1.診療科について

主な診療内容

診療スタッフ

当呼吸器内科は、種々の呼吸器疾患、肺腫瘍、呼吸器救急疾患などに幅広く対応し、患者さんに納得していただきながら質の高い 呼吸器医療を受けて頂くことを目標としております。
また、医療の質を高めるためにはチーム医療が非常に重要です。そのため、医師・看護師・薬剤師・理学療法士・MSW・ 栄養士などがチームを組んで診療にあたっております。

医師のご紹介

外来診察表

診療体制

 平日午前は、月曜日から金曜日までの毎日、内科一般外来と呼吸器内科専門外来を担当しています。午後には専門外来として「喘息外来」(木曜日)、「禁煙外来」(金曜日)、「HIV外来」(月曜日)も行っています。
救急外来患者さんに対しては、平日の夜間、土、日曜日、祝祭日診療または連絡により診療できる体制を引いています。転院相談やセカンドオピニオンなどにも随時対応しております。

診療の特徴と施設認定

 肺癌や胸膜中皮腫などの悪性疾患、気管支喘息や間質性肺炎、近年注目されている慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性呼吸不全、睡眠時無呼吸症候群、呼吸器感染症など呼吸器内科全般について、広く平均水準以上の医療を提供しています。また、HIV診療も行っています。
特に肺癌を中心とした悪性腫瘍の化学療法・内科的治療、気管支鏡検査、EWSを用いた気管支充填術を用いた気胸診療等に強みを持っています。
下記学会の認定施設でもあり、呼吸器診療に携わる医師の人材育成にも力を入れています。

  • 日本呼吸器学会 認定施設
  • 日本呼吸器内視鏡学会 認定施設
  • 日本がん治療医認定機構 認定研修施設
  • 日本臨床腫瘍学会 認定研修施設

レジデントおよび医師の募集

現在、呼吸器内科シニアレジデント1~2名、常勤医師1名を募集しております。当院呼吸器内科での仕事・研修などに興味をお持ちの先生はお気軽にご連絡下さい。心から歓迎致します。

e-mail:
TEL:086-222-8811
FAX:086-222-8841

研修・見学体制

卒後の前期、後期の臨床研修のみならず、呼吸器内科診療、呼吸器内視鏡などの見学、研修などの要望に積極的に応じております。御遠慮なくご連絡下さい。

e-mail:
TEL:086-222-8811
FAX:086-222-8841

2.主な疾患と治療法

3.実績

診療疾患の概要

呼吸器内科領域のすべての疾患を診療対象としています。呼吸器外科や放射線科などの関係他科とも協力し、よりよい診断・治療を目指しています。

主な悪性疾患

  1. 肺癌:後述しますが、当科の入院患者さんの半数以上が肺癌です。遺伝子検査を含めた正確な組織診断と、エビデンスに基づいた質の高い治療を行っています。
  2. 悪性胸膜中皮腫:胸膜疾患、アスベスト関連疾患と合わせ診断、治療しています。
  3. その他:転移性腫瘍その他の、呼吸器領域の腫瘍の診療も行っています。

主な良性疾患

  1. 気管支喘息:ガイドラインに沿った診療を行っています。当院は救命救急センター機能をもった救急病院で、重篤な喘息発作にも24時間対応しています。
  2. 慢性閉塞性肺疾患(COPD):喫煙に関連した肺気腫、慢性気管支炎の診療を行っています。禁煙外来も担当しています。
  3. 間質性肺炎:特発性間質性肺炎から薬剤性肺炎、膠原病に伴う間質性肺炎等、広く診療しています。
  4. 呼吸不全:急性呼吸不全はICUの先生方とも連携をとりつつ、挿管人工呼吸および非侵襲的換気療法(NPPV)を行っています。慢性呼吸不全は、呼吸器リハビリ、在宅酸素療法、在宅でのNPPVを行っています。
  5. 睡眠時無呼吸症候群:睡眠障害国際分類のなかの、睡眠関連呼吸障害として中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)および閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、そしてチェーン・ストークス呼吸の治療を行っています。ポリソムノグラフィーでの精査、CPAPやASVでの治療等行っています。
  6. アレルギー性疾患:アレルギー気管支肺アスペルギルス症(ABPA),好酸球性肺炎、チャーグ・ストラウス症候群、食物アレルギー(アナフィラキシー)などの診療、ヒト化抗ヒトIgEモノクロナール抗体製剤での喘息治療などを行っています。
  7. 気胸:後述しますが、当院気胸センターの構成員として、続発性自然気胸に対して胸腔ドレナージ、胸膜癒着術、EWSを用いた気管支充填術(気管支廔孔閉鎖術)などで治療を行っています。
  8. その他:サルコイドーシス、ウェージェナー肉芽腫症など、特定疾患・難病の診断・治療を行っています。

感染症

  1. 細菌感染症:気管支炎、肺炎、肺膿瘍、膿胸といった細菌性呼吸器感染症の診断・治療を行っています。
  2. 抗酸菌感染症(排菌性結核を除く):結核性胸膜炎等の排菌のない結核症の治療、MAC症などの非結核性抗酸菌症の診断・治療を行っています。
  3. 真菌感染症:アスペルギルス症、クリプトコッカス症その他の肺真菌症の診断治療を行っています。
  4. HIV感染症:当院はエイズ治療拠点病院で、当科にてHIV専門外来を担当し、診断・治療を行っています。
  5. その他

検査について

呼吸器疾患に関連した検査

  1. 検体検査:血液検査、尿検査、細菌検査、病理検査など
  2. 生理検査:呼吸機能検査・肺年齢、肺拡散能(DLco)、ポリソムノグラフィー(PSG)など
  3. 気管支鏡検査:後述しますが、当院では麻酔の深さをみるBISモニター、低酸素血症が高度の場合につかう酸素供給装置ネーザルハイフローシステム、病理検体の良・悪性を判断する迅速細胞診等により、安全で正確な気管支鏡検査を行っています。
  4. 画像検査:レントゲン、CT、MRI、シンチグラム、胸腔造影検査その他の画像検査を放射線科と協力のもと行っています。

当院呼吸器内科の特徴(平成26年7月)

「肺癌診療」「気胸診療」「気管支鏡検査」の3点について紹介します。

肺癌診療

気管支鏡による肺癌の診断

 当院では、気管支鏡による肺癌の診断を積極的に行っています.
肺末梢の小型肺癌に対しては、細径気管支鏡を用いてより末梢まで気管支を選択すること、透視で病変に到達したかどうかの判断が困難な病変(小さい病変、淡い陰影の病変、他の陰影に隠れる病変、など)に対してガイドシースを用いた気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)を用いることで、診断率の向上に努めています。
末梢肺病変からの検体採取が困難な場合は、超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)も行っています。
また、抗癌剤や分子標的薬といった化学療法が選択される進行肺癌では、治療薬の選択のために組織型や遺伝子の検索が必須と考えられるようになっており、気管支鏡での組織採取による組織学的診断を徹底しています。

肺癌の治療

 肺癌の病期診断ののちに最適な治療法を示し、手術療法、放射線療法が適切な場合は呼吸器外科や放射線科へ紹介いたします。
内科的治療方針に関しては、エビデンスに基づき、さらに個々の患者に合わせた最適な治療を当科で行っており、さらに、胸部腫瘍研究機構(TORG; http://www.torg.or.jp/ )、西日本がん研究機構(WJOG; http://www.wjog.org/ )、岡山肺癌治療研究グループ(OLCSG; http://kawasaki-gim4.main.jp/olcsg-protocol/ )、瀬戸内肺癌研究会(SLCG) 等の複数の臨床研究グループに所属し、新しい内科的治療(抗癌剤や放射線)の開発などの臨床試験に積極的に携わっています。
また、入院で化学療法を導入した後は、積極的な外来治療を外来化学療法室継続しています。
治療中に、緩和ケア科にコンサルトし、平行して症状の緩和をお願いしたり、リハビリテーション科へコンサルトし、体力の維持、増進に努めるようにしています。

当院呼吸器内科における肺癌入院患者のべ数

気胸診療(EWSを用いた気管支充填術を含む)について

気胸について

 「気胸」とは何らかの原因で肺の表面を覆っている胸膜に穴があき、肺から空気が漏れることによって肺がしぼんだ状態のことを言います。気胸は自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸に大別され、その中で自然気胸は原発性自然気胸と続発性自然気胸に分類されます。原発性自然気胸は肺に基礎疾患のない人に生じる気胸で、若年で痩せ型の男性に多いとされています。一方で続発性自然気胸は慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎など、肺に基礎疾患を有する人に生じる気胸で比較的高齢者の男性に多いとされています(図1,2)。当院においては原発性自然気胸、外傷性気胸については呼吸器外科が主に診療を行っており、当科では主に続発性自然気胸に対する診療を行っております(図3)。
続発性自然気胸は胸腔ドレナージなどの適切な初期治療を行ってもエアリーク(肺の空気漏れ)が持続する場合が多く、高齢者に多いこと、肺の基礎疾患のために低肺機能である場合が多いこと等から手術適応となりにくいため、治療手段が限られておりしばしば難治性です。

当科における自然気胸(入院症例)(2003年1月~2012年12月)
図1

当科における気胸ののべ入院症例数の推移
図2

発性自然気胸に対する内科的治療

 初期治療としては肺の虚脱度に応じて軽度であれば安静で経過観察、中等度または高度であれば一時脱気あるいは胸腔ドレナージが行われますが、続発性自然気胸の場合は中等度の虚脱でも呼吸状態の悪化を来しやすいため胸腔ドレナージが選択されることが多いようです。胸腔ドレナージのみでもエアリークが消失し胸腔ドレーンが抜去可能となる場合もありますが、エアリークが消失しない場合にはリークを止めるための追加治療が必要となります。手術困難、あるいは手術を回避したい患者さんの場合、まずは保存的治療(内科的治療)を行います。当科では適切な胸腔ドレナージを行ったにもかかわらず、一定期間(数日から1週間以上)エアリークが持続し、肺の充分な拡張が得られない場合には「シリコン製気管支充填材EWS(図3)」を用いた気管支充填術を行っております。この治療は当院の故・渡辺洋一医師(前呼吸器内科部長・前副院長)によって開発された医療器具/医療技術であり、全身麻酔下の外科手術に耐えきれないような全身状態・呼吸状態不良の患者さんにとっても負担が少なく治療できるのが利点です。難治症例に対してはこの「EWSを用いた気管支充填術」を中心に、胸膜癒着療法や血液凝固第XIII因子製剤等の他の保存的治療法を組み合わせて集学的な治療を試みております。

シリコン製気管支充填材EWS
図3:A: EWS, B: FG-14Pで把持したEWS, C: 亜区域支へのEWS充填

気管支鏡検査

患者の安全と苦痛軽減の工夫

血圧、脈拍数、酸素飽和度のモニタリング
BISモニタによるモニタリング

 BISモニタとは、前額部に貼付した4つの電極から得られた2チャンネルの脳波をもとにリアルタイムに覚醒度を0~100に数値化しモニタリングができる機器です。
検査中の患者の苦痛を和らげるための鎮静剤の使用時に、BISモニタを用い至適な鎮静レベルを確認するとともに、過鎮静にならないように安全性の観察も行っています。

BISモニタによるモニタリング

ネーザルハイフローの使用

 ネーザルハイフローとは、鼻カニューラから酸素と空気をブレンドしたものを加湿・加温し最大30~50L/minの流量を流すことができるシステムです。死腔をwash outでき、少量のpositive airway pressureもかかります。
当院では、PaO2 70Torr以下の低酸素血症の患者では、検査中に低酸素血症に陥らず安全に気管支鏡検査を行えるように、ネーザルハイフローを用いて気管支鏡検査を行っています。

ネーザルハイフローの使用

迅速細胞診

 従来、気管支鏡による組織採取においては、病変部位から確実に組織採取を行うことができ、診断に必要十分な検体量が採取できたかを検査中に知ることは困難でした。最終診断の結果にて検体が不十分であったために再度検査を行うことは、診断の遅れ、患者の負担増加につながります。当院では、診断に十分な検体が採取できたかどうかを確認するために気管支鏡検査の最中に病理部の協力のもと隣室で迅速細胞診(Diff-Quik染色、迅速Shorr染色)を行っています。その結果をフィードバックしてもらいながら、気管支の枝を変えたり、採取方法を変えたりしながら、一回の気管支鏡検査で最大限の検体採取を行っています。ただし最終診断は、従来のPapanicolaou染色やHE染色、免疫染色によります。

Diff-Quik染色

Diff-Quik染色

迅速Shorr染色

迅速Shorr染色

Papanicolaou染色

Papanicolaou染色

当院で導入している検査手段

細径気管支鏡

通常径が6mm弱であるのに対して細径気管支鏡は4mmと細いため、より末梢の気管支まで選択し、挿入することができるようになりました。

ガイドシースを用いた気管支腔内超音波断層法(EBUS-GS)

超音波プローブの周りにガイドシース(guide sheath: GS)をかぶせたものを、気管支鏡の鉗子孔から挿入し、末梢病変まですすめ、超音波プローブの周りに病変を描出したところでガイドシースは残したまま超音波プローブのみを引き抜き、ガイドシース内に専用の鉗子、ブラシを挿入し、末梢病変から検体を採取する方法です。透視では病変の確認が困難な症例(病変が小さい、もしくは淡い、病変が他の陰影に重なっている、など)では有用です。また透視で病変に到達したと思われても診断がつかないことも経験してきましたが、気管支腔内超音波断層法を用いることによって病変の中に入っている気管支を選択し確実に検体を採取することができます。一度病変に到達すれば、同じ部位から何回も検体を採取できる利点もあります。

超音波ガイド下針生検(EBUS-TBNA)

気管支鏡では直視できない気管支壁外病変に対し、従来からTBNAは行われてきましたが、超音波気管支鏡ガイド下でリアルタイムに病変を確認しながら縦隔、肺門のリンパ節や中枢気管支に接した腫瘤性病変を穿刺することができるようになりました。

気管支鏡施行症例数

シリコン製気管支充填剤EWSについて

 当院では年間約10~15症例に対しEWSを用いた気管支充填術を実施しており、 2000年4月より2013年9月までの期間に132症例の実施経験があります。見学についても積極的に応じておりますので下記までご連絡ください。
連絡先:

当科におけるEWS実施症例数の年次的推移(2003年1月~2013年9月)