1.診療科について

当乳腺外科の紹介

私たちは、患者さんの味方です。

当乳腺外科は,種々の乳腺疾患(乳癌,良性疾患など)に幅広く対応し,患者さんに納得してもらいながら質の高い医療を受けていただくことを目標としております。そのため,医師,看護師,薬剤師,理学療法士,ソーシャルワーカー,などがチームを組んで診療にあたっております。
患者さんのQOLを考慮したわかりやすい治療(手術、薬物療法、放射線療法)を心がけ、 年間約100例の乳腺手術、30例の甲状腺手術を行っています。乳腺外来を毎週火・木の午後に開いています。

診療スタッフ

辻 尚志 院長
吉富 誠二 乳腺・内分泌外科部長
原 享子 乳腺・内分泌外科副部長
岡本 みどり 外来化学療法室看護師
長谷川 亜樹 緩和ケアチーム
遠藤 昌子 がん性疼痛看護認定看護師
山田 彩華 がん看護専門看護師
林 雅子 乳腺担当病棟看護師
都能 美絵 乳腺担当病棟看護師
笠原 なつみ 薬剤師

診療体制

毎週火・木の午後(13:30~17:00)に乳腺外来を行っています。
それ以外にも火・水・木の午前中の一般外来でも辻・吉富・原が乳腺 疾患に対応しています。

乳腺センター

当院では、主として放射線診断科、放射線治療科、病理診断科、形成外科、緩和ケア科、認定看護部門などと緊密に連携し、より正確な診断、より高度な治療を行うために乳腺センターを開設しています。
>>詳細はこちら

お乳のしこり検診

あれっ?お乳にしこり!?と思ったら、ひとまずお電話ください。
なるべく早く診察ができるように診察予約を取ります。

診察受付:外来受付(1-1) TEL:086-222-8811(内線21101) まで。
電話受付:13:00~16:00

遺伝カウンセリング外来

診療内容:遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)に関する遺伝カウンセリングを、自由診療で行います。
診療日時:水曜日 午前(完全予約制)
担当医:吉富誠二(乳腺・内分泌外科)

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)とは

  乳がんや卵巣がんの5-10%は、遺伝的な要因が強く関与して発症していると考えられています。その中で最も多くの割合を占めるのが、HBOCです。HBOCは、BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子の生殖細胞系列の病的な変異が原因で乳がんや卵巣がんを高いリスクで発症する遺伝性腫瘍の1つです。一般の方が、乳がんに生涯罹患する可能性は約9%ですが、HBOCの方では40~90%といわれています。
  HBOCを臨床所見から確定診断することはできませんが、乳がんの若年発症や、両方の乳房にがんを発症する、片方の乳房に複数回がんを発症する、乳がんだけでなく卵巣がんも発症するなどが、HBOCを疑うべき臨床的な特徴です。また、複数の乳がんや卵巣がんの家族歴が見られることもHBOCを疑う特徴となります。
  HBOCは親から子へ、性別に関係なく50%(1/2)の確率で受け継がれます。乳がんを発症し、遺伝子検査でHBOCと診断された場合には、手術術式および術後検査などに十分に配慮することで、より有効な治療や術後フォローアップを受けることが可能となります。また、BRCA1/2遺伝子の病的変異を持つ家系で、乳がん、卵巣がんを、まだ発症していない家族に遺伝子検査をすることで、効果的な対策を立てることができます。

遺伝カウンセリングについて

  当科で乳がんの治療を始める方のなかで、HBOCの可能性がある方には、遺伝カウンセリング外来の受診を勧めています。
  実際の遺伝カウンセリングでは、まず家族や親族の中に乳がんや卵巣がんの方がいるかなどを聞いて、家系図を作成します。この情報をもとにして、HBOCが疑われるかどうかを評価します。患者さんや家族の状況を聞いて、医学的情報を分かりやすく説明します。カウンセリングの結果、検査希望者には遺伝子検査を実施します。個人情報の管理は徹底しており、プライバシーには十分に配慮しています。遺伝子検査を受けた場合は、その結果を再度カウンセリングで説明し、今後のがん発症のリスクや必要な検査、予防法について詳しい情報を伝えます。
  また、HBOCと診断された方の家族や親族のなかで、希望者には遺伝カウンセリングを行い、遺伝子検査を実施することもできます。

遺伝カウンセリングの申込みについて

  遺伝カウンセリング外来は、完全予約制となっています。ご希望の方は、下記連絡先までご連絡ください。担当医師と調整のうえ、日時をお決めします。

外科外来受付  TEL:086-222-8811(内線21987)まで。
電話受付:13:00~17:00
※お電話で、「遺伝カウンセリングについての相談」とお伝えください。担当の者が対応いたします。

遺伝カウンセリング、遺伝子検査の料金について

遺伝カウンセリング料 (税込)
初回 11,000円
2回目以降  3,300円

※上記のカウンセリング料には、初診料または再診料を含む。

遺伝子検査料 (税込)
HBOCスクリーニング 220,000円
クイックHBOC 253,000円
HBOCシングルサイト 38,500円

診療の特徴と施設認定

基本的にはガイドラインに基づいた診療を行っていますが、必ずしもガイドラインにとらわれず患者さんの状況・事情に応じて一緒に考え相談し,診断・治療を行っています。

■施設認定

  • 日本乳癌学会認定施設
  • 日本外科学会認定施設
  • インプラント実施施設
  • エキスパンダー実施施設
  • 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会認定施設

乳癌についての雑・相 勉強会(年4回)

次回開催日 令和5年1月28日(土) 14:00~17:00
3か月ごとに実施予定 (16:00~ 患者さん同士の雑談会)
会場 当院南館(新館)2階 会議室2.3
  お茶でも飲みながら、気楽に雑談してみませんか?どうぞお気軽にお集まりください。
どなたでも参加自由です。(隅っこで黙って聞いているだけでもOKです。)
問合せ先:外科外来 受付 TEL:086-222-8811(内線21987)
スタッフ 外科 辻 尚志,吉富 誠二,原 享子, 看護師,他

ご案内

2.主な疾患と治療法

乳がん

乳がんと女性ホルモン(エストロゲン)

エストロゲンは乳腺細胞の増殖を促進して、細胞が発がん物質の影響を受けやすい状態をつくります。また、がん化した細胞が発育するためにはエストロゲンが必要です。
大部分の状況においてはエストロゲンは女性にとって非常に大切なホルモンですが、こと乳がんという病気においてはエストロゲンは乳がんの味方をします。

乳がんの増加とリスクファクター

患者さんの数:1960年代に比べて1990年代は約3倍に増加しています。

人口10万人あたり20~30人(欧米諸国に比べると1/3~1/4の頻度)

原因:女性を取り巻く環境の変化・・・生活の欧米化

高カロリー・高脂肪の食生活
初潮の低年齢化
晩婚あるいは結婚しない
少産・子どもを生まない女性の増加)

食事と健康

好き嫌い無くバランス良く何でも食べることが健康の秘訣です。
ただし全体のカロリーに注意して食べ過ぎで太らないようにしましょう。
健康食品や、健康によいと言われているものを偏って食べるのが最も健康に悪いようです。

リスクファクター(危険因子)

ある疾患に罹りやすい要因。
またはある疾患の罹り易さに影響していると思われる因子。

乳がんのリスクファクター

未婚・未産、初産年齢30歳以上、初潮年齢11才以下、閉経年齢55歳以上、肥満、乳がんの家族歴、反対側の乳房に乳がんの既往。
(リスクファクターがあると全員乳がんに罹るわけではありません。他の人よりわずかに罹患率が高くなる程度です。自己検診をしっかり行い、定期検診をきちん と受けましょう。)

乳がんの症状

しこりとして発見されることが大部分ですが、時として乳頭からの異常分泌や乳頭のただれ、乳房のくぼみなどで発見されることもあります。 基本的には痛みはありませんが、たまたま痛みがきっかけで発見されることもあります。

乳がんの診断

視触診と乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査を行い、疑いのつよい場合には針による細胞検査(穿刺細胞診)を行います。

治療

手術

胸筋温存乳房切除術(胸の筋肉は切除せず、乳房とわきのリンパ節を切除)
乳房温存手術(乳房は残してがんの周囲を広く切除し、わきのリンパ節を切除)

  • 当院では年間約80例の乳がん手術が行われており、そのうち胸筋温存乳房切除術が約30例、乳房温存手術が約50例です。温存手術の場合、必要があれば、または患者さんの希望があれば乳房内の再発率の低下を目的として、温存した乳房に放射線治療を加えています。
    またなるべく小さい傷で温存手術を施行するために、内視鏡手術も始めています。
  • 上記2つの手術がほとんどですが、早期の場合はわきのリンパ節は切除しないこともあります。また手術のときに代表的なリンパ節を調べてリンパ節転移の有無を手術中に判断する方法も行っています(センチネルリンパ節生検)。転移がないと判断した場合にはわきのリンパ節は切除しませんので術後のリハビリは必要なく、また腕のしびれやむくみの心配もありません。センチネルリンパ節生検の正診率 は90~95%です。

放射線治療

昔は手術で切除したあとにさらに放射線をあてていたため腕のむくみが頻発していましたが、現在では必ずしも必要でないことが判明しています。 今は、手術で切除しきれていない場所や切除していない場所(残存乳房・切除してい ないわきのリンパ節など)に必要な場合のみあてていますので、むくみなどの副作用はすくなくなっています。

抗がん剤・ホルモン療法

乳がんは抗がん剤が比較的効きやすい疾患です。
ホルモン感受性のある乳がんにはホルモン療法が有効です。
手術後に抗がん剤やホルモン療法を加えることによって再発率を低 下させることが可能となります(術後補助療法)。
※抗がん剤の治療は外来に月に1~2度通院していただき、設備を整えた専用の治療室で実施しています。

乳がんの手術をうけたら

再発予防のために必要な場合は薬の治療を続けます。
定期検診をちゃんと受けて再発は早く見つけるようにしましょう( 自己検診も必要です)。
必要以上に生活の制限はありません。
ただし手術を受けた方の腕は

  • 点滴はなるべくしないようにし、採血や血圧測定もやむを得ない場合以外は控えましょう。
  • けがをしたらちゃんと消毒をして清潔に保ちましょう。
  • 草むしり、土いじりなどはなるべく手袋をして手術側の手を保護しましょう。
  • 赤くなるほどの日焼けはしないようにしましょう。
  • 手術側での子どものだっこは短時間にしましょう。

肩関節のリハビリをしっかりしましょう。
「無理せず、休まず、少しずつ」
ゴルフ・テニス・水泳なども1~2ヶ月後からはOKです。
クヨクヨせずに前向きに生きましょう。
「再発を心配して家にこもっているよりは、できるだけ以前と同じ ように積極的に生活する」ことが大切です。

甲状腺がん

甲状腺がんはそのほとんどが分化がんであり、がんの中で最もおとなしく、悪性度の低いがんです。それゆえに甲状腺がんと診断されても恐れることはありません。適切な治療、管理を受けることによって命を縮めることなく日常生活を普通に送ることが可能です。以下に甲状腺がんの種類や診断、治療について紹介します。

甲状腺がんの種類

乳頭がん

甲状腺がんの約85~90%が乳頭がんです。分化がんであり、悪性度の低いがんです。頚部のリンパ節に転移することが多く、手術の際、甲状腺の腫瘍を取り除くだけでなく、頚部のリンパ節も切除します。ただ、がんの進行が遅いことが多く、最初にリンパ節を切除しなくても定期的に診察し、リンパ節が腫れて転移が明らかになった時点でそのリンパ節を切除することでも手遅れにならず治すことができると考えられています。

濾胞がん

甲状腺がんの約10%が濾胞がんです。乳頭がんと同様に分化がんであり、悪性度の低いがんです。頚部のリンパ節に転移することは比較的少なく、そのかわりに乳頭がんより他臓器(肺など)に転移する確率が高いです。手術前に診断することが比較的難しく、手術後、病理検査(顕微鏡検査)で濾胞がんと診断されることもあります。

髄様がん

甲状腺がんの約1~2%で稀ながんです。その約1/3は遺伝性で副腎や副甲状腺などに病変を伴うことがあり、今後は遺伝子診断が重要になると考えられています。遺伝性の髄様がんでは原則的には甲状腺全摘(甲状腺をすべて切除)と頚部リンパ節切除が必要になります。

未分化がん

甲状腺がんの約1%で非常に稀ではあるが、他の甲状腺がんと異なり極めて悪性度が高く、手術、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて治療を行うが、治すことがとても難しいがんです。

甲状腺がんの診断と治療

診断

甲状腺がんの診断には超音波検査が役に立ちます。超音波検査は無侵襲で手軽に繰り返し行うことができ、主に甲状腺がんの大きさ、甲状腺外への浸潤の有無、リンパ節転移の有無などを調べることができます。その他の検査としてはCT、MRI、核医学検査などがあり、必要に応じて超音波検査と組み合わせて行います。以上の画像診断で甲状腺がんが疑われる場合には、次に細胞診を行います。これは細い針を皮膚の上から腫瘍まで刺して細胞を吸引採取する方法です。これによって甲状腺がんの診断を行いますが、分化がんでは良性、悪性の鑑別が難しい場合もあり、特に濾胞がんでは手術前に診断することができないこともあります。

治療

甲状腺がんの治療は一部の未分化がん以外では外科手術が有効です。甲状腺全摘(甲状腺をすべて切除)と頚部リンパ節切除を行う手術方法から甲状腺部分切除(がんを含む甲状腺を部分的に切除)のみを行う手術方法まであり、がんの種類、大きさ、個数、リンパ節転移の有無、他臓器への転移の有無などから適切な手術を選んで行います。すなわち、がんが小さく、リンパ節や他臓器に転移を認めないものは部分切除を行い、がんが甲状腺全体に拡がっていたり、他臓器に転移している場合には全摘を行い、手術後の放射性ヨード治療ができるようにするなどです。また近年、がんの大きさが1cm以下の甲状腺がん(微小がんと呼びます)は性質がおとなしく、生涯にわたりがんの進行がほとんど見られない場合もあり、手術を行わず、経過を定期的にみることもあります。

最後に

今回紹介しましたように、甲状腺がんの約97%は分化がんであり、低悪性で最も治ることが期待できるがんです。とはいっても適切な治療、管理があってはじめて可能になりますので、自分だけで判断せずに外来受診して下さい。