急性期病院の小児科として、小児の急性疾患全般に対応しています。その一環として、当院の特色である救急医療に対しても、岡山大学小児科の協力を得ながら、24時間365日小児科医が対応しています。
また、急性疾患のみならず、乳児健診、学校検診で見つかった心雑音、心電図異常、検尿異常などの精査・管理やてんかん、アレルギーなどの慢性疾患の診療にも力を注いでいます。約40年前より小児糖尿病サマーキャンプを主導しており、1型糖尿病をはじめ、低身長、思春期異常などの内分泌・代謝疾患にも対応しています。昨今、問題となっている食事アレルギーに対しても、食物負荷などの検査を行っています。
ご紹介患者様には、できうる限りの対応をいたしますが、特に、時間外では人員、検査などが限られることもあります。円滑な連携のためにご一報をお願いします。
当院では急性期病院という特性もありけいれん性疾患を主に診療しております。救急外来含め毎年200~250例ほどの痙攣性疾患の方が受診され熱性けいれん、てんかん、胃腸炎関連けいれん、急性脳症、ADEMなどの症例に対応させていただいております。また脳波、MRIなどの検査も検査部と連携しなるべく速やかに施行できるような体制を整えております。
月曜日午後、もしくは水曜日・金曜日の午前中にご紹介をいただければ幸いです。
38℃以上の発熱に伴って主に生後満6か月から満60か月に生じる発作性疾患(けいれん・非けいれん性疾患を含む)で中枢神経感染症、代謝異常、その他の明らかな発作の原因疾患がないものとされています。誘因は感染に伴う免疫反応と体温上昇とされていますが原因ははっきり特定されてなく発熱時のIL-1βなどの炎症性サイトカイン・神経伝達物質の産生と異常反応、GABA神経系などに神経ネットワークの未熟性、温度感受性イオンチャンネルの活性化などが関係しているといわれております。
当院での症例は1歳台が最も多く発作持続時間は80%は5分以内と比較的短く、当院到着時は頓挫している方が大部分でした。再発作を起こす可能性が高い症例は(1)遷延・重積発作(15分以上)の既往(2)発作回数2回以上で要注意因子(1.焦点発作または24時間以内に反復する発作 2.発達遅滞あり 3.家族歴あり 4.初回が生後12か月未満 5.発熱後1時間以内の発作 6.38℃未満での発作)の2項目以上を満たすとされていますが当院では熱性けいれん全の10%ほどが該当されます。こういった方にはガイドラインに基づき発熱時ジアゼパム座薬での痙攣予防を行っております。
また発作時に嘔気を伴う場合は誤嚥防止のため体を側臥位していただくこと、痙攣が5分で頓挫しない場合は速やかに救急車を要請するよう説明をしております。
ノロウイルス・ロタウイルスなど主にウイルス性胃腸炎に伴うけいれん発作で満6か月から3歳までの乳幼児期に好発する疾患です。発作型は無熱性全般けいれんで短時間(5分以内)ですが24時間以内に群発する特徴があります。血液検査では電解質異常、低血糖、著明な脱水などは通常認めず、頭部画像検査・脳波検査なども明らかな異常を認めません。
治療は熱性けいれん予防で使用するジアゼパムは効果がなくカルバマゼピン5mg/kgの1回の経口投与で発作が抑制されることがほとんどです。啼泣や点滴などの処置などのストレスで誘発されることが多く処置前に内服投与を行っています。
脳神経の過剰・過同期性異常活動による症状であるてんかん発作(seizure)が発生しうる状態が持続する神経疾患で、これに神経生物学、認知、精神および社会面での影響を伴うものとされています。てんかんの診断には少なくとも1回は臨床発作が発生している必要があります。また直近の明らかな原因によって誘発されたもの(熱性けいれんなど)は除きます。
診断には脳波検査を行いてんかん発射を確認したり頭部MRIを撮影し脳実質に器質的な異常ないか確認を行います。診断確定し必要と判断すれば抗てんかん薬の内服を行いますが投与期間は小児てんかんは自然に終息するものも多く3~5年程度で中止できることが多いです。予後が良好と予想されるものは無投薬で経過をみせていただくこともあります。次に当院で特に夜間に遭遇することが多いてんかんについて解説します。
(Selflimited epilepsy with centritemoporal spikes:SeLECTS)
大脳側頭部周囲に焦点をもち多くが自然寛解する予後良好な年齢依存性てんかんで睡眠中、起床前後に発作を起こすことが多く、口腔や顔面をぴくつかせるような部分発作が特徴です。時に睡眠中に全身けいれんを起こすこともあります。発作回数は生涯6回以下のことが多いとされています。発症年齢は2~15歳(8~9歳がピーク)で5歳未満発症は難治のこともあるとされています。脳波検査では典型的には中心側頭部に棘波(centritemoporal spike)を特に睡眠時に認めます。頭部MRIなどの画像検査では異常所見は認めません。
基本的には無投薬で経過観察をおこないますが1:覚醒中(活動時)の発作がみられる2:頻回の部分発作(≧2回/3か月)3:複数回の全般けいれん(≧2回/年)などの例は抗てんかん薬(レベチラセタム・ラコサミド・バルプロ酸など)を内服していただいております。
2~3年間発作抑制されれば積極的に減量中止を考慮しておりますが言語、注意、行動異常が10~20%に見られることがあり注意深く見せていただきます。
早期ないし中小児期(1~12歳)に生ずる年齢依存性の自然終息性焦点性てんかんです。睡眠中、起床前後に悪心、嘔吐、顔面蒼白など自律神経発作で突然発症し、欠神様脱力発作(ictal syncope)が続発します。10分以上続くことが多く二次性全般化発作(多くは全身けいれん)を起こし30分以上痙攣重積を起こすこともあります。けいれん性疾患の家族歴・熱性けいれんの既往を認めることもあります。脳波では特に睡眠時に後頭領域~前頭棘部・中心側頭部領域の移動性、多焦点性のてんかん波を認めることが特徴です。頭部MRIなどの画像では異常所見を通常認めません。
発作は約3割は1回のみで1~2年内に2~5回発作をおこして治癒する例が多いとされています。当院では初回はジアゼパム坐剤の投与を行い、脳波などで本疾患を疑う場合2回以上の発作で抗てんかん薬(レベチラセタム・ラコサミド・バルプロ酸など)を考慮しております。当院の症例では来院時頓挫していることがほとんどであり睡眠時の嘔吐などの症状が診断確定の一助となりうるため詳しい問診を心がけております。
小児のおもな内分泌・代謝疾患は低身長、甲状腺疾患、思春期早発症、糖尿病などです。令和7年度の診療実績は低身長105例(うち成長ホルモンによる治療は21例)、思春期早発症42例、甲状腺疾患40例、糖尿病15例(うち1型糖尿病は10例、2型糖尿病は5例)です。
内分泌疾患の紹介は地域連携室を通じて、午前中にご予約いただけますと幸いです。
同性、同年齢の標準身長と比較して、身長が-2SD以下を低身長と定義することが一般的です。成長曲線は低身長の診療において最も重要な情報であり、これを記載することが診療の第一歩となります。そのため、過去の身長・体重の記録(母子手帳・園や学校での記録)を持参していただく必要があります。外来では一般検査のほか、骨年齢、IGF-1(ソマトメジンC)、甲状腺機能などを測定します。Turner症候群(女児のみ)やSHOX異常症などの鑑別目的に、保護者の同意のもと染色体検査を行うこともあります。これらの結果を踏まえて、成長ホルモン分泌不全性低身長を疑う場合、分泌刺激試験を入院にて行うこととなります。低身長を疑われた場合は、ぜひ成長曲線を作成し、ご確認ください。
性成熟兆候が早期に出現し、身長の伸びが加速する状態です。厚労省の診断の手引きによると、男児では1)9歳未満で睾丸、陰茎、陰嚢などの明らかな発育が起こる。2)10歳未満で陰毛発生をみる。3)11歳未満で腋毛・ひげの発生や声変わりをみる。女児では1)7歳6か月未満で乳房発育が起こる。2)8歳未満で陰毛発生、または小陰唇色素沈着などの外陰部成熟、あるいは腋毛発生が起こる。3)10歳6か月未満で初経をみる、とされています。男児に比べて女児に多く、女児では特に原因が特定されない特発性思春期早発症が大部分で、男児では女児に比べて何らかの原因がある場合が多いとされています。また、男児の思春期の最初の兆候である外性器の発育の判定は医療関係者以外では難しく、見過ごされがちです。近年は学校検診で身長の伸びが加速していると指摘されたことを契機に紹介受診される方が増えています。特発性思春期早発症は、4週おきの皮下注射で治療可能です。
上記疾患と鑑別が必要な状態として、早発乳房があります。これは主に2歳までの女児に起こる、片側または両側の乳房発育で、数か月から数年で消退するものです。成長加速などの他の思春期兆候がなく、治療の必要はありませんが、一部の症例では思春期早発症に移行する場合もあり、経過観察が必要です。
新生児マススクリーニングで陽性者発見数が1番多いのは、先天性甲状腺機能低下症です。外来で血液検査、大腿骨レントゲン撮影、甲状腺エコーを確認し、甲状腺の機能低下が否定できない場合は内服加療を開始します。3歳以降に一度休薬し、確定診断や病型の診断をすべきとされています。その他は、学童期以降に多いとされるバセドウ病や橋本病があります。全身倦怠感や体重減少、成長率低下や浮腫などの精査目的で受診される場合や、学校検診で甲状腺腫大を指摘され紹介受診されることが多いです。
1型糖尿病は、インスリン分泌細胞である膵β細胞が破壊されることによって絶対的なインスリン不足から生じる糖尿病です。当科では、年少児の対応はもちろん、ケトアシドーシスで発症する急性症例に対して24時間体制で対応しています。インスリン治療の基本は頻回注射(基礎-追加インスリン療法、4回注射法)です。治療には血糖測定が必須ですが、従来の自己血糖測定に加えて、皮下組織にセンサーを装着しブドウ糖濃度を連続的に測定できる持続血糖測定(CGM)を導入しています。患児の生活スタイルに合わせて、インスリンポンプによる持続インスリン皮下注射療法(CSII療法)やインスリンポンプとCGMをくみあわしたSAP療法も導入しています。さらに、SAP療法中の7歳以上の患児では、基礎インスリン注入量を自動調整し、高血糖補正のための追加インスリンも自動で注入されるAHCL(Advanced Hybrid Closed Loop)機能を積極的に利用し、良好な血糖コントロールが得られています。当院は社会貢献の一環として小児1型糖尿病児を対象とした糖尿病キャンプを昭和51年より毎年夏季に行っており、例年20名前後の参加者がいます。
2型糖尿病は、インスリン分泌の低下、あるいはインスリン感受性の低下に相対的インスリン分泌低下が種々の程度に加わってインスリン作用不足をきたし、慢性の高血糖状態に至る疾患です。小児・思春期の2型糖尿病は世界的に増加しており、当科では学校検診で尿糖陽性や肥満を指摘され紹介受診される方が多いです。多飲多尿があり、スポーツ飲料をたくさん飲んで、糖尿病性ケトアシドーシスを発症し搬送されてくる患児もいます。外来では血圧・腹囲の測定、血液検査、尿検査、腹部エコー検査などを行い、必要時はブドウ糖負荷試験を行います。治療の基本は食事療法・運動療法ですが、30-40%の症例では薬物療法が必要となります。およそ1週間の教育入院を行うこともあります。
当院では、小児に多いアトピー性皮膚炎、食物アレルギー、気管支喘息、アレルギー性鼻炎・花粉症などのアレルギー疾患に対して、専門的な診療を行っています。
近年、アレルギーを持つお子さんは増加しており、日本人の半数が何らかのアレルギーを有しているとされています。アレルギー疾患は、乳児期の湿疹や食物アレルギーから始まり、学童期には喘息や鼻炎へと変化していく傾向があり、これを「アレルギーマーチ」と呼び、継続的な診療が重要になります。
当院には、日本アレルギー学会指導医1名、専門医2名が在籍しており、最新のガイドラインに基づいた正確な診断と治療を行っています。
早期から適切な治療を行うことで、お子さんの健康な成長と生活の質(QOL)の向上を目指しています。
アレルギー専門外来は、月曜・木曜の午前、水曜の午後に実施しております。かかりつけ医の先生を通じたご紹介をいただけると、これまでの経過を把握しやすく、スムーズに行えますので、ご協力をお願いいたします。
令和5年度の診療実績は食物アレルギー約200例、食物経口負荷試験165例、アトピー性皮膚炎約100例、気管支喘息(外来)約50例、気管支喘息発作(入院治療) 120例となっています。
近年は食物アレルギーの発症要因として、「経皮感作(皮膚からの感作)」という考え方が、注目されています。皮膚の湿疹から食物蛋白が入り込むことで、体が特定の食品を「異物」と認識することで、食物アレルギーが発症すると考えられており、食物アレルギーの治療とアトピー性皮膚炎の治療を並行して行うことが大切です。
当院では、血液検査だけでなく、実際に病院で食品を摂取して確認する「食物経口負荷試験」を行い、正確な診断に努めています。自然に治癒しにくい重症例には、「緩徐経口免疫療法(少量ずつ食品を摂取して慣らす治療)」も実施しています。
また、食後すぐに症状が出る「即時型アレルギー」だけでなく、数時間後に嘔吐などを起こす「食物蛋白誘発胃腸症(乳幼児消化管アレルギー)」も増えています。最近は卵黄による食物蛋白誘発胃腸症が非常に増加しており、離乳食を食べている時期に、2~3時間後に嘔吐する場合は、食物アレルギーの可能性があるので、相談してください。
乳児湿疹が長引いたり、繰り返したりする場合には、アトピー性皮膚炎の可能性があります。治療の基本は、適切なスキンケアとステロイド外用薬の正しい使用です。
当院では、医師と看護師が連携し、保護者の方に塗り方やスキンケアの方法を丁寧に説明・指導しています。早期に治療を始めることで、他のアレルギーの発症リスクを下げることも期待されます。
さらに近年、アトピー性皮膚炎の原因物質に作用する「分子標的薬」が登場しており、当院でも重症例に対してこれらの新規治療を積極的に導入しています。繰り返す症状や強いかゆみにお困りの方は、ぜひご相談ください。
風邪や運動のたびにゼーゼーする(喘鳴)症状を繰り返す場合、気管支喘息の可能性があります。喘息は症状がない時も気道に炎症が続いているため、定期的な治療が必要です。
当院では、呼吸機能検査や呼気NO検査を行いながら、治療内容を個別に調整します。吸入治療が必要な場合も、薬剤師による丁寧な吸入指導で、無理なく治療が継続できるようサポートします。
コントロールが難しい重症の方には、生物学的製剤(抗体治療)による治療も可能です。
くしゃみ、鼻水、鼻づまりが続く場合、アレルギー性鼻炎や花粉症の可能性があります。低年齢化が進んでおり、幼稚園児や小学生でも発症するケースが増えています。
当院では、対症療法だけでなく、根本的な改善を目指す「舌下免疫療法」も積極的に行っています。これは、ダニやスギ花粉の成分を含む舌下錠を舌の下から吸収することで、体を慣らしていく治療です。年単位の継続が必要ですが、小児期から始めることで高い効果が期待されます。
小児のおなかの症状は多くの病気が関係しており、診断や対応には専門的な知識が必要です。当院では、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)、過敏性腸症候群(IBS)、便秘症など、さまざまな慢性消化器疾患の診療を行っています。
おなかの痛み、便秘や下痢、血便、食欲不振、体重減少などの症状が続く場合には、精密な検査や継続的な治療が必要となることがあります。
当院では、小児科専門医が診察し、必要に応じて血液検査・超音波検査・レントゲン・内視鏡検査などを行い、正確な診断を心がけています。年齢や症状に応じた個別の治療計画を立て、薬物療法・食事指導・生活習慣の見直しを含めた総合的な対応を行っています。
また、気になる症状がある場合は、かかりつけ医の先生を通じて紹介していただけると、これまでの経過も把握しやすく、スムーズな診療につながります。
令和5年度の診療実績は炎症性腸疾患約10例、過敏性腸症候群約40例、慢性の腹部症状に関する紹介患者数約30例となっています。
潰瘍性大腸炎やクローン病といった、腸に慢性的な炎症が起きる病気です。血便や腹痛、下痢、発熱、体重減少などの症状がみられます。一般的には20代などの若年成人に多いですが、小児期にも発症することがあり、近年その頻度は増加傾向にあります。IBDは慢性疾患であり、早期発見と適切な治療により、発育や学業、日常生活への影響を最小限に抑えることが大切です。当院では、内科と連携して内視鏡検査を行い、確定診断と病状評価を丁寧に行ったうえで、年齢や症状に応じた治療方針を立てています。
ストレスや不安などがきっかけとなって、おなかの痛みや便秘・下痢などが繰り返される病気です。腸に明らかな異常がないことが特徴で、生活習慣の見直しや心理的サポートも含めた対応が必要です。学校生活に支障をきたすこともあるため、症状を丁寧に聞き取りながら診療を行います。
排便回数が少ない、便が硬くて出にくい、排便時に痛みを伴うといった状態が続く病気です。小児科での腹痛の原因として最も多く見られますが、稀な腸疾患や内分泌異常、神経の病気などが隠れていることもあり、他の疾患をしっかりと除外することが重要です。生活指導に加えて、必要に応じて内服薬や浣腸などで治療を行っています。
小児の主な循環器疾患は、先天性心疾患、川崎病、不整脈などです。令和6年の診療実績は、循環器外来約620名、うち先天性心疾患及びその疑いは約100名です。不整脈及びその疑いは約30名、令和6年度の当院の川崎病患者数は約60名です。
これらの疾患の診療以外にも、学校検診での2次検診の役割も担っております。心電図異常、新雑音など学校検診で異常を指摘された場合もご相談ください。カテーテル診断・治療、外科的治療及び高度先進医療を要する症例は、岡山大学病院小児循環器科へご紹介させていただいております。
小児循環器の専門外来は金曜日に行なっております。地域連携室を通してご予約いただければ幸いです。
川崎病は、4歳以下の乳幼児に多く、全身の血管に炎症がおきていろいろな症状が出ます。1.発熱、2.両側の眼球結膜(目の白いところ)の充血、3.真っ赤な唇と苺のようにブツブツの舌、4.体の発赤疹、5.手足の腫れ、6.首のリンパ節の腫れの6つの症状のうち5つ以上の症状があれば川崎病と診断します。小さなお子さんではBCGを注射した場所が紅く腫れ上がることも、特徴的な症状の1つです。
川崎病の原因として、細菌の感染、ウイルスの感染、なんらかの環境物質による刺激などがいわれていますが、今のところその原因は特定されていません。ただ、川崎病にかかる率は日本人など東アジア系の人種で多くなっています。
川崎病にかかって一番問題なのは、心臓を栄養する血管である冠動脈に動脈瘤(こぶ)を形成することです。冠動脈に瘤ができると、将来的に血管が狭くなったり、血のかたまり(血栓)で冠動脈が詰まったりして、狭心症や心筋梗塞を起こす危険性が高まります。川崎病に対する治療の最大の目的は冠動脈瘤の発生予防です。発症から出来るだけ早く炎症を抑えることが冠動脈病変の発生を抑えるのに重要です。治療としては免疫グロブリン療法とアスピリン療法を行います。それ以外にもシクロスポリン、インフリキシマブなどの抗炎症作用のある薬を用いることがあります。
通常は1週間から10日ほどの入院(発症10〜14日目)で退院できます。退院後もアスピリンの内服は1〜2ヶ月ほど必要ですが、日常生活はこれまで通りおくれます。合併症がない場合でも発症から約1年間は外来にて定期的に診察と検査を行います。
心臓は1日に10万回あまりも規則的に収縮と拡張を繰り返していますが、時には何かの理由で次に来るべき周期よりも早く収縮が起きることがあります。これを期外収縮と呼んでいます。異常興奮の発生場所により、心房性、房室接合部性、心室性に分けられます。また、心房性と房室接合部性を合わせて上室性と呼ぶこともあります。高齢者では多いですが、若い年齢層でも50%に認められることが知られています。この期外収縮の多くは無害ですが、一部の重篤な心臓病に伴っている期外収縮の場合には致命的な不整脈に移行する危険性があります。心室性期外収縮は小児で最もよくみられる不整脈の一つであり、学校心臓検診では小学1年生0.38%、中学1年生0.66%、高校1年生0.86%に認められています。小児では無症状のことが多いですが、動悸、脈が跳ぶなどと訴える場合があります。心エコー検査で基礎疾患の有無を検索したり、運動負荷心電図や24時間ホルター心電図を行い、予後や治療の必要性などについて調べます。器質的疾患を認めない心室性期外収縮は一般に予後良好で、運動制限は必要なく、ホルター心電図で数年間経過観察した報告によると、心室性期外収縮がまったく消失するものも少なくありません。また悪化する例は少なく、一般的には予後良好といわれています。
新生児病棟は10床でうちNICU(新生児集中治療室)3床となっています。当院では出生時体重1000g以上1500g未満の極低出生体重児から2500g未満の低出生体重児の管理を主に行っています。令和6年度はNICU入院25例GCU入院57例がありました。新生児の主な疾患である呼吸器疾患(呼吸窮迫症候群・新生児一過性多呼吸・気胸など)感染症(B群溶連菌・梅毒など)・高ビリルビン血症の治療などを行っております。
産婦人科と緊密に連携し、必要な場合は分娩に立ち合い速やかな処置を行います。正常新生児も経皮酸素飽和度モニターを装着し、異常な兆候が見られた際には速やかな対応が行える体制を構築しています。
また平日8:30~17:00は当院の救急車で新生児搬送にも対応可能となっておりますので必要時ご連絡いただければ幸いです。
1500g未満の極低出生体重児に対しては、早めに経管栄養を開始するとともに、不足分は中心静脈路より高カロリー輸液を併用しています。1週間前後で中心静脈路を含む点滴は中止できることが多いです。また、必要に応じて、人工呼吸器よる呼吸管理を行っています。未熟性に起因する無呼吸に対してはカフェインなどの投与も行います。
在胎34週未満で出生し、高濃度酸素の投与を要した児は未熟児網膜症のリスクがあるため出生後3週間前後で眼科と連携し眼底検査を行っております。
早産の方は十分なカルシウム・リンの蓄積ができていないため、かつて未熟児くる病とよばれた未熟児骨減少症をきたすことがあり1~2週間おきに血液・尿検査を行い必要に応じてリン・カルシウムの補充などを行います。
生後1か月前後で貧血をきたすことがあり鉄剤・エリスロポエチンの注射を行います。
体重2300g前後となり十分に哺乳できるようになれば退院となり外来での成長・発達の経過観察に移行します。また、在胎36週未満の早産児の場合RSウイルス流行期にモノクローナル抗体(ベイフォ―タス・シナジス)を注射することにより感染予防を行うことができます。
サーファクタントと呼ばれる肺胞を膨らませるタンパク質が十分産生されていないことが原因で生後肺胞が虚脱し呻吟、陥没呼吸、多呼吸、チアノーゼなどの呼吸窮迫症状をきたす疾患です。早産で母体糖尿病児、帝王切開で出生児に多いとされています。母体に事前ににステロイド投与することによりある程度軽減することが可能です。
治療は気管内挿管し人工サーファクタントを気管内に投与を行います。
胎内では羊水で満たされていた肺は、出生後血管・リンパ管内に吸収されるとともに啼泣などで鼻腔・口腔内に排泄され、空気に置換されます。この経過が障害されると、軽度の肺浮腫となり多呼吸、低酸素血症をきたす疾患です。帝王切開で出生した児、胎児仮死などがリスクとなります。
治療は酸素投与、重症例は鼻マスクによる陽圧呼吸などをおこないますが2~3日で改善が期待できます。
生理的に日齢2~3から肉眼的黄疸(高ビリルビン血症)をきたしますが一定基準以上のビリルビン上昇あれば光線療法を行います。早産児・感染症・甲状腺機能低下症・母児血液型不適合・頭蓋内出血などでリスクとなりやすく必要に応じて検査の追加を行います。
近年梅毒感染妊婦からの出生児が増加しております。当院ではガイドラインに基づき抗生剤ステルイズ筋注、ペニシリンG静注などの治療を行っております。
当新生児室・NICUでは、「赤ちゃんの人権を守り、家族と赤ちゃんにとってやさしい医療・看護を提供する」をモットーとしています。産科・小児科と協力し、生まれてくる全ての小さな命を守っています。
産前訪問
当院入院中で早産などの心配のある妊婦さんに対して、産前にNICUのスタッフが訪問し、産後の赤ちゃんの予定やNICU内の様子を写真などを使い説明し、安心して出産を迎えられるようにしています。
分娩の立ち合い
自然分娩や帝王切開にNICUスタッフが立ち会い、緊急時の対応に備えます。
カンガルーケア
赤ちゃんと両親の肌を直接つけての抱っこをカンガルーケアと呼んでいます。小さく生まれた赤ちゃんも、集中治療が終わり状態が落ち着いた頃から行います。呼吸が規則的になる、赤ちゃんの眠りが深くなり、起きているときも穏やかになる、感染症の危険が減少する、母乳保育がすすむ、親子関係の確立などのメリットが報告されています。呼吸や体温などに注意しながら行っています。
交換ノート
赤ちゃんの日々の成長の様子を写真や説明用紙でお知らせし、御家族からのコメントなどの記入ができる交換ノートを対象の赤ちゃんに作っています。
ならし保育
長期入院をした赤ちゃんが退院する前に、親子で過ごしてもらう、ならし保育をしています。
面会
NICU入院中の赤ちゃんの面会は原則として、両親となります。それ以外の方は窓越し面会となります。
当院は救命救急センターであり、小児の救急疾患には小児科医が24時間365日体制で対応しております。平成29年度から令和元年度の3年間の平均では、小児科救急外来受診者数は6,900名で、このうち入院した患者数は890名で、入院率は12.9%でした。令和2年度には小児科救急外来受診者数、入院した患者数はそれぞれ3,244人、402人と、ともに激減しました。これは新型コロナウイルス感染症が蔓延し、マスク着用や手洗いの励行などで、新型コロナウイルス感染症以外の感染症が全般的に減少したことや救急外来への受診控えが生じたことなどが原因として推察されます。令和3年度、4年度と増加に転じましたが、令和5年度以降は再度減少傾向です。これは少子化の影響もありますが、原則、外来受診のみで帰宅可能な患児が受診された場合いただく時間外選定療養費が増額され、比較的軽症な患児の受診は岡山市休日夜間急患診療所などを受診していただいているためとも思われます。反面、救急外来からの入院患者は、むしろ増加傾向にあり、令和6年度の入院率は過去最高となっています。以上のことより、中等症以上の病状の患児は受診していただいているものと推察されます。
時間外は看護師によるトリアージ(重症度判定)を行っており、軽症患児はお待たせすることがあると思いますが、小児科医1名で対応しているため、ご容赦のほどお願い申し上げます。また、開業の先生方におかれましては、ご紹介の際にはご一報いただけるようお願い申し上げます。
口側腸管が肛側腸管に陥入し、通過障害と腸管血流障害をきたします。このまま整復されないと、穿孔をきたします。腹痛、嘔吐、血便を3主徴としますが、顔色や機嫌も参考になります。生後4か月頃から1歳半頃が最も多く、原因不明なものが殆どです。3歳以上では他の原因疾患の存在も疑い追加検査を行う場合もあります。
診断は超音波をはじめとする画像検査を行います。治療は、穿孔リスクの低い場合は、レントゲン透視下で肛門から造影剤を送り込こんで重積している腸を押し戻し整復します。整復困難な例や穿孔リスクの高い例は、小児外科のある施設へ紹介します。再発する場合もありますので、整復後も1~2日ほど入院して観察します。
喉頭付近が腫れ、呼吸困難になった状態がクループ症候群です。アレルギーなどの体質で反復する人もいますが、ウイルス感染に伴う一過性のケースが殆どです。咳の様子が犬吠様咳嗽という犬の吠える声やオットセイの鳴き声に例えられ、響くような低い声の咳が特徴です。喉頭の腫れが進行すると吸気性喘鳴を来たし、呼吸困難につながります。
幼児期によくみられ、声帯直下の炎症が多く、クループ性気管支炎、急性喉頭気管気管支炎とも呼ばれます。エピネフリン吸入で腫れを抑え、ステロイド剤でより長く炎症を抑えることで症状をコントロールします。吸気時喘鳴や嗄声、呼吸困難感が目立つ場合は入院治療とします。感染の原因病原体はパラインフルエンザをはじめとするウイルスが多いとされています。
喉頭蓋腫脹による急性喉頭蓋炎はより重症で、罹患する平均年齢は前記のものより高く、嗄声は伴わない場合もみられます。感染もインフルエンザ桿菌b型(Hib)によるものが多く、血液検査も参考になります。レントゲンにより診断をつけ、入院し、全身麻酔下で気管内挿管し、抗生剤を投与します。Hibワクチン予防接種の浸透により、発症率が低下しています。
発熱は、大半が感染症によります。主な感染をおこす部位と発熱以外の主な症状は、 (1)呼吸器系(咳や鼻水) (2)消化管系(嘔吐や下痢) (3)腎尿路系(小児では訴えがないことが多い)です。病原体は、特に(1)(2)では、ウイルスがほとんどです。基本的には対症療法が主となるため、発熱初日では他に症状が強くなければ夜間に受診する必要はありません。ただし、低月齢の患児や、重症感があればいつでも受診してください。受診を迷う場合は小児救急医療電話相談(#8000)を活用ください。新型コロナウイルス感染症については、小児では重症化することは少なく、こちらも症状が強くなければ日中にご相談いただければ幸いです。
大阪大学医学部医学科 昭和60年卒業 平成11年医学博士
平成9年卒業
平成17年卒業
平成18年卒業
令和2年卒業
令和4年卒業
令和4年卒業
令和5年卒業
平成13年卒業
平成20年卒業
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
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1診 | 井上 勝 | 池田 恵津子 | 後藤 振一郎 | 井上 勝 | 後藤 振一郎 |
2診 | 藤井 洋輔 | 新治 文子 | 廻 京子 | 藤井 洋輔 | 新治 文子 |
3診 | 新屋 圭一朗 | 荒木 晴 | 秋山 麻里(神経) ※第2・4週 | 廻 京子 | 平井 健太(小児循環器) 心エコー予約制 |
4診 | 濵田 大我 | 目瀬 優衣 | 藤井 洋輔 |
月曜日 | 火曜日 | 水曜日 | 木曜日 | 金曜日 | |
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後藤 振一郎(神経) | 中原 康雄(小児外科) ※第2・4週 | 井上 勝(内分泌) | 池田 恵津子(乳幼児健診) | 平井 健太(小児循環器) 心エコー予約制 | |
廻 京子(予防接種) | 藤井 洋輔(アレルギー) | 廻 京子(乳幼児健診) | |||
新屋 圭一朗(予防接種) | 目瀬 優衣(乳幼児健診) | ||||
濵田 大我(予防接種) | 濵田 大我(乳幼児健診) |