています。産科・小児科と協力し、生まれてくる全ての小さな命を守っています。

産前訪問

当院入院中で早産などの心配のある妊婦さんに対して、産前にNICUのスタッフが訪問し、産後の赤ちゃんの予定やNICU内の様子を写真などを使い説明し、安心して出産を迎えられるようにしています。

分娩の立ち合い

自然分娩や帝王切開にNICUスタッフが立ち会い、緊急時の対応に備えます。

カンガルーケア

赤ちゃんと両親の肌を直接つけての抱っこをカンガルーケアと呼んでいます。小さく生まれた赤ちゃんも、集中治療が終わり状態が落ち着いた頃から行います。
呼吸が規則的になる、赤ちゃんの眠りが深くなり、起きているときも穏やかになる、感染症の危険が減少する、母乳保育がすすむ、親子関係の確立などのメリットが報告されています。呼吸や体温などに注意しながら行っています。

交換ノート

赤ちゃんの日々の成長の様子を写真や説明用紙でお知らせし、御家族からのコメントなどの記入ができる交換ノートを1人1人の赤ちゃんに作っています。

ならし保育

長期入院をした赤ちゃんが退院する前に、親子で過ごしてもらう、ならし保育をしています。

面会

NICU入院中の赤ちゃんの面会は原則として、両親・祖父母となります。それ以外の方は窓越し面会となります。

救急疾患

 当院は救命救急センターであり、小児の救急疾患には小児科医が24時間365日体制で対応しております。平成29年度から令和元年度の当院の小児科救急外来受診者数は平均6,900名ですが、このうち入院した患者数は平均890名で、入院率は12.9%でした。令和2年度には小児科救急外来受診者数、入院した患者数はそれぞれ3,244人、402人と、ともに激減しました。これは新型コロナウイルス感染症が蔓延し、マスク着用や手洗いの励行などで、新型コロナウイルス感染症以外の感染症が全般的に減少したことや救急外来への受診控えが生じたことなどが原因として推察されます。令和3年度には小児科救急外来受診者数、入院した患者数はそれぞれ5,322人、524人と、ともに増加に転じましたが、入院が必要な中等症以上の患児は多くなく、入院率はむしろ減少しています。令和2、3年度の実績は、マスク着用や手洗いの励行などにより、感染症がある程度は制御できることが実証されたような結果です。これからも無理のない範囲での継続が望まれます。
 また、時間外は小児科医1名で対応しておりますので、ご紹介の際にはご一報いただければ幸いです。

当院小児科救急外来受診者数と入院した患者数の推移

腸重積

 口側腸管が肛側腸管に陥入し、通過障害と腸管血流障害をきたします。このまま整復されないと、穿孔をきたします。腹痛、嘔吐、血便を3主徴としますが、顔色や機嫌も参考になります。生後4か月頃から1歳半頃が最も多く、原因不明なものが殆どです。3歳以上では他の原因疾患の存在も疑い追加検査を行う場合もあります。
診断は超音波をはじめとする画像検査を行います。治療は、穿孔リスクの低い場合は、レントゲン透視下で肛門から造影剤を送り込こんで重積している腸を押し戻し整復します。整復困難な例や穿孔リスクの高い例は、小児外科のある施設へ紹介します。再発する場合もありますので、整復後も1~2日ほど入院して観察します。

クループ症候群

 喉頭付近が腫れ、呼吸困難になった状態がクループ症候群です。アレルギーなどの体質で反復する人もいますが、ウイルス感染に伴う一過性のケースが殆どです。咳の様子が犬吠様咳嗽という犬の吠える声やオットセイの鳴き声に例えられ、響くような低い声の咳が特徴です。喉頭の腫れが進行すると吸気性喘鳴を来たし、呼吸困難につながります。
幼児期によくみられ、声帯直下の炎症が多く、クループ性気管支炎、急性喉頭気管気管支炎とも呼ばれます。エピネフリン吸入で腫れを抑え、ステロイド剤でより長く炎症を抑えることで症状をコントロールします。吸気時喘鳴や嗄声、呼吸困難感が目立つ場合は入院治療とします。感染の原因病原体はパラインフルエンザをはじめとするウイルスが多いとされています。
喉頭蓋腫脹による急性喉頭蓋炎はより重症で、罹患する平均年齢は前記のものより高く、嗄声は伴わない場合もみられます。感染もインフルエンザ桿菌b型(Hib)によるものが多く、血液検査も参考になります。レントゲンにより診断をつけ、入院し、全身麻酔下で気管内挿管し、抗生剤を投与します。Hibワクチン予防接種の浸透により、発症率が低下しています。

付記:発熱について

 発熱は、大半が感染症によります。主な感染をおこす部位と発熱以外の主な症状は、①呼吸器系(咳や鼻水)②消化管系(嘔吐や下痢)③腎尿路系(小児では訴えがないことが多い)です。病原体は、特に①②では、ウイルスがほとんどです。基本的には対症療法が主となるため、発熱初日では他に症状が強くなければ夜間に受診する必要はありません。ただし、低月齢の患児や、重症感があればいつでも受診してください。受診を迷う場合は小児救急医療電話相談(#8000)を活用ください。新型コロナウイルス感染症については、小児では重症化することは少なく、こちらも症状が強くなければ日中にご相談いただければ幸いです。

4.医師紹介

医師のご紹介

外来診察表