何の薬か知る

何のくすり?

医師はあなたの病気の症状や原因によって、薬を処方します。 自分の薬が何のために出ているのかが分からないと飲み違えたり、副作用と病気 そのものの症状とを勘違いして、不要な心配をすることにもなりかねません。

処方された薬が何のために必要なのか、確かめておくことはとても大切です。 分からないときは、遠慮なく主治医や薬剤師にたずねる習慣をつけましょう。

薬はその人だけのものです

症状や病状は、一見同じように思っても一人一人で微妙に違います。
自分に良く効くからといって他の人にあげたりもらったりしないようにして下さい。

情報を下さい

医師があなたに薬を出す場合、あなたの症状やこれまでの病気の経過や体質、 何か他に合併した病気はないかどうか等を確かめた上で、最も適切な薬を選びます。 そのためには、患者さんの方からも、積極的に大事な情報を医師に伝える必要があります。
次に述べるような事柄は特に大切ですから、もしあなたに当てはまるようなことがあれば、 診察を受けるときに医師に伝えて下さい。

アレルギーはありませんか?

これまでに使った薬で、ジンマシンや発疹が出たり、何か副作用らしい症状がでたことはありませんでしたか。 その薬は何の薬でしたか? 名前は憶えていますか? その他、食べ物や化粧品、植物などで、ジンマシンや発疹、喘息や花粉症などを起こしたことはありませんか?

他に病気は?

病気によっては、薬が効き過ぎて副作用が起こりやすくなったり、もとの病気が悪化する場合があります。 重い肝臓病や腎臓病、心臓病、喘息(中でも、解熱鎮痛剤によってひどくなる喘息は注意)、 胃・十二指腸潰瘍、緑内障、前立腺肥大、ケイレンのある人あるいは、以前にこのような病気があると診断された人は、 特にご注意下さい。

常用している薬や薬局で買った薬、民間薬、健康食品は使っていませんか?

薬の中には、飲み合わせ(相互作用)によって薬が効きすぎたり、効かなくなったりする組合せがあります。 そのような相互作用をよく起こす薬はいろいろですが、重大な相互作用を起こすものは比較的限られています。

薬が効きすぎて重大な副作用を生じるものとしては

ワルファリン(血液を固まりにくくする薬)…出血する
テオフィリン(喘息の薬)…ケイレン、不整脈
キノロン系抗菌薬…ケイレン
テルフェナジン(眠気の少ない抗ヒスタミン薬)…不整脈
抗不整脈薬、抗精神病薬…不整脈
血糖降下剤(糖尿病の飲み薬)…重症の低血糖症状、昏睡

薬の飲み方について

薬は決められた量、回数、飲み方(食前、食後、食間など)を守らなければいけません。 決められた量よりも多く飲んだり、短い間隔で飲むと薬が効きすぎて副作用を起こすことがあります。 また、少なく飲んだり、間隔を長くあけて飲むと、充分な効果が現れないこともあります。 薬によっては、量や服用時間にそれほど神経質にならなくてもよいものもありますが(「薬の飲み方」の項を参照) その判断はやはり主治医に相談して決めるようにして下さい。
自分かってに調節する前に、まず自分の症状を医師に正しく伝えることが大切です。

薬の飲み方

コップに半分から1杯の水か湯さましで飲んで下さい。 水なしで飲むと、食道や胃を荒らすことがあります。ひどい場合には食道や胃に潰瘍を作ることもあります。 ミルクやお茶、コーヒー、アルコール飲料などで薬を飲まないで下さい。 吸収が悪くなって効きが悪くなったり、極端に早く吸収されて、効きすぎて副作用が現れたりすることがあるからです。 特に「食後2時間」や「食前」(空腹時)に飲むようになっている場合には、多めの水で飲むと胃の負担が少なくて済みます。 特別の指示がない限り、薬はふつう、かまずに飲んで下さい。 特に1日1~2回飲めばよい薬(長時間効く薬)は絶対にかまないように(効果の持続時間が短くなる場合が多い)

「食後すぐ」という指示は

これは、食後でないと薬が効きにくい場合もありますが、食後にしておくと、 飲み忘れが少ないため便宜上そうしている場合もあります。 また、空腹時より胃に対する負担も軽減できます。 「食後」というと、たまたま食事を抜かしたときには、薬まで抜かしてしまう人がいます。しかし回数を抜かすと、 1日の必要量としては不足することになり、期待した効果が得られない恐れもあります。 一般的には、食事を抜かした時でも、いつもの食事時間がきたら、飲んで下さい(多めの水と一緒に)。 しかし、例外もありますから、詳しくは主治医とよく相談しておいて下さい。

「毎食前」という指示は

吐き気止めや、食欲増進のための薬の場合は食べる前に飲んでおいた方が食事がしやすくなるので、 食事の前に飲みます。吸収されやすいように、特に食前に飲むように指示される薬もあります。 「食前」は忘れることが多く、飲み忘れたら抜かしてしまう人がありますが、 飲み忘れたら食後でも構いませんから飲んで下さい。

「食後2時間」という指示は

これを食間として表示していることも多いようです。 食間と表示すると食事の途中で飲む人がいるので当院では「食後2時間」と表示します。 これも忘れる人が多いのですが忘れた時は気が付いた時に飲むようにして下さい。

「寝る前」という指示は

就寝の20~30分前に飲んで下さい。

寝たままで、特に少量の水で飲んだりすると胃に入る前に途中で食道に引っかかり、 そこで溶け出すので刺激の強い薬では食道に傷をつけ、潰瘍を作ることがあります。 同じ理由から、寝たままでの服用はできるだけ避けて下さい。

「6時間毎」、「8時間毎」、「12時間毎」という指示は

これは、血液中の薬の量を特に一定に保って欲しい場合に、指示されます。 抗生物質や、喘息患者の治療の際に多い指示です。できるだけ時間どおりに飲んで下さい。

30分~1時間程度前後することは、全く問題ありませんが、2~3時間以上はずれないように注意して下さい。 時間ごとに飲まなければならないからといって、真夜中にわざわざ起きてまで飲む必要はありません。 夜中に飲まなくてもいいように、毎食後と寝る直前に飲んでも構いません。

飲み忘れたときはどうするの?

飲み忘れをした時にどうするかは、1日何回飲んでいるかによって違います。 たいていは、以下のようにして飲んでかまいませんが、薬によっては例外もありますので、 それぞれの薬の説明書を参照するか、主治医にたずねて頂くのが良いでしょう。

1日3~4回使用することになっている場合

気が付いた時に、飲み忘れた分をすぐ飲んで下さい。

ただし、次の時間が迫っている場合には(たとえば2時間以内程度に) 1回分を抜かしてその次からいつものように飲んで下さい(2回分を一度に飲まないで下さい)。 対症療法の薬(=原因療法ではなく、「痛み止め」などのように、ただ症状を軽くするためだけの治療)で、 症状が強くなるなら、次の服用時間が迫っていても服用して構いません。 その場合には、次の服用時間まで少なくとも3時間程度、離して下さい。

1日2回の場合

気が付いた時に、飲み忘れた分をすぐ飲んで下さい。

ただし、次の時間が迫っている場合には(たとえば3時間以内程度に)1回分を抜かして、 その次からいつものように飲んで下さい(2回分を一度に飲まないで下さい)。 対症療法の薬で、症状が強くなるなら、次の服用時間が迫っていても服用して構いません。 その場合には、次の服用時間まで少なくとも6時間程度離して下さい。

1日1回(朝)の場合

その日のうちに飲み忘れに気付いた場合は、すぐに飲んで下さい。

もし、夜中に飲んでいないことに気が付いたら、朝まで飲まないで翌朝、 1回分 を飲んで下さい(2回分を一度に飲まないで下さい)。 ただし、対症療法の薬で、症状が強くなるなら、次の服用時間が迫っていても服用して構いません。 その場合には、次の服用時間まで少なくとも8時間程度離して下さい。

血圧の薬や糖尿病の薬の場合は、1日程度は飲まなくても心配要りません。 寝る前に飲むと効きすぎて、かえって副作用を起こしやすくなることがあります。 心不全の薬の場合は、十分症状が安定しているようなら1日くらい薬を抜かしても心配要りませんが、 心不全症状がある人の場合は少々遅くなっても忘れた分を飲んだ方がよいでしょう。

1日1回(寝る前)の場合

便秘薬や睡眠薬を飲み忘れた場合は、次の日からまた飲んで下さい。

その他の薬の場合は、翌日の午前中までに気が付いたら、その時に飲んで下さい。 翌日の午後以降に気が付いたら、前回の分は抜かして、寝る前に1回分を飲んで下さい(2回分を一度に飲まないで下さい)。 

ただし、対症療法の場合は、症状が強くなるなら、次の服用時間が迫っていても服用して構いません。 その場合には、次の服用時間まで少なくとも8時間程度離して下さい。

薬の保管はどうするの?

薬の保管に関する注意事項

・子供の手の届かないところに
・水薬は冷蔵庫に、ただし特別な指示がない限り凍結しないように
・薬は湿気(浴室や台所)や熱、直射日光を避けて、涼しい場所に
・有効期限切れの薬を使用しないように

有効期限の記載のない場合

・通常の錠剤やカプセル:半年以上前の処方薬は使用しない
・水薬:1週間以上前の処方薬は使用しない 

飲み薬以外の薬の使い方は?

吸入薬

吸入薬の大部分は喘息の薬です。発作を抑えるもの、発作を予防するものなどがあり、それぞれ効き方・使用法も違います。 吸入薬には、必ず使用説明書が入っていますので、よく読み、分からない場合は、医師、薬剤師に聞いて正しく使用して下さい。

軟膏・クリームなど皮膚外用剤

手を石けんできれいに洗い、指示にしたがって、1日1回~数回、適量を指に付けて患部に塗って下さい。

貼り薬

清潔にして乾燥させ、毛が少なく柔らかい、傷や傷の跡のない皮膚に貼って下さい。
長時間貼っているとかぶれることがありますので、かぶれやすい人は早めにはがしたり、貼る場所を変えるなどして下さい。
狭心症や心不全の貼り薬のように、全身の効果を期待するものもあります。説明書や医師の指示に従って下さい。

坐薬(肛門に入れるロケット状の形をした固形薬)

よく洗った清潔な手で包装から取り出し、根本(先のとがっていない方)をつまみ、先端(先がとがった方)を水で湿し、しゃがむか横になった状態で、お腹の力を抜き、先端(とがった方)から肛門の中に指で十分に押し込みます。ある程度入ると、坐薬は自然に奥に入って行きます。 
温かい所に置いておくと坐薬が柔らかくなり入れにくくなります。
そのときは 冷水または冷蔵庫で冷やすと固くなり使いやすくなります。

軟膏(クリーム)の坐薬

肛門の周囲をきれいに洗って、軟膏やクリームを適量塗りこみ、そっと拭きます。 
直腸内に入れる軟膏(クリーム)は、ふつう注入用の器具に入っています。 注入用器具の先端を肛門に挿入しそっと注入します。先端は少し水で湿らせると入りやすくなります。

目の薬

点眼薬/眼軟膏どちらも、容器の保管/取り扱いを清潔にし、使用時に先端を目やまつげに直接触れないように注意してください。

点眼薬

上を向いてよく洗った手指で下まぶたを軽く押し下げ、反対の手で目薬の容器を持ち、 1~2滴落とし、ゆっくりと目を閉じて下さい。まばたきはせず、暫く目を閉じたままにしておいて下さい。
緑内障や目の炎症のために使用している人は、滴下したあと、目がしら(目の内側の縁)を、 中指で1~2分間抑えておいて下さい。こうしておくと、 薬が涙管を伝って鼻から全身に吸収されるのを防ぐことができます(副作用も防止できます)。

眼軟膏

手をよく洗って、人差し指で下のまぶたを下げ、その部分に軟膏を薄く塗りこんで下さい。 特別な指示がない場合にはふつう1cmも塗りこめば十分です。 ゆっくりと目を閉じて、まばたきをしないで、1~2分間目を閉じておいて下さい。 
終わったら、手を洗って下さい。

鼻の薬

点鼻薬/スプレーどちらを使用する場合も、あらかじめていねいに鼻をかんで下さい。 ただし、無理してひどくかまないように。

点鼻薬

ベッドに仰向けになって、上を向き、両方の鼻の穴から薬を注入して下さい。 2~3分間そのままにしておいて下さい。 
清潔には十分注意してください。鼻や皮膚に容器の先端が直接触れないようにして下さい。 他の人への感染を防ぐために、他の人には使用しないようにして下さい。

スプレー

立ったままで、薬を鼻腔内に噴霧すると同時に、素早く鼻から息を吸い込んで下さい。 
清潔には十分注意して下さい。鼻や皮膚に容器の先端が直接触れないようにして下さい。

副作用や注意事項について

薬の副作用は、誰でも心配なものです。副作用のことを話すと、患者さんが心配するので、 あまり説明しない方がよいと以前は考えられていました。 しかし最近では、知らずに飲む方が余計心配だという患者さんも増え、 十分に説明した方が副作用を早く発見でき、安全性も高まるという考えから、積極的に話す医師も増えてきました。 また、副作用の中には身体にとって非常に不都合なものもありますが、少し治療法を変えれば解決するもの、 何もせずに見ていれば自然に消失するものなど、その程度はいろいろです。 軽いものまで含めれば、どの薬にも多少の副作用はあります。副作用を恐れるだけでなく、 どういう点に気を付け、どうすればうまく避けられるかを考えてみましょう。

すぐに受診すべき症状

特に重大な症状 1

次に示すような症状は、一刻を争う症状です。

たいていは、何千~何万人に一人と、まれにしか起こりませんが(低血糖性昏睡は別)、 場合によっては死亡する場合も有り得る病気の症状です。 以下のような症状が起こったら何をさておいても受診して下さい。 薬を使った本人が気が付けばもちろん、周りの人が気付いた場合でも、すぐに受診して下さい。

  • ジンマシンと同時に咳が出る:ショック症状の前兆です
  • ゼーゼー、急に呼吸困難:喘息やショックの一歩手前の症状です
  • 顔面蒼白、冷汗、ぐったりする:ショックに陥っていると考えられます
  • ケイレン:重症の中毒症状で、時には生命に危険な場合があります。心臓が不規則に拍動する場合(不整脈)や、ショックが重症になるとケイレンを起こすことがあります。
  • 失神、意識不明、昏睡:インスリンや経口の糖尿病薬などによる低血糖、重症の不整脈、ショック、ケイレンなどで意識がなくなることがあります
  • 真っ赤な血やコーヒー色の吐物を吐く:吐血。食道、胃、十二指腸からの出血
  • 真っ赤な便、赤黒い便、コールタールか佃煮のりのような真っ黒な便:胃、十二指腸、大腸、直腸からの出血
  • 急激な強い腹痛:胃や腸に穴が開いた時

特に重大な症状 2

次のような症状は、上に述べたような緊急性はありませんが、 場合によっては重大な症状になることもあります。多少の時間的余裕はありますが、 やはり「すぐに受診すべき症状」と考えておいて下さい。

  • のどの痛み、発熱、寒気:白血球が少ないとき(白血球減少症、無顆粒球症)
  • 皮下出血、青あざ、歯茎からの出血など:出血を止める成分の異常が生じている可能性が大
  • 尿が全く出ない:急性の腎臓不全か、尿路がつまったか
  • 目や皮膚が黄色、尿が黒っぽい、尿の泡まで黄色い:黄疸の症状です。この症状の時は、重症の肝炎のことがあるので薬剤によってはすぐに受診すべき症状に入れている場合があります。

できるだけ早く医師に報告すべき症状

「できるだけ早く」というのは、放置すれば重症になる可能性が高い場合などで、 その日か遅くとも翌日早々には受診して、医師に報告し、診察を受けて、 適切な処置を受けるのがよいと思われる症状の場合を指します。 たとえば、皮膚のかゆみや発疹、関節炎などの軽度のアレルギー症状は、 原因の薬を中止すればそのまま治ってしまうものが多いのですが、中には重症になるものもあるので、 できるだけ早く受診し、報告すべきものなのです。

(早めに)医師に報告すべき症状

この項目の症状は、先の2つの項目ほどに時間を争うような症状ではありません。 しかし、使用を中止したり、量を減らす必要があったり、副作用症状を軽減するのに他の薬が必要なこともあります。 あるいは、他の病気の可能性も考えて検査が必要な場合等が考えられます。すぐには重症にならないが、 放置すると問題になる可能性があり、2~3日中あるいは次回受診時には医師に報告すべき症状と考えて下さい。 たとえば、鎮痛剤を飲んでいて腹痛がしたり、足がむくんできたような場合などがこの項目になっています。

長く続く場合にはご相談ください

例えば血圧や狭心症の薬を飲んだ時の頭痛などは徐々に慣れてきて、治療を続けているうちに頭痛を感じなくなります。 このような場合は心配せずに様子をみて下さい。しかし、長く続いたり、症状が強くて不快な場合には、 医師や薬剤師に相談して、中止するか、量を減らすなど、適切な判断をしてもらって下さい。